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扉を開き、道なき道を進めるか


最近久しぶりにBABYMETALを聴いています。体調や市況により聴く音楽のジャンルに相当の波があり、(BABYMETAL、AKB、エルレ、エメ、BJC、ポーターロビンソン、野宮真貴などもはやカオス。)かなりぶれるタイプなので結構な雑食で、クロスオーバーしているので、メタルとかハウスなどシングルジャンルが好きな方には叱咤されそうですが、お手柔らかにしてください。


ウエンブリーとの再会

BABYMETALの話になる経緯ですが、デザインをしていると時たま、このコーディネート、例えばこのスニーカーには、このパンツシャツしかどう考えても合わないよね?って、事が間々あります。この場合MDとしてはコーディネート性が低くなり、クロスセルのリコメンデーションが難しい為、止めるか、あるいは見せ筋として、極小までSKUを絞って展開するかの選択になります。唯一無二のデザイン性だからこそ掛け算の相手を極端に選んでしまう。だからこそ美しい孤高の存在だったりします。

そんな事を考えていた先日、YOUTUBEにてBABYMETALのウエンブリー公演が配信されました。(すでに終了)DVDは持っていますが、ついつい見てしまい、なまら没入すると同時に「これマーケティングだと悪手じゃない?」と思った事がこのテキストを書こう思った経緯です。(下記はトレイラーです。)


YUIMETALが脱退した経緯は当然知りませんし情報など持ちあわせていません。ゆえに真相ではなく、現象でみた場合、あるいは数値的な統計から導き出される法則を使用したりして、現在までの流れを分解して考察したいと思います。細かい数値検証はデータベース(THE ONEのチャーンやチケット販売トラクション強度)などを持ち得てないので、その意味では大流を掴みの類推なのでポエム要素ありです。実際のところの運営の真意は違う所にあるでしょう。その点はゆるく読んでくだされば嬉しいです。

マーケティング視点でBABYMETALを考察する

マーケティングにはダブルジョパディの法則があります。様々な検証結果出ている優位性がある法則で、特定のカテゴリーでマーケットシェアの比率が上がるほど、一定期間後の顧客離反率が下がる(逆にいうとロイヤルが強化される)という統計的な結果が出ています。ただ観測すると、ある程度の条件があり、マーケットに複数のコンペティターがいて、かつ差別化による競争がある状態が前提です。各社とも全力でマーケットシェア率(エボークドポケットの引き当て回数)を上げるべく熾烈な戦いが繰り広げられています。この法則を単純に当てはめると、グループとしてのBABYMETALがシェアを増すほどファンの離反率は減少しロイヤルは強化されブランドビジネスとしての価値が高まります。当初は、アイドル的な要素がまだメタルよりも強かったですしファンもその方向性の延長線上で捉えていたと思います。そして補完強化としてBABYMETALは、儀式的な要素を多用し、権威的な宗教性教祖、BABYMETALを頂点としたビラミッド式の構造を引く事でファンの離反率を低くし、モデルチェンジやアレンジさえも当然の恵みとして与えられる精神構造を作り上げていく事を理想としていたと思われます。ある意味最強のビジネスモデルですね。この観点からはある意味素晴らしいです。そしてそしてこれをグループ属性の言語化できない資産として作りたいと考えていたと思います。


3人共にリプレイスが不可能な ONE AND ONLYすぎた

BABYMETALの3人の魅力や成し遂げた事、軌跡はたくさんのメイトの方がすでに無数に言及されているので割愛しますが、初期パフォーマンスはアイドルよりですが、基本的なブランドポジションMAPでは、独自性が非常に強いポジションで差別化は明確で、普通なら、やり過ぎて微妙なポジションになってしまうクラスを選択しています。例えるなら、おにぎりと牛乳の組み合わせが最高、間違いないとプロモーションして莫大な売り上げを作るぐらいあり得ない組み合わせです。しかし彼女たちは、そのポジションでファンを説得させました。あえて言いますが、これは3人がなし得ました。プレイヤーのパフォーマンスしかファンは理解しないからです。(神バンドも超弩級パフォーマンスですが、絶対必要条件ではないです。)

運営もここまで成功するとは想像していなかったでしょうし、リーマン予想の解決の答えを、偶然に3人が発見した(なし得た)様なものです。これにより彼女たちが語っているように、競争が熾烈なメタルでもなくアイドルでもなくBABYMETAL領域にエンターテイメントビジネスレイヤーが移行します。意味のイノベーションであり、アイドルやメタルの延長戦上の解釈を超えたところに意味を織り直したことに価値があります。

競争相手は皆無になり、このアイドル×メタルマーケットを独占的に支配し、みずからマーケットを作り上げます。(基本的に、お財布は新しく作れない理論があるので、マーケット創造は半端ないです。モバイルとて固定電話という既存のマーケットの財布を奪っただけです。)この時に先ほどのダブルジョパディの法則は前提が変わる事により、美しく崩れます。独占されたマーケットでは宗教的な祝詞(パフォーマンスと存在)は最大化され、教祖様どこまでもフォローします!的な状態です。おそらく2014〜2017年頃は最盛期です。無敵な3人。しかし、その前提が崩れます。

教祖様が岩度にお隠れになった!

