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鶴見俊輔と戦後の『昭和史発掘』対談

『昭和史発掘特別篇 』松本清張(文春学藝ライブラリー)

厖大な未発表資料と綿密な取材によって、昭和初期の日本現代史のもの埋葬された事実に光を当てた、松本清張のライフワーク『昭和史発掘』は、文春文庫に全9巻で収録されていますこの昭和の巨星の生誕100周年を迎えるあたり、「週刊文春」連載担当者であり、現在、北九州市立松本清張記念館の館長である藤井康栄さんが発掘したのが、単行本未収録の一編
は、「穏田のラスプーチン」と呼ばれ、明治から大正時代宮中と政界を股にかけて暗躍した宗教家・飯野吉三郎が主人公の「政治の妖雲・」
もう一編が、桂太郎の愛妾であった美人芸人お鯉(安藤てる)が、小山松吉法相収の賄賂を告発し、逆に偽証罪で有罪になるという「『お鯉』事件」
明治から昭和初期にかけての政界の勝敗についてサイドストーリーともいうべきこの二編は、清張が追い続けた昭和史の暗黒の先がけと観念事件
です。
城山三郎氏とは「戦前篇不安な序章昭和恐慌」
五川味純平氏とは「戦中篇吹き荒れる軍部ファシズム」
鶴見俊輔氏との「知覚篇から田中角栄まで」この三つ
の対談から、昭和の数々の出来事の裏で、かなり軍部、政治家、戦略、権力者たちの熱いがうごめいてきたのかがわかります
。 」を、文春学藝ライブラリー向けに再編集し、「昭和史発掘特別篇」と改題し発行します。
目次
第1部 昭和史発掘 番外篇
政治の妖雲・穏田の行者
「お鯉」事件
第2部 対談 昭和史発掘
(戦前篇 不安な序章―昭和恐)慌城山三郎氏とは「戦前篇不安な序章昭和恐慌」
(戦中篇 吹き荒れる軍部ファシズム)五川味純平氏とは「戦中篇吹き荒れる軍部ファシズム」
(戦後篇 マッカーサーから田中角栄まで)鶴見俊輔氏との「知覚篇から田中角栄まで」

昭和史発掘の掲載されなかった二つは文春砲というような政治スキャンダル。一つは日本のラスプーチンと言われた宗教家飯野吉三郎の暗躍。もう一人は芸者からお筆先の占い師の女性で彼女も桂太郎首相の愛人になり助言していたとか。この国の暗部は宗教絡みが多いようだ。

最初の頃(2.26事件中心になっていく前)の『昭和史発掘』は松本清張ジャーナルという週刊誌的なネタが多かったのだが、その頃のものだったのかも。政治スキャンダルなんだが、今は芸能ネタばかりの週刊誌になってしまった。以前はこういう首相の裏ネタとか多かったような気がする。あるのはあるんだけど騒がれないだけか?芸能ネタの方が拡散しやすいのか?

対談は城山三郎は恐慌が軍国主義に繋がったこと、五川味純は満州進出の重要性で『昭和史発掘』の解説的な対談。復習という感じなのだが、鶴見俊輔との対談は戦後の振り返りで戦後の別の『昭和史発掘』で面白かった。

GHQが日本の軍備を解体したのは、その頃の将校たちがニューディール政策(資本主義の中に社会主義を持ち込む思想)の新しい思想の持ち主だったという。それ以前は日本についてまったく研究されていなかったという(国会図書館にも日本の資料がなかった)。

戦争になってから急遽研究者を育て、その彼らが日本の占領政策を担っていくのだった。それでマッカーサー元帥の方針は軍隊解体と天皇制存続をという方向に向かっていくのだった。アメリカはソ連の進出を恐れていたので原爆と天皇制存続で戦争を終結した。それ以前に日本は軍事力も壊滅状態だったのだ、アメリカ兵の犠牲者が増えるということで世界を納得させたのだという(まあ、原爆を使うことでソ連への意思表示でもあったのだ)。

ただ日本の官僚温存の場である帝国大学を解体出来なかったので東大官僚がその後の政治を支配していく。そうした官僚とGHQの将校たちは相性が良かった。朝鮮戦争が始まると日本の軍備再編成と基地化。この安保条約が後の日本の姿を決定づける。欧米中心の外交政策。天皇は欧米には視察に行けるがアジアには行けないという言葉が重い。

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