#ネタバレ 映画 「舞妓はレディ」
「舞妓はレディ」
夢の在るところに人は集まる
2014-09-20 14:53byさくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
この作品は、映画「世界最速のインディアン 」みたいに、夢の在るところは、人が喜ぶパワースポットだということを、そして映画「舟を編む」みたいに、従業員を大切に育てていくことの大切さを語っていると思います。
京都の花街には、舞妓になることを夢見る少女たちがやってきますし、舞妓や芸妓と遊ぶことを夢見る男たちも集まってきます。
主人公の春子を見て「賭けても良い、一人前の舞妓にして見せる」と豪語する言語学者のセンセも、旦那も、また夢を見ています。
そんな花柳界(夢)を、その格式を、京都はみんなして長年にわたり守ってきました。
そして映画は、花柳界の先には、京都の老舗企業の姿を見ています。
昨今、ブラック企業という言葉が生まれましたが、京都には1,000年続く老舗も少なくないらしい。
企業の平均寿命は何年でしょうか。ブラック企業だと、さらに短いらしいですが。
そんな中、1,000年というのは言葉を失うぐらい凄いことです。
比較するのも失礼ですが、京都の老舗と、ブラック企業とは何が違うのでしょう。
1,000年企業は、お隣、近江商人アイデンティティ「三方よし」の、「買い手よし、売り手よし、世間よし」に加え、京都の「夢」を大切にする手腕もあるから出来たのでしょう。
でも、ブラック企業には「売り手よし」があるだけですね。
この映画「舞妓はレディ」は、ミュージカル(夢)だと知らずに観る方が良いでしょう。映画の前半、主人公の春子が突然、夢のごとく歌いだすシーンが秀逸です。ミュージカルだと知っていても鳥肌ものでした。
彼女は歌が上手い。
上手いといってもプロ歌手の重量感ある、ともすれば食傷気味のうまさではなく、良い意味で、女優さんが片手間に歌う、おつまみ的ライトな上手さです。その微妙な「青りんご的テイスト」が旨い。それは「アナ雪」の松さんの歌と同じです。
で、この映画の総合完成度はと言うと、ん…なのです。
ミュージカル・シーンを観ていて、(失礼ながら)気恥ずかしくなる演出がありましたから。
伝統の都、京都で「着物を着た男女が、西洋踊りをしながら、歌うのは」なにかミスマッチです。誰かが、この感性が監督の個性だと言っていましたが…高倉健さんが任侠映画の中でにこやかに歌い踊ったとしたら…ん~見たくない。それと同じで、遺憾に思います。
また、ラストにワンカット出てくる春子の舞妓姿の写真も良くありません。顔が無表情です。
もしかしたら、舞妓さんの踊りは無表情が基本かもしれませんが、あそこは、ハッピーエンドの記号としてのスマイルが必要ではないでしょうか。それなのに無表情では、さっきまでの感動が、水をぶっかけられたようにクールダウンしてしまいました。いっそ、無い方が良い100倍良いです。
それから、春子は、劇中で秘密話「誰かに似た子」として演出されていましたが、この逸話も、感動中途半端でした。秘密という点では映画「ニライカナイからの手紙」にも似ている感動話。あちらは大成功でした。もっと大切に演出してほしいです。
ところで、その誰かに似ている話、 物語では言及していませんが、私は原節子さんを思い出してしかたがありませんでした。春子は似ているのです。これが演出を疑似体験する監督の計算だとしたら、それは、とても上出来でしたが。
そして女優・上白石萌音さんは良かった。宝石のような逸材です。今後が楽しみです。
★★★(ミュージカルが…のため、ただし、上白石萌音さんが歌を歌う映画は、また見たいです。)
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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