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未解決事件ミステリーというより刑事というお仕事映画

『12日の殺人』(2022年/フランス/カラー/ビスタ/1h54)監督・脚本:ドミニク・モル 出演:バスティアン・ブイヨン、ブーリ・ランネール、テオ・チョルビ、ヨハン・ディオネ、ティヴー・エヴェラー、ポーリーヌ・セリエ、ルーラ・コットン・フラピエ

「悪なき殺人」で話題を集めたフランスのドミニク・モル監督によるサスペンススリラー。ポーリーヌ・ゲナによる2020年のノンフィクション書籍をもとに、モル監督とジル・マルシャンが共同で脚本を手がけ、未解決事件の闇に飲み込まれていく刑事の姿を描き出す。

10月12日の夜、女子大学生クララが焼死体となって発見された。捜査を担当するのは、昇進したばかりの刑事ヨアンとベテラン刑事マルソー。2人はクララの周囲の容疑者となり得る関係者に聞き込みをするが、男たちは全員クララと関係を持っていたことが判明する。殺害は明らかに計画的な犯行であるにも関わらず、容疑者を特定することができない。捜査が行き詰まるなか、ヨアンは事件の闇へと飲み込まれていく。

主人公の刑事ヨアンを「恋する遊園地」のバスティアン・ブイヨン、相棒マルソーを「君と歩く世界」のブーリ・ランネールが演じた。2023年・第48回セザール賞で作品賞・監督賞・助演男優賞・有望若手男優賞・脚色賞・音響賞を受賞。

未解決事件映画のミステリーと見ると肩透かしを食う。これは警察のお仕事映画だから。刑事課のボスの退職祝いから始まる。苦労人のボスもやっと眠れない夜からおさらば出来る明るさの後に事件は起きる。ボスの代わりに入ってきた新人はパートタイマー職場だと勘違い野郎だし、いきなり難事件を呼び込んできてしまう黒猫野郎だった。この映画は猫の登場シーンが多いのだが、悪魔を運んでくる動物のように描かれているのか。新任のボスはあたまが痛いことばかりなのは、一般の中間管理職とは代わらない。

ストレス発散のために競輪場を自電車で走るのが日課のような毎日。最初はこいつが犯人かと思ってしまったが、刑事だった。競輪のユニフォームがぴちぴちで性犯罪者かと思ってしまったのだ。思い込み捜査はよくないというか男職場だからハラスメント言葉は当たり前だし、そのへんの企業ルールをわかってないベテランばかりなのだが、新人は彼女が出来て結婚すると浮かれているし、凄惨な通り魔殺人事件が起きているのだった。それも生きている人間に燃料をぶっかけ火を点けるという通常では考えられない殺人事件なのだった。

捜査するうちに被害者女性が男性関係が多いことが操作対象となる容疑者ばかり浮かんでくるのだが、どれも決め手にかける。怪しいDV男が犯人だと決めつけてしまったベテラン刑事は越権行為で暴力的に捜査してしまい、困ったことになってしまう。それ以前に家庭内に問題があり離婚話が出ていると聞かされていて、家に帰れないものだから自宅に住まわせたり面倒見がいい若手のボスなのだが、そういう問題はどうしようもなく別の課に左遷されてしまう。捜査も縄張りみたいなことがあって、面倒な事件ばかりを回される。そんなこんなで三年も過ぎたが事件は解決しなかった。

検事局の女性が捜査を解決するようにはっぱをかけるのだが、捜査の予算もなく思うような捜査も出来ないでいる。そんなときに左遷させられた刑事の代わりに優秀な女性刑事が入ってくる。ちょっと希望が持てそうな展開になるのだが、犯人だと思っていた容疑者が精神病患者だったりして、その期間は入院していたことがわかったり、がっかり展開ばかりで上手く行かないのだ。そんなときに左遷された刑事からメールで竜胆の写真が届く。それをたまたま印刷していた女性刑事が前任者の人柄について話をして懐かしくおもうのだった。彼はトラックばかり自転車でぐるぐるモルモットのように回ってないで、外道を走ればいいじゃないかと言っていたことを思い出し峠越えをしようとする気になるのだった。

事件は未解決のままで終わるのだが報われない仕事もあるという新人社会人には教訓的な映画だと思った。仕事のストレスに対して息抜きが大切だと知るのである。

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