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優しい時代なんてあったのだろうか?

『優しさをください―連合赤軍女性兵士の日記』大槻節子/1998年

連合赤軍事件で悲劇的な死をとげた女子学生の68年?71年にかけて遺した日記。ここに表わされたものは、60年代後半から70年代初頭の激動の時代の重圧にあえぎながらも、人間らしい生き方を追求した真摯な魂の記録である。

二十歳から連合赤軍の山岳キャンプでリンチ死するまでの約三年間の連合赤軍女性兵士の日記。連合赤軍事件リンチ殺人事件では被害者の一人にしかすぎないがその内面を読むと壮絶な人生。Kという活動家のリーダーと出会って学生運動から活動家へ。火炎瓶所持で警察に捕まる。

取り調べの警察官に優しくされて(保護されたと思って)恋愛感情にも似た関係になる。それを捜査に利用されてKが実刑を受けてしまう。組織から裏切りと見られるが、まだKとの関係は続く。そこから自己改革しなければと赤軍兵士になっていく。指名手配犯との共同生活(特務)もその男が射殺される。また文学オタクのような男に出会うが、そのいい加減さは信用できないと思う。ただそれは自分自身とも重なっているのだ。その弱さを革命の強さに変えようとするが、結局は総括というリンチ事件に巻き込まれる。

大槻節子の取り調べ官に対する義憤、かつての恋人?を実刑にして自分は保釈の身となる。戻ってから母親に「チクショー、チクショー」と言ったそうである。そのことがあってから連合赤軍に積極的に関わることになっていく。日記に書かれていた(社会的な)子供と大人(刑事)の葛藤。子供時代の終わり。

最初読むと『二十歳の原点』に似ていると思った。時代的なことなのか。文体が英単語がアクセサリーになっている。これは芥川の影響か?あと吉本の詩が引用されて、それっぽい詩が書かれていたり、日記を書くということは様々な葛藤があった中で、当時の時代背景に染まりながら、最悪の道を進んでしまったのか。今だった文学フリマとかにいそうな女子大生だったかもしれない。二十歳のときに自身の成人式を祝うのではなく、ここまで育ててくれた母親に感謝を述べる言葉とか、ぐっとくる。彼女は妊娠していた。とにかくそういう人もいたのだった(妊婦にリンチを加えその赤ん坊を革命戦士として取り出そうとした)。人はかくも残酷になれる。(2018/7/21)

参考書籍、『カバに噛まれる』大江健三郎、『レッド』山本直樹、『夜の谷を行く』桐野夏生

参考映画、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』若松孝二監督


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