アメリカン・ポップカルチャーとしての『スパイダーマン』
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023/ アメリカ)監督ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン
スパイダーウーマンの女の子がバンドを組んでいてバンドを脱退するオープニングがいい。何気なくこういうシーンを見せられてしまうだけで圧倒される。例えば日本だったら『BLUE GIANT』とか音楽アニメになりそうなシーンだった。それをマーブルのコミック映画でやってしまうのだ。
また『犬王』のようなアニメで頑張ってもこの『スパイダーマン』の音楽性には敵わないような気がする。それはアメリカにはジミ・ヘンがいたということなのだ(そんな登場人物も出てくる)。そういうサイケな演出は得意だった。
そういうポップ・カルチャーの延長線上にこの映画はあるのだ。
日本のアニメはストーリーはともかく表現はワンパターンでこういう(60年代のポップアートの流れか?)アメリカンポップな映像は新鮮だ。音楽もかなりいい。ポップなアメリカ文化の系譜のアメコミ・アニメという感じがする。ただストーリーはよくわからんし、眠くなる。それと『八犬伝』方式(いいところで終わる)はずるいと思う。また見なくちゃならない。
日本のアニメは写実的なんだが芸術的であるよりは職人的な感じ。浮世絵をいつまでも抜けきれないジャパン・アニメーション(それが世界的ブームになったがそこで止まっている)という感じがする。そいうのは次々に更新されていく(繊細さが売りだがそのうちに韓国や中国に追いつかれるだろう)が、こういう芸術的な映像は古びないというかその時代的な文化に影響されている。音楽もそうだし。特に日本のワンパターンなアニメに慣れている眼には新鮮だった。
ただ三部作ということで、前作を見てないとストーリー的には辛いかも。スパイダーマンが何人もいる(ウルトラマンだって何人もいると思えばいい)し、その歴史性(TVシリーズや各国で作られたスパイダーマンがあったとか、そのスパイダーマンの歴史)も知らなかった。町山智浩さんの解説が詳しい。
特に音楽の素晴らしさは特筆する。
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