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9月の読書

ベスト

坪内稔典『坪内稔典の俳句の授業』

関連本。坪内稔典『俳句的人間・短歌的人間』。これも面白かった。

木下龍也『天才による凡人のための短歌教室』


俳人から歌人へ変態しようか?きっかけとなった本

水内喜久雄(編)『おぼえておきたい日本の名詩100』

詩人の夢もある。

乗代雄介『旅する練習』

小説家だって夢じゃない?

テリー・イーグルトン『文学とは何か――現代批評理論への招待(上)』

文芸批評家にはならないだろうな。でも、この本はお勧め!

関連書籍
小林真大『「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門』。「読書感想文」止めて「文芸批評」というトピックスにしようと思ったのだが面倒そうだった。

2022年9月の読書メーター

読んだ本の数:23冊
読んだページ数:5663ページ
ナイス数:663ナイス

https://bookmeter.com/users/56191/summary/monthly/2022/9
■「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門
テリー・イーグルトンの『文学とは何か』のサブテキストような。高校生には難しいだろう。もっともこれを理解すれば大学の文学部なんてちょろいもんだ。私は構造主義とか記号論は混乱する。文芸批評と言うより現代思想だ。文学の構造が社会的に影響されているが、また新しい読者によって開かれていくのも事実だ。そして新たな問題提起がされていく。https://note.com/aoyadokari/n/nf07c00ee66cf
読了日:09月28日 著者:小林真大
https://bookmeter.com/books/17338461

■文学とは何か――現代批評理論への招待(上) (岩波文庫)
客観的に「文学とは何か?」とは問えないという。例えばマルクスやヘーゲルの哲学書が文学と言えないのは何故か?酔っ払いが書いた手紙をどう文学と区別しているのか?シェイクスピアが偉大な文学だとして、これから先読まれなくなることはないのか?その時代時代に言われる文学というものは社会制度に影響される。時代的な社会的価値として文学と読んでいるもののあやふやさ。ルソー『告白』は哲学書より文学だと思うのだが、それはいつからなのだろう?何故「小説」の始まりと言われているのか?
読了日:09月28日 著者:テリー・イーグルトン
https://bookmeter.com/books/8219161

■天才による凡人のための短歌教室
訳あって短歌を作らなければならなくなったので急遽短歌の入門書を読んだ。今までそういう本を読まなかったわけではなかったが、これだけ実践的な本も珍しい。何よりも短歌が作れそうな気がするのがいい。それは坪内稔典の俳句入門書に通じるものがあるかもしれない(俳句の心構えみたいなもの)まず歌人として名乗ろうという、最初から歌人なんだと思うことでいい加減には済まされない短歌の世界への招待を受けるのだ。それは後には引けない寺山修司が「俳句絶縁宣言」をしてから短歌の世界に入るような決意が必要なのかと思ったぐらいである。
読了日:09月28日 著者:木下 龍也
https://bookmeter.com/books/16491393

■外套・鼻 (岩波文庫)
「鼻」は主人公から離れて勝手に行動する小説だが、「鼻」は換喩的表現なのだ。それが切り取られるということは、臭いの消滅、最初床屋の髭を剃る手が臭いということだった、無味無臭というと人工的な模造品のような感じだが、ペテルブルグという都市がまさに人工都市であったのだ。そして換喩的表現は上位(主人公)が下位(床屋、鼻)概念の逆転現象だが、それもこの喜劇の面白さなのだ。鼻が主人よりも地位が高く振る舞う。通常は上位のものに逆らえない日常世界、それを逆転させたことで喜劇が生まれる。
読了日:09月26日 著者:ゴーゴリ
https://bookmeter.com/books/527491

■楚囚之詩
楚囚というと中国の戦時の楚の囚人で望郷の念に取り憑かれた捕囚。それを元に日本の民権運動で囚われた囚人の叙事詩になっているのだが、故郷より若妻を忘れられない情けない男になっている。最後恩赦でそんなに喜ぶのなら最初から罪深いことはしなきゃいいのにと思ってしまった。覚悟性が足りない。恋愛詩の要素が入ってロマンチックになっているのかも。ただ後に出版を引っ込めているので透谷としても出来はいまいちなのだろう。近代詩の始まりなのだが、叙事詩より叙情詩なんだろうな。
読了日:09月26日 著者:北村透谷
https://bookmeter.com/books/9039896

