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#ネタバレ 映画「砂の器」

「砂の器」
1974年作品
バベルの塔
2017/6/24 13:53 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

株ではよく「ローリスクローリターン」とか「ハイリスクハイリターン」などと言いますが、皆は「ローリスクハイリターン」な投資先を探しているのですね。

「そんなものはない!」というのが世の常識ですが、もしリーマンショックの頃に全力で株を買っていたなら今ごろホクホクでしょう。ただし、あの暴風雨の中で大勝負が出来るオタクな人は少ないでしょうが。

ところで、戦争で大空襲があると役所も燃えてしまいます。

とうぜん戸籍も。

相続などで出生までさかのぼって除籍謄本などを取ろうとすると、途中が「戦争で焼失」みたいな事になっている場合があります。

映画「砂の器」の主人公は、その「戦争で焼失」から「戸籍再生」をするとき「ローリスクハイリターン」を目指したのですね。映画によると、戦後の大混乱の中、どうも本人の申し出だけで作ったようですから。

それにしても、いきなり殺らなくても…いきなりじゃなくてもいけませんが、不謹慎ですがそれは「ハイリスクハイリターン」ですよ。

偽りの戸籍を作ったことは他人には簡単に分かりませんし、たとえ分かったにせよ、相手は昔の恩人(みかた)ですから、悪いようにはしないと思うのです。これが「ローリスクハイリターン」。しかし、そんなことを考えるゆとりも無いほどの精神状態だったのでしょう。その心が、物を入れられない「砂の器」だったのかもしれませんね。

そして、出世を目指すということは、つくづく「バベルの塔」を作るようなものなのだ、と思いました。

★★★★★

追記 ( タバコの煙 ) 
2017/6/24 13:57 by さくらんぼ

私が映画「砂の器」を(たぶんリバイバルで)観た劇場は、下町のいわゆる「二番館」でした。映画「鬼畜」と二本立てで。

朝一番で入った劇場はガラ空きでしたが、タバコの煙がモウモウとしていました。

たぶん、昨夜からのオールナイト上映後、換気を十分していなかったのだと思います。

今では想像もつきませんが、映画館の座席には必ず灰皿がついていて、タバコの煙を吐きながら映画を観るのが当たり前の時代でしたから。

当時は「タバコは大人の男のたしなみ」みたいな世の中でした。「けむたい」と言う方が非常識あつかいされかねない。

だから、役所の中も、職員の机には役所の備品の灰皿が置いてあり、空気がかすむほど、事務室も、もうもうと曇っており、稀にですが(ブランデーのように煙が濃厚な)パイプをふかす人もいました。上司もお客様も、何も言いません。

そんな時代、当時若かった私も、煙をさして気にせず二本の映画を観ました。冬場だったと思います。空気が乾燥して、喉がくっつくようでした。

しかし、油断したせいか、その夜から喉を痛めてしまいました。

風邪をひいて熱まで出ました。

乾燥はいけません。

それ以来、空気の質に神経質になり、映画館では、喉を湿らすために飲み物を手放さないようになりました。

だから、この映画の想い出は、正直なところ、内容よりも「タバコの煙」なのです。そして、風邪を引いたこと。

追記Ⅱ ( 「レ・ミゼラブル」 ) 
2017/7/3 22:21 by さくらんぼ

映画「砂の器」は「レ・ミゼラブル」へのオマージュ、などと言うつもりは今の段階ではありません。

ただ映画「砂の器」の主人公は、過去に事情はあるにせよ、一人勝ちの出世が目的でした。そのため恩人すら切り捨てた。

対する「レ・ミゼラブル」の主人公も、過去には事情がありましたが、だからこそ、そんな底辺の人を救うための手段として出世しようとした。彼は自らの身を危険にさらしても助け続けたのです。

二人は出世の目的が違っていた。その志が彼らの明暗も分けました。

二本の映画はコインの裏表。対にしてみるのも一興かもしれません。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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