ショートショートっぽいSF詩書いてみた

こんにちは、
詩誌のココア共和国にて『第2回いがらしみきお賞』を受賞した、
詩を書くことが好きな伊藤テル(青西瓜)と申します。

そんな私は一つの批評として、
「貴方の詩は詩じゃない、ショートショートだ」
と言われたことがあります。

その時は自分の詩が詩である理由を述べました……と書いても、
お読み頂いている方々にはピンと来ない話だと思うので、
まず自分が書いて、詩誌に掲載して頂いた詩を載せますね。
(詩誌に掲載して頂いた詩も自分の著作権として、
 認めて頂けるらしいので、
 掲載して頂いてから時間も経過しているので、そのまま掲載します)



【ソヌちゃんの推し活】
やぁ、テルの家と契約して一緒に住んであげているソヌちゃんだよ。
みんなソヌちゃんのこと好き? 絶対好きでしょ!
偶然だね、私もソヌちゃんのこと大好き!
貴方もソヌちゃんが好きで、私もソヌちゃんのこと好き、
だから一緒だね、ソヌちゃん、すごく嬉しいと思うよ。
そんなみんなのアイドル、ソヌちゃんだけども、
ソヌちゃんにも推しがいます。
推しっていいよね、推しがあると生活が潤うよね。
私はとある地域のことを推しているの。
そこが野菜を作ったり、タバコの葉を作ったり、
ビールの原料になるホップを作ったりしているから、
野菜モグモグのタバコすぱすぱのビールぐびぐびなんだぁ。
野菜をタバコの煙でスモークして、ビールで流し込むんだぁ。
もう吸ったタバコの煙を吐かずにビールで胃に流し込むほど!
テルからは「体に悪いよ」と言われているけども、
推し活の邪魔をする指図なんて許せないよね。
そんな私は指図することが大好き。
テルの生活を監視して、状態が悪いとすぐに、
「体に悪いよ! 良くないよ!」と言います。
やっぱりタバコを吸いながらの、ビール飲みながらの、
指図って最高だよね、私、みんなと一緒でこれも好き!
みんなもタバコ吸いビール飲み指図好きだよね?
一緒、一緒、みんな一緒なんだ、みんなソヌちゃんなんだ。
みんなソヌちゃんなら、世界は平和なんだ。
指図する相手は、好きな相手を見つけてね。
指図活していると気が大きくなれて、気持ちが良いんだよ。
でもモチロン大切、信頼関係! これが無いとハラスメント!
良い指図し合う関係をみんなは見つけてね。
ソヌちゃんは一方的だけども可愛いからいいんです。



あぁ、はいはい、分かります、分かります。
貴方も「これは詩じゃない」と言うんでしょう、知ってます知ってます。

ただこれは詩です。
私が詩と思って書いたので詩です。
ぬいぐるみに詩を書かせる、ぬいぐるみ詩というものです。
ソヌちゃんというのは、私の家にいる、ぬいぐるみで、
そのぬいぐるみが詩を書いているわけです。

つまりこれは、
ぬいぐるみが感情を描いた、感情の詩なのです。

というわけで、
ぬいぐるみが私の代わりに詩を書き、投稿しているわけです。
「じゃあその場合、受賞者オマエじゃないだろ」と言われたら、
ぐうの音も出ませんね。

でも大丈夫、私は自分の詩も書いています。
もう一本載せます。
それを見て最終的な判断を下してください。



【ラップ詩:イジメは犯罪】
苦しい人を救いたい詩(うた)? それはとても古い細工だ
馬鹿らしい、必要なのはナイフだ アイツらを殺す詩がいい
悩むを助けるより、悪いを刺したほうが 効率的だし、妥当だ
イジメは犯罪だ、ハッキリ言う ただ優しいからは脱皮し、斬る
心に刻んで一生重荷に感じろ もっと優等生の小鳥に賛辞を
うるさくても正しさを言い続ける 飛翔が必要、意義作れる
そんな小鳥が大切なんだ それなのに狡賢い採決ばっか
出し抜く為に蹴落とすばかり 横行している芽を折る破壊

和解なんて無くて、無い見境 残った場所には灰しかない
知らなかったじゃ済まされない それは犯罪、捕まえたい
イジメは人を一生ダメにする行為 人の言葉に焦り、鬱の海
トラウマは消えない 染まる粗い世界
心の中は自動でモザイク処理され 何も見えず、終わり、惨いだけ
何度でも言うイジメは犯罪 加害者を守り過ぎることは反対
もっとリスクがあるべきだ それを行なうには革命か?
今、私ができる作戦は 強く非難するだけ、あとは待つ変化