■おぼえておきたい日本の名詩100
著者は1951年生まれだからフォーク世代。私の世代はニューミュージック世代だから、そのへんが素朴なフォークとひねくれたニューミュージック世代の差だろうか?と思ってしまう。詩を声を出して朗読していたという世代は今となっては羨ましいかも。なんなく記憶はあるが、空では出て来ないのはやっぱ文字で読んでいた世代なんだろうな。https://note.com/aoyadokari/n/n5433f5b73184
読了日:09月24日 著者:水内 喜久雄
https://bookmeter.com/books/461272

■一年有半 (古典新訳文庫)
正岡子規『『仰臥漫録 (ぎょうがまんろく)』で中江兆民『一年有半 』を批判していたので読んでみた。正岡子規は、大御所に楯突いて自分の立場を鮮明にする困ったオヤジタイプなんで、この子規の批判は当たっていまい。自分の死期が近いことを売文にするなんて軽薄だという考えがあったようである。しかし、解説でも触れられているように、これは弟子の幸徳秋水に請われて発表したもので、秋水との話では死後にでも出してくれということだったのである。そして、ベストセラーになったものの印税契約はしてなく著作料だけの契約だったようである。
読了日:09月23日 著者:中江 兆民
https://bookmeter.com/books/10902685

■俳句的人間・短歌的人間
俳句で一番信頼している俳人。『坪内稔典の俳句の授業』はどんな入門書よりもわかりやすい。その視点が新しく面白い。ただ面白いだけではなく俳句の核心をついた考察でも正岡子規に対するものは納得がいく。
正岡子規と言えば誰もが俳句の革新運動をして、それまでの「俳諧」から「発句」の自立性を促し文学の地位まで高めようした。子規の中にある大言壮語的な思考が俳句や短歌という短詩系の文学運動を進めていくのだった。子規が俳句だけを特化しているように思えるが実は様々な文章を書いていたのだ。
読了日:09月22日 著者:坪内 稔典
https://bookmeter.com/books/353482

■旅する練習
乗代雄介は二作目。その前読んだ『本物の読書家』の方がメタフィクション的で好きだったが、これは乗代雄介なら最後はどんでん返し的な展開があるのだろうと期待しすぎて、極めて普通の文学的な落ちだった。芥川賞狙いというような。これが三島賞だと思うと期待外れかも。ただ作品としては面白かった。傑作ならば『本物の読書家』の方を押す。普通に中堅クラスの作家がいて、サッカー好きの小学生女子がいて、それぞれ目的は違うが鹿島スタジアムまで旅に出る。途中で就職中の女子に出会って、その出会いが最高の思い出となる。
読了日:09月21日 著者:乗代 雄介
https://bookmeter.com/books/17226631

■定本 俳句入門
いわゆる俳句作成の入門書として読むと失望せざる得ないかもしれない。それならば誰もが推薦するだろう藤田湘子『俳句20週入門』を読めばいいのである。では二冊目の入門書としてはどうなのだろうか?それも違うようである。何故なら、この本は中村草田男の『俳句入門書』であるからである。実際に『定本 俳句入門』では、あらましの俳句を説明した後に名句や中村草田男が選評した投稿句の解釈が続く。俳句が詠まれるだけではなく読まれることの重要さ。
読了日:09月20日 著者:中村 草田男
https://bookmeter.com/books/1741212

■仰臥漫録 (岩波文庫)
9月19日が正岡子規が亡くなった日で、子規忌、糸瓜忌、獺祭忌(だっさいき)などいろいろ呼ばれていますが、獺祭忌が一番面白いネーミングですね。獺(かわうそ)が自分の食べ物を並べるように、病床の子規もなんでも自分の側に並べていたからそう呼ばれたとか。『仰臥漫録 (ぎょうがまんろく)』は、俳句だけではなく絵筆を握って病床で描いていた。寝ながら描いていたので大して上手くはないですが、そこから子規の写生という吟行が出来ないなりにも四季の変化を探して描いていた。
読了日:09月19日 著者:正岡 子規
https://bookmeter.com/books/19666155

