「やまぶき」に込められた象徴性
『やまぶき』(2022/ 日本=フランス)【監督】山崎樹一郎 【キャスト】カン・ユンス,祷キララ,川瀬陽太,和田光沙,三浦誠己,青木崇高,黒住尚生,桜まゆみ,謝村梨帆,西山真来,千田知美,大倉英莉,松浦祐也,グエン・クアン・フイ,柳原良平,齋藤徳一,中島朋人,中垣直久,ほたる,佐野和宏
岡山という都会とは対照的な地方の社会問題を捉えた映画。「太陽をみんなで一緒に見るひまわりじゃなくていい」は劇中の「やまぶき」という名の少女が言ったのだと思うが、山吹は山の日陰げでも咲く花で、日本発祥の花なのだそうだ。
古くは「万葉集」から詠まれていて、芭蕉の俳句「古池やかわず飛び込む水の音」も「古池」の代わりに「山吹」を付け合わせてみたらというのが、弟子の其角が言ってという春の季語だった。だから結構明るいイメージを持っていたのだが、「山吹」という漢字が表しているように、本来は山に咲く植物で厳しい自然に耐えているイメージをこの映画では象徴しているように思えた。
また「山吹」の逸話として、深い谷底に咲く金の花という意味から金運がいいとか、その花言葉のイメージも映画の中に出てくる。
やまぶきという名前の女子高生の周りに起きるそれぞれの事件。韓国籍の男が日本で外国人労働者として山で働いている。彼には在日の夫と別居している女性と娘と生活を共にしているが、日本では恵まれていなかった。韓国に残してきた家族(北朝鮮かも?)、そして山の不運な事故により仕事を失う。そんなときにバックの中の大金を拾うのだが、それはヤクザの資金だった。そんなことで横領で逮捕される。
刑事は、中国人と日本人のハーフの売春婦と浮気を重ねる。それは亡くなった妻の欲望を埋めるためかもしれない。その女性が今は中国の方が金回りがいいと言う。金持ちの国が貧しい国を支配する構造。
やまぶきの母はジャーナリストで国際紛争の場で亡くなったのだ(イランかシリア)。そういう母の精神を引いていると共に思春期で父とも対立状態にあるのだ。
そのやまぶきはサイレントデモを繰り返す。それに付きそうボーイフレンドだが、誰かの助けになりたいと自衛隊に行く決意をする。
そういう複雑な感情が交差する映画でなかなか感想を述べるのは難しい。ただインディーズだからこういう映画が作られたのか?そこに出てくる俳優陣は映画に対しての敬意を持つような人ばかりだった。
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