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「やまぶき」に込められた象徴性

『やまぶき』(2022/ 日本=フランス)【監督】山崎樹一郎 【キャスト】カン・ユンス,祷キララ,川瀬陽太,和田光沙,三浦誠己,青木崇高,黒住尚生,桜まゆみ,謝村梨帆,西山真来,千田知美,大倉英莉,松浦祐也,グエン・クアン・フイ,柳原良平,齋藤徳一,中島朋人,中垣直久,ほたる,佐野和宏

太陽をみんなで一緒に見るひまわりじゃなくていい
かつて韓国の乗馬競技のホープだったチャンスは、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。岡山県真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちとともに採石場で働いている。一方で、刑事の父と二人暮らしの女子高生・山吹は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める。二人とその周囲の人々の運命は、本人たちの知らぬ間に静かに交錯し始める−−。陽の当たりづらい場所にしか咲かぬ野生の花「山吹」をモチーフに、資本主義と家父長制社会の歪みに潜む悲劇と希望を描きだす群像劇だ。政治的な主題を声高ではなく繊細に描く作風が評価され、今年5月に行われたカンヌ国際映画祭のACID部門に日本映画として初めて選出される快挙を果たしたほか、多数の海外映画祭に招待されている。

山間で農業と映画製作を続ける山﨑樹一郎監督の長編第三作は
地方に生きる人々の慎ましい抵抗を国際的な視座で描く

本作は、岡山県真庭市の山間で農業に携わりながら、地方に生きる人々に光をあてて映画製作を続ける山﨑樹一郎監督の長編第3作。長編デビュー作『ひかりのおと』(11)では、故郷・岡山に戻り酪農を継ぐ若者の苦悩と葛藤を描き、『新しき民』(15)では江戸時代の農民一揆を題材とし時代劇に挑戦した。『やまぶき』は、再び地元でロケをし初めて16ミリフィルムで撮影に挑んだ野心作だ。

チャンス役を演じるのは、イギリスで演劇を学び、今回初めての日本映画出演となる韓国人俳優のカン・ユンス。山吹役は、『サマーフィルムにのって』(21)や『セイコグラム~転生したら戦時中の女学生だった件~』(NHK/22)など話題作への出演が相次ぐ演技派俳優・祷キララ。その傍に、川瀬陽太、和田光沙、三浦誠己、松浦祐也、青木崇高らの実力派俳優たちが集結し、田舎町に暮らす人々のほとばしる生を体現している。

本作は、フランスのSurvivance(シュルヴィヴァンス)との国際共同製作によって完成された。『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』(16)でアヌシー国際アニメーション映画祭で2冠を得たセバスチャン・ローデンバックがアニメーションパートを、オリヴィエ・ドゥパリが音楽を担当。また、フランソワ・トリュフォーやモーリス・ピアラ、フィリップ・ガレルなど巨匠監督の作品を手がけた、フランス映画の伝説的な編集マンであるヤン・ドゥデが編集協力をしている。

岡山という都会とは対照的な地方の社会問題を捉えた映画。「太陽をみんなで一緒に見るひまわりじゃなくていい」は劇中の「やまぶき」という名の少女が言ったのだと思うが、山吹は山の日陰げでも咲く花で、日本発祥の花なのだそうだ。

古くは「万葉集」から詠まれていて、芭蕉の俳句「古池やかわず飛び込む水の音」も「古池」の代わりに「山吹」を付け合わせてみたらというのが、弟子の其角が言ってという春の季語だった。だから結構明るいイメージを持っていたのだが、「山吹」という漢字が表しているように、本来は山に咲く植物で厳しい自然に耐えているイメージをこの映画では象徴しているように思えた。

また「山吹」の逸話として、深い谷底に咲く金の花という意味から金運がいいとか、その花言葉のイメージも映画の中に出てくる。

やまぶきという名前の女子高生の周りに起きるそれぞれの事件。韓国籍の男が日本で外国人労働者として山で働いている。彼には在日の夫と別居している女性と娘と生活を共にしているが、日本では恵まれていなかった。韓国に残してきた家族(北朝鮮かも?)、そして山の不運な事故により仕事を失う。そんなときにバックの中の大金を拾うのだが、それはヤクザの資金だった。そんなことで横領で逮捕される。

刑事は、中国人と日本人のハーフの売春婦と浮気を重ねる。それは亡くなった妻の欲望を埋めるためかもしれない。その女性が今は中国の方が金回りがいいと言う。金持ちの国が貧しい国を支配する構造。

やまぶきの母はジャーナリストで国際紛争の場で亡くなったのだ(イランかシリア)。そういう母の精神を引いていると共に思春期で父とも対立状態にあるのだ。

そのやまぶきはサイレントデモを繰り返す。それに付きそうボーイフレンドだが、誰かの助けになりたいと自衛隊に行く決意をする。

そういう複雑な感情が交差する映画でなかなか感想を述べるのは難しい。ただインディーズだからこういう映画が作られたのか?そこに出てくる俳優陣は映画に対しての敬意を持つような人ばかりだった。

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