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台本通りに行かないのが人生さ

『ブラックバード』(アメリカ・イギリス/2019)監督ロジャー・ミッチェル 出演スーザン・サランドン/ケイト・ウィンスレット/ミア・ワシコウスカ/サム・ニール/リンジー・ダンカン

解説/あらすじ
ある週末の朝、リリーは夫のポールと暮らす静かな海辺の邸宅に、娘のジェニファー、アンナとその家族たち、そしてリリーの学生時代からの大親友で家族同然のリズを集める。しかしそれはともに楽しい時を過ごすためのものではなく、ある理由によって死を覚悟したリリーが”家族が家族であるうちに”過ごすために自らが用意した最後の時間だった。集った家族とその友人たちは、それぞれ平静さを装いながら母の願いである最後の晩餐に参加する。しかし、あるきっかけで弾けた緊張感とともに、次々と明かされていくそれぞれの秘密。そして最後に家族がとった行動とは…。

「ブラックバード」って烏だと思っていたらクロウタドリだった。ポール・マッカートニーの曲もあった。映画はチェーホフみたいな家族劇で『かもめ』のブラック・ジョーク的な芝居かなとも思ったんだけど、それに近いものがある。病気で余命がない母が安楽死を望む。

安楽死と尊厳死がどっちがどっちだかわからないのでこの記事。

「尊厳死と安楽死」http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~shimizu/cleth-dls/euthanasia/euth-def.html

それを巡る家族劇なのだが、ベルイマン『秋のソナタ』にも似ている(この映画がデンマーク映画『サイレント・ハート』のリメイク)。娘と母との葛藤の話で長女は優等生タイプ、次女が問題児パターン。母親も完璧な人でだから尊厳死なんかするのだが、問題が徐々にあらわになっていく喜劇のパターン。このドタバタ劇は面白かったです。シェイクスピア的な喜劇で、むしろこのまま進んでもらいたかった(そのほうが人間は間違うものであるという命題を示せた)?最後は台本通りなのか?

本当は最後のまとめ方には不満だった。台本通りに行かないのが人生なのに、やっぱこういう人は台本通りになるのかなと思って。次女が問題児になるのもわかる気がする。ただそれさえも母の手の中にあるという。女優の競演というようなドラマ。多様なキャラが魅力な映画。

あと長女の娘の夫がピエロ的な道化役なのだが、長女がおかしくなったときにセックスして宥めるやり方がそれまでのマッチョな男のやり方で好きになれない。ただ会話劇で面白いシーンはたくさんある。マリファナ・パーティーで「ウッドストック行って」ネタとか。

「安楽死」と「尊厳死」の解釈が逆でした。「尊厳死」は自然に任せて延命治療を止めようとするもので、その前に「安楽死」は自死を選ぶという。

最近でもフランスのミシェル・ウエルベックの記事がありました。

ミシェル・ウエルベック「安楽死を合法化する国、社会、文明は敬意に値しない」 | むしろ破滅させることが望ましい | クーリエ・ジャポン https://courrier.jp/news/archives/256261/

「安楽死」はヨーロッパは自己中だからそう望むのかな。自然に任せればいいじゃんと思うが。それに家族を持ちながら「安楽死」なんて贅沢言っているなと。恵まれすぎている家族劇だった。ラストは必ずしも台本通りという感じではないのかもしれない。解釈が別れるラストですね。

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