■ジェイムス・ジョイスを読んだ猫 (講談社文庫)
私が日記で影響を受けているのは高橋源一郎氏なのだが、それでもこの作品を読んでいると読書量が凄いと思うのだった。まあ全てを読んでいるわけではなく気になるところだけらしいのだが、それでもそれを探し出すにはテクニックが必要だろう。目次で大体検討を付けるとか。https://note.com/aoyadokari/n/n390641aa0b9c
読了日:09月18日 著者:高橋源一郎
https://bookmeter.com/books/16975285

■都市詩集 1 東京詩集 1 1860~192
江戸から東京へ遷都されモダン都市東京へと変貌していく姿を詩を通して見ていくという試み。詩の解説は、鮎川信夫でなかなか面白い着眼点の詩のアンソロジーになっている。まず詩は志として、明治の文明開化というより古い江戸を改革していく中で生き様を語ったのは、勝海舟や福沢諭吉が漢詩を用いてということだった。もっともこれは一般庶民には注目されるよりは、政治家や思想家のためだろう。明治の文明開化という文脈で白秋らのパンの会の舶来的な詩は、銀座カフェ文化の人口的な都市を象徴する詩が多く新しもの好きの目を引いた。
読了日:09月17日 著者:鮎川信夫
https://bookmeter.com/books/2419413

■ロシア的人間-新版 (中公文庫 い 25-7)
ロシア人の終末論的救済論にロシア正教があるのだが、それはかつてロシアが韃靼人(タタール人)に支配され奴隷状態に置かれ、その記憶が虐げられた人々の救いとしての英雄待望論につながった。そしてイスラム勢力から彼らを解放したイワン雷帝はツァーリズムと教皇権力を一体化させた絶対君主となった。しかし庶民は相変わらず虐げられた人々のままなのだ。そしてピョートル大帝がモスクワ・ロシアを滅亡させて、西欧化を取り入れた近代化を進める。そのときに遷都されたのがサンクトペテルブルクなのだ。
読了日:09月16日 著者:井筒 俊彦
https://bookmeter.com/books/19890607

■スペードのクイーン/ベールキン物語 (光文社古典新訳文庫)
『スペードのクイーン』は、フランスへの憧れ(ナポレオンと賭博をする女王)、ちょうど時代はプルースト『失われた時を求めて』と同じ時代に巨富を手に入れた貴族は、ロマノフ王朝の幻想のサンクトペテルブルク(ピョートル1世がヴェネチアに模倣して作らせた遷都)という都市の物語がプシーキンから始まりロシア文学のサンクトペテルブルクものはその後ゴーゴリ、ドストエフスキー、トルストイと書き継がれていく。それは誇大妄想的ロマノフ朝の悪夢なのである。
読了日:09月16日 著者:プーシキン
https://bookmeter.com/books/9336505

■読書会という幸福 (岩波新書 新赤版 1932)
この本を読んで高校の授業で読書会形式の選択科目を選んでいたことを思い出した。『戦争と文学』というような内容で戦争文学の本を指導教授が選択し、一週間で読んで各自の意見を発表する。最初はやる気もあったのだが次第に読書が苦痛になってしまい、さらにその指導教授の選ぶ本が偏向しているとさえ思えてしまった。この本でも高校生の読書会で不良っぽい少年の「怖いわ」という意見に繋がるのかもしれない。全員がある一定方向へ読書して、教師が期待するような感想を上げる。
読了日:09月12日 著者:向井 和美
https://bookmeter.com/books/19779696

■プルーストの部屋〈下〉―『失われた時を求めて』を読む (中公文庫)
図書館本なので読みきれずに文庫本を借りた。この本を読む人はすでに『失われた時を求めて』を読んだ人前提に書かれている。先行する批評からの引用も多く著者の読書ノートという意味合いが強い。プルーストの文章を長く引用してくれているのは思いだすので助かるが原稿料稼ぎなのかと思ってしまった。二巻本にするほどのことがあったのか、後半に入ると大体語られていることはベル・エポックの終焉とパリやヴェネチアの都市のファッションや流行について。
読了日:09月11日 著者:海野 弘
https://bookmeter.com/books/611001