では、遅すぎるということ でもそれしかないってどういうこと?
詩(うた)は無力だ、負荷が課題 触れた人にしか伝わらない
もっと気軽に響かせたい お手軽さと言葉の意味兼ねたい
だから工夫してラップ詩(し) こうやって心を散布し
なんて説明はどうでもいい とりあえず言葉を問うてもいい?
『意味の無い攻撃は辞めてくれませんか?』
正直言って貴方の攻撃は穴だらけ 傷つけるだけの刀だね
最後も言う、イジメは犯罪 単純にそれは思考が足んない



はい、めっちゃ3ヴァース。
一行が短いので、BPMの速いトラックでしょうかね。

さすがにこれは詩でしょう、
「詞だろ」と言われたら、ぐうの音も出ませんね。

さて、
その批評を仰ったお方には、
私自身、ツイッターに返信を送り、自分の詩が詩である理由を述べました。
でも同時に、私の中ではショートショートではない理由がありました。
この詩である理由と、ショートショートではない理由って違うんですよね。
ただ全部書くと長くなるので、そこは説明しませんでした。
でも今日は
タイトルのフリ(ショートショートっぽいSF詩書いてみた)として、
私の詩がショートショートではない理由を書きます。
エッセイ部門なんで。詩の羅列じゃダメなので。

私の思うショートショートの基準は描写があることです。
一本目の【ソヌちゃんの推し活】で例を挙げるなら、

やぁ、テルの家と契約して一緒に住んであげているソヌちゃんだよ

の文の前に、ショートショートなら、

 私はテーブルの前に座って、詩を書いている。
 テルから詩の代筆を頼まれたからだ。
 もう本当に頼まれた。
 権利を奪うように頼まれたと言っても過言じゃない。
 でも私が奪ったんだからテルも嬉しいはずだ。
『やぁ、テルの家と契約して一緒に住んであげているソヌちゃんだよ』
 まず最初の挨拶を書いた。
 説明として妥当だと思うね。
 ただ一発目ですぐに名文を書いてしまう自分に惚れ惚れし、深く呼吸してしまう。

というような描写が入るはずです。
でもその描写が一切無く、喋りの部分だけで構成されている。
だから私の詩はショートショートじゃないんです。

よく小説書きの人が自分を卑下する時に
「ポエムみたいなのを書いてしまった」
と言うじゃないですか。あれ大嫌いなんですけども、
”ポエムみたいなのを書いた”の意味って、
描写の無い、心理描写だけの文章を感情のまま書いてしまった、
という意味なんですよね、多分。
昔のケータイ小説とかは、そんな感じでしたよね。

というわけでショートショートと言えば描写という認識でいる人間が、
ショートショートっぽいSF詩を書いてみました。
(やっとタイトルにいきましたね)

何で書こうとしたかの経緯なんですが、
この前、詩がテーマの小説を書いたのですが、
いろんな種類の詩を載せたかったので、
そういう詩も書くことにしたからです。

で、それが余ったので、それを掲載しようという話です。
さて、百聞は一見に如かず、まだその詩をご覧ください。
どうぞ。



【彦星ストーリー】
彦星がくしゃみをしたら、銀河ができた。
それを織姫が「泡の川」と嘲笑したら、天の川が枯れた。
彦星の気持ちと共に。

泡だらけの唾を飛ばしてしまったことは
イジらないでほしかった彦星は、
HONDAのナナハンバイクで過去へと走り去った。

七月七日は暴走族の日になった。

笹の葉をバイクのケツに付けて走る。
イントロには、ふかすエンジン音が足されて、
さらさらからガサガサになった童謡は男心をくすぐった。
子供は恐竜図鑑からバイクのパンフレットを読み込むようになった。

頂点を目指している、とある漢が聖地と言われる泡の川を目指した。
HONDAのナナハンバイクのエンジンを利用した、
カッコイイ・ロケットを作って、泡の川を目指した。

しかし
ブラックホースという宇宙の馬に追い抜かれたロケットは、
ふて寝をしてしまい、織姫の家の前で止まった。

織姫から、彦星への接し方でおもてなしされた漢は、
すぐに織姫が寂しがっていることを察し、一緒に住むことにした。

彦星はHONDAのナナハンバイクで今、光速を超えたところ。

でも彦星は、あの頃の織姫はもう過去にいないことを知らない。



さて、
これが詩であり、かつ、ショートショートじゃない理由を述べましょう。

まず書き方ですね、
ショートショート(小説)は一段落下げるし、こんな空白開けませんよね。
そうですね、
それは屁理屈というものですね、話を掘り下げていきましょう。

