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中2理科の化学反応式を【理解】する(7) 燃焼と酸化反応

さらに中学校理科2年生の教科書を読み進めていきましょう。

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中2理科 いろいろな化学反応

1.酸素と結びつく化学変化ー酸化

A. 有機物の燃焼

炭素 + 酸素 → 二酸化炭素

$${C + O_2 → CO_2}$$

水素 + 酸素 → 水

$${2H_2 + O_2 → 2H_2O}$$

  • 物質が酸素と結びつく反応を酸化という

  • 酸化によってできる物質を酸化物という

  • 光や熱を出しながら酸素と結びつく化学変化が激しく進む現象を燃焼という。

有機物の燃焼

【実験】

  • ガスコンロの火の上に石灰水をつけたろうとをかざすと白く濁る。

  • ガスコンロの火の上にビーカーをかざすと水滴がつく。

有機物 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水

 有機物が燃焼すると二酸化炭素と水ができる。このことから,有機物には炭素原子と水素原子が含まれていることがわかる。

メタン + 酸素 → 二酸化炭素 + 水

$${CH_4 + 2O_2 → CO_2 + 2H_2O}$$


燃焼とは何か

前提知識

 最初に,「思い出そう」という部分に以下のことが書かれていました。

  • ろうそくや木が燃える時には,空気中の酸素が使われて二酸化炭素ができる(小学校6年)

  • 有機物は加熱すると黒く焦げて炭になったり,二酸化炭素が発生したりする(中学校1年)

 つまり上記2点はこの単元を理解するための前提知識です。特に小6の知識は重要でしょう。これは,燃焼という概念の小学校的な理解を表しています。

 普通「燃焼」という日常語はほとんど「火」や「炎」と同義なのですが,小6で燃焼と言ったら「空気中の酸素が火の中で二酸化炭素に変わること」と理解していなければなりません。そのような小学生がクラスに一体何人いるか,さらにそれを中2まで覚えているか,と考えると,難しそうですね。

 酸素も二酸化炭素も,両方とも見えないのです。燃焼という言葉の意味を考えるとき,見えるものについて考えるのではなく見えないものについて考えなければならないのです。人間は火のようなものを見ると,どうしてもその光や熱に意識が集中してしまい,見えない空気,さらにその成分について考えをめぐらせることは困難です。

燃焼とは酸化反応である

 さて,今回は中学理科2年生に戻りましょう。これまで炭素と水素の燃焼実験を行ってきました。炭素が燃焼すると二酸化炭素が,水素が燃焼すると水ができることを体験的に知ったわけです。この体験を原子論的な世界観で解釈したものが以下の化学反応式でした。

$$
C + O_2 → CO_2
$$

$$
2H_2 + O_2 → 2H_2O
$$

 $${CO_2}$$, $${H_2O}$$ともに酸素をその成分に含んでおり,これを酸化物と言っています。特に「水」は「酸化水素」とは呼ばないので,酸化物とは認識しにくいですね。

 一方,紙や木,ガスなどの有機物を燃焼すると上記の両方が気体として出てきます。

有機物 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水

 以上の式から,有機物の成分は炭素と水素であることがわかります。炭素と水素を成分に持つ物質は炭化水素の化合物(炭水化物)とも呼ばれ,高校での有機化学の学びへとつながっていきます。その基礎を,ここで作っているのですね。

 人間社会の中で,「燃えるもの」とは有機物であることが圧倒的に多いです。ガソリンを燃やして走る自動車も,灯油を使った暖房器具も二酸化炭素と水の両方を排出します。この2つの物質は地球上で壊れにくい物質(安定)であると言えます。したがって,この2つの物質は地球の表面を,いつまでも変化せずに漂いづつけているのです。

 燃焼とは有機物と空気中の酸素が結びつくことである,という理解は完全ではありません。結びついた結果,水と二酸化炭素ができる。ここまでが,化学反応式で表された「燃焼反応」の中2的理解です。

有機物 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水

 反応式の矢印の前後を見ると,全く違う物質が左右に置かれています。この根本的な物質の変化は原子論的世界観でなければ到底理解できないものです。

 分子のイメージを思い浮かべれば,二酸化炭素の分子は炭素原子が酸素原子と結びついたもの,水の分子は水素原子と酸素原子が結びついたものであり,両者共に「酸化物」であることが特徴です。

 つまり燃焼とは有機物中に含まれる炭素原子と水素原子が空気中の酸素分子と結びつく「酸化反応」であると言えます。ここに至って,燃焼という言葉がミクロな世界とつながりを持つようになりました。これ以降,私たちは燃焼反応を酸化反応と同一視してゆきます。

 【燃焼=酸化反応】 有機物 + 酸素 → 酸化物

 こうしてまた一つ,世界を化学的に観る,ということができるようになりました。火や炎を見た時,今までは目の前で起きる炎のゆらめきをただ眺めているだけだったし,それが燃焼という言葉の意味であると思っていた。しかし今度は炎を見ながら,同時並行で思い浮かべるイメージがあります。

 それは有機物に含まれる炭素原子や水素原子が,空気中の見えない酸素分子と衝突して削り取られ,二酸化炭素や水蒸気といった,これまた決して見えない気体分子として空気中にバラバラに分散・拡散してゆくという「想像」です。

 このように,化学者は現実世界に,現実を超えたミクロな概念世界を重ね合わせながら,世界を原子論的に解釈しているのです。

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