■今を生きるための現代詩 (講談社現代新書)
著者と年代が同じぐらいだった。男女機会均等法が出来て女性の社会進出が可能になった80年代。エリート女性はそれまでの輝きを失って男性社会にへつらうような仕草で仕事をしなければならなかった。アイドルの髪型を真似て、ボスの言う事に反発せずに軽くいなし、いつまでも態度を保留しながら男性社会で生き残っていく。その弊害が今の社会にあるのだと思う。アイドルの髪型を真似して、あの国会議員を思い出しました。選挙区で土下座させられた。https://note.com/aoyadokari/n/n54da70943bc7
読了日:09月09日 著者:渡邊 十絲子
https://bookmeter.com/books/6721100

■寺山修司の俳句入門 (光文社文庫)
寺山修司の俳句には嫉妬する。それは還暦から俳句を作り始めた私の後悔からか?違うような気がする。青春時代に俳句という短詩形式に出会って、青春を表現出来たことにだ。いまどんなに私が頑張っても青春俳句は作れない。寺山修司の俳句は、青春俳句なのだ。だから戦後俳句派にも恐れもせずに物申す。三十代の俳人への言葉は、今読むと若さゆえかなと思ってしまうことが年寄りな証拠だった。今の政治がどうなろうと、女の子と恋愛はするし、流行の音楽や映画について語る。ただそこに俳句がないだけだ。寺山修司の俳句以外は。
読了日:09月09日 著者:寺山 修司
https://bookmeter.com/books/3031

■セレクション戦争と文学 3 9・11 変容する戦争 (集英社文庫)
9.11に直接関係はない話も含めて、個人と国家という問題を考えさせらる作品が多かった。それは単一民族が信じる国とさまざまな多民族国家からやってくる者たちの言葉の交差(戦争)は、より悲痛な叫びとなって(特にシリン・ネザマフィ『サラム』は悲痛な文学)届いてくる。戦争は多くの難民を生み出すのだ。そんなときにアフガニスタンで戦争ではなく、ダムづくりで平和を訴えた故中村哲氏を思いだす。https://note.com/aoyadokari/n/nf74d8c2836ac

読了日:09月08日 著者:リービ 英雄 他
https://bookmeter.com/books/14353394

■坪内稔典の俳句の授業
小学生に俳句を教える授業が面白い。花の前に立たせて人物を詠む。例えば菊の花とY君とか。菊の花が季語だとして、Y君とは直接は関係ないが、その間に関係性をいれることで俳句が出来る。例えば「菊の花おちょこちょいのY君」とか。これは俳句になってないけど、それでクラスの中でどの俳句がいいか討論する。
俳句の「二物衝動」の取り合わせをそのように教える。小学生にもわかりやすい俳句の授業。こんな句会だったら参加してみたい。その中で小学が作った俳句の傑作が出来る。

読了日:09月07日 著者:坪内 稔典
https://bookmeter.com/books/639378

■四国遍路吟行
黒田杏子は、元編集者の俳人。そんな編集者の作った遍路吟行という句会の本だった。遍路よりも句会目的で四国八十八ヶ所(全部でもない)に集まって句会を開く。句会の本としては面白いのかな。当事者ではないんで、その座からは遠い。お遍路の道行よりも寺でのわいわいがやがやの観光客遍路のような。その中にお遍路している人のエッセイもあるのだが。もともと寂聴さんの今こそ「巡礼」の時代という言葉を受けて遍路吟行が成り立った背景も。そんな句会の編集本だったので、ちょっと期待外れ。「お遍路もみんなで集え法会かな」
読了日:09月03日 著者:黒田杏子
https://bookmeter.com/books/20221542

■佐藤泰正編 俳諧から俳句へ
俳句についての論考が八つ。一番納得したのは、坪内稔典『俳諧から俳句へ』か。女芭蕉と言われた田上菊舎は、探して読んでみたいと思った。北川透の子規の「鶏頭句」の論考は面白かった。ますますアンチ虚子になるな。他にも佐藤泰正の芥川竜之介と萩原朔太郎の近代俳句(芭蕉、蕪村)の見方はなるほどと思いました。https://note.com/aoyadokari/n/nfa00079e913e
読了日:09月01日 著者:佐藤泰正
https://bookmeter.com/books/20221608


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