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明石の君の琴の音色を聴け

『源氏物語 18 松風 』(翻訳)与謝野晶子(Kindle版)

平安時代中期に紫式部によって創作された最古の長編小説を、与謝野晶子が生き生きと大胆に現代語に訳した決定版。全54帖の第18帖「松風」。二条院に東の院が完成し、西の対に花散里を住まわせた。東の対には明石の君をと思う源氏だが、京で暮らす不安が大きく、悩む明石の君だった。そこで明石の入道は大井川の別荘に明石の君と姫君、母の尼君を住まわせた。心待ちにしていた源氏が訪れ、我が子の可愛さに感動する。帰京すると紫の上は機嫌が悪い。源氏は明石の姫を引き取って育ててくれないかと切り出す。紫の上は喜んで承諾する。

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『源氏物語』は五感に訴えるところがあり、とくにこの「松風」は音楽を感じるのは明石の君が琴の名手だけではなく「松風」という情景も琴の合奏と風の響きを伝える優雅なも帖になっている。この帖は武満徹あたりの音楽をBGMにしたいと思った。

内容は相変わらず強引な光源氏だが、明石の君よりもその母である尼君への気の使い方はなるほどと思わせる。まず嫁の母に気に入られること。このあたりの気配り。
でも入道は単身で置いてきぼりなんだよな(妻、娘、孫娘っと引き離されてしまった)。その別れの和歌のやり取りがなんとも味わい深い。

(入道)
行くさきをはるかに祈る分かれ路(ぢ)に耐えぬは老いの涙なりけり
(母君)
もろともに都は出(い)できこのたびやひとり野中の道にまどはむ

(母君)
身をかへてひとり帰(かへ)れる山里に聞きし似たる松風ぞ吹く
(明石の君)
故里(ふるさと)に見し世の友を恋(こ)ひわびてさへづることを誰か分くらむ



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