3人だけが作り上げる事が出来る再現性の不可能なグループ、BABYMETAL。その1人のYUIMETALが脱退。当時を振り返る事はしませんが、とんでもないインパクトでしたよね。昨日まで信じていたYMYと信仰のある部分がいきなり消えてしまったわけです。この状態でマーケットに何が起こるかというと、主体=教祖が唱える変更は無条件に受け入れるが、教祖がいないと何も引き受けないという相転移が起こります。つまりBABYMETALの名前をしているがBABYMETALではないグループとして認知されます。
ここで先ほどのダブルジョパディの法則に当てはめると、シェア率が高いのならロイヤルも高く、顧客の離反率も低くなるはずですが、すでに軸ずらしでマーケット移行をしている為、法則の前提条件が崩れ、ブランドプリファレンスは180度の反転し、顧客離反率は大幅に上がります。現実的には残りの2人も稀有な存在であり、その姿勢で今でもYUIMETALを守っていることが(ここはぼくの理想的な妄想込みです。)顧客の離反を引き止め、運営の悪手などもありつつも、実感として想定30%前後の顧客離反率(ファンのうち30%が離れた)でむしろ抑えられたと考察します。

運営のとった手段は最善ではないが次善ではある

30%って相当やばい数字です。普通のビジネスモデルなら赤信号。おそらく運営側も相当に焦ったでしょう。通常の競合ひしめくアイドルグループマーケットで考えると、グループ自体と楽曲の存在と継続的な活動があれば、短期で若干の離反現象(ダブルジョパディでは一般的にトップシェアだと3〜5%の離脱率が観測されています。)で済むと想定したと思います。しかし、グループにあると思われていた非言語の資産が、実は3人の個人に依存していたという事実です。それほどの稀有で特別な3人。アイドル教祖的コミュニティがここまで強化されるとは。現にSNSでは現在でも頻繁にYUIMETALの事が言及されています。(特にYOUTUBEのウエンブリー配信以降)

この状態で3人目を正規に入れるという戦術は完全な悪手になります。教祖と化したYUIMETALの代わりなど、信仰対象にはなり得ないのです。

そうなると、ブランドポジションの再度の軸ずらしを行い差別化できない独自性のあるマーケットに移行するしかありません。アイドル×メタルのマーケットを自ら降りたBABYMETALは、新たな異なるレイヤーを探す必要があります。そして、その答えがダークサイドでありアヴェンジャーズです。3人の教祖のうち1名が抜けた以上、現実の2人+架空の1人で本来の宗教的な要素を維持しながら、ポジションの中立性を失うリスクはありますが、主戦場の海外を考慮し、メタルよりの重めのサウンドに寄せて、演出もより儀式的な要素(意図としたかは不明ですが異形神の衣装のフォルムや神秘性の象徴たる冠なども儀式的です。)でブランドを強化していると思います。重要な事は独自性のあるレイヤーの確立です。古代ローマ帝国の様に、異なる価値観も宗教に取り込み拡大を図る。戦略としては、これしかないと思います。YUIMETALがいない以上、打ち手としては次善ではないでしょうか。批判は今も根強く残りますが、この方向性の中で最盛期の勢いを取り戻す方法を現在も検討していると思います。むしろ相当健闘していると言えると思います。


それでも幻想を追う私たち

しかしながら、離反しなかったファンも現在の体制を肯定的に受け止めながらも、どこかしっくりしない、という感覚があると思います。僕自身も最近の楽曲で好きなものがありますが、気がつくと本当に嘘みたいな話ですが、2014~2107年頃にリバースしています。初代BABYMETALなる、現在とは別のグループ識別をする言動もネットではよく見かけます。
ブランディング戦略では、言語化できない一貫した虚構のストーリーを共有してもらう事が、時間の経過と共に教義(ディシプリン)となり、ファンのロイヤルを高めます。この意味において、歴代的な継承がある好意的な初代という称号ではなく、区分する意味合いが強い初代という現在のワードの流布状態は、運営側のブランディングとしては問題であり、ユーザーベネフィットを真に満たしていない状態が常に続いている事が想定されます。そしてこの状態で、冒頭のYOUTUBEでのウエンブリーの配信です。。。

意図とせず初代BABYMETALを強化してしまった


初期からファンをされている方からすれば、ウエンブリーはソニスフィアと並びBABYMETALの全盛期を彩る非常に重要なライブだったと思います。そのために、このYOUTUBEによる動画配信は、現在のポジションと過去の栄光の分断をより深め、現在進行形のBABYMETALの未来を見えにくくしてしまったと思います。言い換えると、重複した二つの異なった価値をブランディングで発信し惑わせてしまった。とも言えます。

強化したのは過去の記憶であり、未来への期待値ではありません。SNSをはじめとする個人発信をリサーチすると、裏付けとなるインサイトが見えて来ます。運営はシンプルに非常事態宣言の中でファンを元気付けよう、BABYMETALを忘れないで欲しいという意図だと思います。しかし結果は過去にファンを引き戻しピン留をしてしまったのです。

次の打ち手はあるのか

人はベストな方法や手段があると認識していても、様々な理由により実行できない事が多々あります。常に最適化は企業であれブランドあれ、個人であれ、困難な問題でしょう。歴史的な伝承を紐解くと、ある教祖は再降臨することで永遠の強化を果たしました。またある宗教では正当な伝道者(受け継ぐ後継者)がその言葉を伝え、教えが現在まで継承されました。

しかし残された時間は多くはないでしょう。人は忘却の生き物です。必然的に情報は劣化し、情報が含まれたンテンツでは、ユーザーの離反のコントロールなど出来た事例はありません。

ただし唯一の例外があります。それは人の心に誠実に触れる事。不確定で曖昧なこの行為こそが強固な虚構を作り出し、意識的にコントロールできる範疇を超越します。始まりから彼女たちは真摯にそれをしています。そう、答えは出ています。

あとは神のみぞ知る。Only The FOX GOD Knows.

さあ、待ちましょう






IDZ、4、SYNCOPATION、Road of Resistance、CMIYC 

#BABYMETAL #YUIMETAL #YMY #マーケティング #ブランディング  

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