詩である部分なんですが、これは感情を主軸になっているという点です。
話は展開していっているのですが、
要所要所、感情で区切りがついています。
勿論ショートショートも感情の変遷や、
最後主人公(の心)がどう変わったのかが重要ですが、
感情の余韻で終わっているところが詩らしいところかなと思います。

小説(ショートショート)はオチを言うモノが多いと思います。
スッキリ終わらせるというか、
勿論モヤモヤしたまま終わる小説もありますが、
そういう手法は少なくても新人賞では好まれない傾向にあると思います。
(大御所なら、いくらでも自由なモノが書けますが)

でも詩はオチで終わらせないのかな、と解釈しています。
余韻を残して、考える余地を作るというか。

小説は
『ハッピーエンドの向こう側』『バッドエンドの向こう側』というように、
何エンドが分かった状態で余地が残っていると思うのですが、
詩はまだ何エンドか分からないといった状態で、
終わるモノなのかなって思います。

彦星はHONDAのナナハンバイクで今、光速を超えたところ。

でも彦星は、あの頃の織姫はもう過去にいないことを知らない。

この場合、
「彦星は絶対にバッドエンドだ」とは言い切れないと思います。
『光速を超えて自分の道に邁進し、
 織姫のことなんて一切考えていないかもしれない
 (彦星のほうから願い下げ)』
という解釈もできると思います。

こうやって解釈の余地を残すモノが詩だと思います。
小説は読み手に自分の決めた物語を与えるモノで、
詩は読み手に自由な感情を与えるモノ、といった感じでしょうか。

と、言語化していきましたが、本来これは曖昧なモノですよね。
さっき書いた通り、小説でも何エンドか分からないモノってありますし。
(でもそれは売れたら続編というずる賢い考え方もしているので、
 一概に”そういうモノ”として書いているわけではない)

まあ結局のところ、詰まるところ、
書いた人が詩と言えば詩だし、
書いた人が小説と言えば小説なんですよね。

描いた人が漫画と言えば漫画だし、
描いた人がイラストと言えばイラストだし、

掻いた人が虫刺されと言えば虫刺されだし、
掻いた人が風呂に入っていないだけと言えば風呂に入っていないだけだし。
いいや、
その場合だけはまずムヒ塗って様子見ればいいし、じゃあ風呂入れ。

こんなところでしょうか。
ただ新作の詩一本だけでは味気無いので、
もう一本使わなかった詩があるので、それを掲載して終わります。
この詩もさっき書いたことを踏まえて、
最後に鑑賞して頂けると有難いです。
何か道徳の授業みたいな終わり方で嫌ですね。





【爪切り鬼滅】
爪を切ると大切な観念が無くなる体質の僕は、
今日全裸で荷物運びのバイトをしていたらしい。
最後に指摘されて気付いた。
道理で太陽が近くに感じたわけだ。

多分昨日のバイトで、
「爪が長いと気持ち悪いし、
 何よりも荷物を傷つけるかもしれないから切ってきなさい」
と言われたからだ。
正直荷物の前に僕はこの言葉で傷つけられたけども、
自分のシルエットを客観的に見た時、影が濃くなったので仕方ない。

爪を切ると大切な観念が無くなる体質に気付いた時から、
切らないようにしていたけども、
あのバイトは金払いが良くて、つい切ってしまったのだ。
空港の荷物を運ぶだけで十万円は違法じゃんと笑っている。

と思いながら強盗をしていました。

その時に気付いたんです。
僕はお金関係の観念が消えてしまっている、と。
大切にしていた闇が消えてしまっている、と。

いつから無くなっていたのだろう。
お金の観念だけはちゃんとしなきゃと思っていたのに。
この人間にとって業とも言える闇は、
大切に喉の奥にしまってないといけないのに。

そうだ、あの時だ。
爪が伸びすぎて、段々周りから化け物扱いされて、
つらくて、きつくて、うっくつして、ことばが、もじが、こどもになって、
つい子供のように爪を噛んだ時、お金関係の観念が消えたんだ、きっと。

僕は警察に逮捕された。
そこで久しぶりに人間扱いされた。

人は見た目が全て。
全裸強盗でも爪を切っていれば人間だ。

箸が持てるし、弁当が美味い。

明日恋しようかな。

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