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チェスター、運河、カモ

その昔、
二度目の渡英で
お世話になったお宅があったのが
チェスターという都市の中心部。

このチェスターというのは
チェシャー州というとこの州都で

チェシャー州というのは
『不思議の国のアリス』に出てくる
笑いながら消えるチェシャ猫の、チェシャ。

で、その州都のチェスターですが
英語で書くとchester、
これはラテン語の「野営地」とか
「城」を意味する単語由来なんですね。

大昔にローマ人が築いた都市で、
近くのマンチェスターよりも全然古い。

ちょっと行くとウェールズ、
ものすごい北ってわけでもないけど
ロンドンから電車で三時間くらい、

二階建てのアーケード街があって
有名な時計塔もあったりで
いっつも観光客があふれててにぎやか。

このチェスターには運河が流れてて、
ちょっとお店の角まがって裏に出ると
あら運河とそのわきの歩道なのね
柵もなくって用水路状態ね
って感じで普通に自然に運河があります。

みんな観光客はお城のほうとか
買い物する地元民は表のバス通りとか
そっちにたくさんいるんですけど
私はよくこの運河のほうに出て
カモの一家と同じスピードで歩いて
週末の散歩にしておりました。

運河ってね
静かでおだやかなんですよ。
日本と違って水の流れも平坦で
たまーにカモとかナローボートが通る、
のんびりスローライフどころの騒ぎじゃない、
鴨長明の世界かって感じです。

わきの歩道も
チェスターの場合は人口密度低くって
ひらけた哲学の小道みたいで、
瞑想が全くできない私が
空っぽになるのにぴったりでした。

決定的に完璧なのは
無音である
という点でしょうか。
日本の街は音の洪水ですからね。

帰国して
戸建てを探す必要がでてきたとき、
運河沿いにめっちゃ住みたくて
実際いくつか内見もしたんですけど
大黒柱にああだこうだ反対されて
流れてしまったのは実に残念なことでした。

あの週末の静かな水面をいくカモ、

あれが忘れられなくて
一時期台所に
小川のカモファミリーの版画
をぶら下げてました。

さいご私は
鴨のオフィーリアになって逝きたいですね。


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