#ネタバレ 映画「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」
「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」
2017年作品
「組織」と「個人」と
2020/3/16 9:24 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
新緑を思わせる緑のタクシーに、
ビタミンカラーの黄色い制服がさわやかです。
主人公のあの色が無ければ、ずいぶんイメージが変わっていたはず。
映画「パラサイト 半地下の家族」や、映画「JSA」でも注目を集めた、ソン・ガンホさんの魅力を堪能できる佳作でした。
前半、少し喜劇っぽい味付けもありましたが、最後はジーンとさせてくれます。
★★★★☆
追記 ( 「組織」と「個人」と )
2020/3/16 9:38 by さくらんぼ
韓国には、北朝鮮で暮らす親戚縁者がいる人も珍しくないようです。
それでなくとも同一民族。
ですから、北朝鮮とも個人的には仲良くしたいと思っているはず。
ても、組織(国・体制・仕事)が違うと、戦争さえしなければならなくなる。
個人よりも、組織の論理を優先しなければならなくなる。
だからこそ、必要のない時は、組織から個人を守ろうとする。
そこに、韓国映画でおなじみの「葛藤」がありました。
これは、そんなお話だと思います。
追記Ⅱ ( 「組織」と「個人」と )
2020/3/16 9:55 by さくらんぼ
娘を育てるのに頭がいっぱいの、貧しい主人公・ソウルのタクシー運転手マンソプ(ソン・ガンホさん)が、お金のために、立ち入り禁止区域へドイツ人記者を乗せます。
父子家庭であり、娘のためにも危険は冒せないのに、娘のためにも危険を冒さなければならなくなり、そして、今度は乗客のために(仕事のために)危険を、さらには正義のために危険を冒さなければならなくなっていく悲喜劇。
ドイツ人記者も、好き好んでそこへ行きたいわけではありません。カメラマンの使命、人道的見地で、命をかけて入っていくのです。
そして、映画のラスト近く、最後の検問でマンソプたちが指名手配犯だと気づいた軍の上官も、だまって彼らを見送りました。
上官も、仕事だから住民を虐殺してるわけで、個人としてはしたくない。この悲劇を世界に報道してもらい、早く終わりにしたいと思っていたのでしょう。
追記Ⅲ ( 「組織」と「個人」と )
2020/3/16 10:08 by さくらんぼ
老いたドイツ人記者が、友人であるタクシー運転手に逢いたいと、ドイツの記者会見の席で言いました。
しかし、その新聞を読んだタクシー運転手マンソプは、ありがたいと思いながらも、娘と二人の静かな生活を守るためなのでしょう。名乗り出るつもりは無さそうでした。
やっと、公人から私人(個人)に戻れたのですから。
追記Ⅳ ( 「組織」と「個人」と )
2020/3/16 13:45 by さくらんぼ
>やっと、公人から私人(個人)に戻れたのですから。(追記Ⅲより)
この苦悩を描いた作品には、
映画「女子ーズ」もありました。
追記Ⅴ ( 「組織」と「個人」と )
2020/3/16 14:00 by さくらんぼ
私は人見知り・引っ込み思案です。
さらに、「食卓では話すな」と、食卓で話すのが大好きな父から厳しく言われて育ったせいか、酒席では手酌で酒を飲み、黙々と料理を食べ、話しかけられたら返事をする程度になりました。お茶会でも同じかな。
そんな私でも、趣味のサークルなどで、誰かに話しかける必要があれば、「心のスイッチを仕事モード」にすれば、比較的容易に話しかけられることに気づきました。逆に言えば「仕事モード」でなければ声を発しないのです。
これは若いころから、仕事で血の涙(大げさ)を流しながら、電話、窓口、外回りなどで、見知らぬ人と、毎日、わりと込み入った話をし、時に嫌われるのを承知で追いかけ、時に怒鳴られた経験が、良くも悪くも私を染めてくれたからだと思います(私は相当逃げてましたが)。
追記Ⅵ ( タクシーの運転手さん )
2020/3/16 17:37 by さくらんぼ
『 日本は職業に貴賎の無い国だ。どんな職業に就いていても、それぞれの分野で一流の仕事をしていれば、世間様は一目置いてくれる。しかし韓国はそうではないらしい。極端に言えば大臣や高級官僚などにならなければ、人生に成功したとは評価されないらしいのだ。
…中略…
「おまえは、何者なのだ」これが映画のモチーフの様に思える。では、それを使って何を描いていたのか。
…中略…
そして、それは一生懸命働いている無名の人たちへの再評価であるし、朝鮮戦争の戦死者たちへの鎮魂である。また最後には、同じ民族同士なぜ殺しあわなければならないのかという所にまで行き着くのだろう。 』
( 映画「ブラザーフッド」 2004/6/27 8:20 by さくらんぼ より抜粋 )
「職業に貴賤は無い国」であるはずの日本でも、タクシーの運転手さんに、ときどき暴言を吐く有名人もいたようです。
ならば、むかしの韓国の、タクシー運転手さんの社会的地位は、いか程ほどのものだったのでしょうか。
それを想像すると、この映画の意味が、いっそう重く感じられるように思います。
追記Ⅶ 2022.12.13 ( お借りした画像は )
キーワード「緑と黄」でご縁がありました。映画のポスターとは雰囲気が違いますが、色の組み合わせは似合いますね。良い景色です。少し上下しました。ありがとうございました。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)
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