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#ネタバレ 映画「ブラザーフッド」

「ブラザーフッド」
ブラザーフッド : ポスター画像 - 映画.com (eiga.com)
2004年作品
無名戦士
2004/6/27 8:20 by 未登録ユーザ さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

日本は職業に貴賎の無い国だ。どんな職業に就いていても、それぞれの分野で一流の仕事をしていれば、世間様は一目置いてくれる。しかし、韓国はそうではないらしい。極端に言えば、大臣や高級官僚などにならなければ、人生に成功したとは評価されないらしいのだ。

この事を知ると、学業に優れた弟を「一家の希望の星」として可愛がる兄の行動が理解できる気がする。

また反対に、弟は気づいていないようだが、靴磨きをして弟を支えている無学な兄のプライドはひそかに傷ついていたはずだ。さらに、尊敬されるべき目上の存在である事も哀しみに追い討ちをかける。

映画の前半、兄が靴磨きの弟子から国語の質問をされて答えられず、「こんな事も知らないのか」と馬鹿にされるシーンがあった。弟子は師匠の神経を逆なでした事に気づかない。この伏線が後で意味を持つ。

弟は学業で立身出世を目指す。ならば兄には何があるのか。

二人が軍隊に入って同じ部隊に配属される。兄は勲章を目指した。それは弟を除隊させるために違いないが、同時に兄としてのプライドの爆発でもあったはずだ。学業で負けても(体育会系な)兵士としてまで弟に負けるわけにはいかないのである。弟にいくら非難されようとも。

大学生、靴磨きの仕事、靴磨きの弟子、弟の勲章である万年筆(2回ほど身元確認の材料にもなる)、兄の軍事勲章、軍事エリアに入るための身分証明書(3種類も読み上げた)、共産党員の名簿、などのエピソードが次々と「おまえは、何者なのだ」と問いかける。

「おまえは、何者なのだ」これが映画のモチーフの様に思える。では、それを使って何を描いていたのか。

映画のラストで「学校に行くよ!」と、小さな子供らと話す弟。映画は最後まで学校にこだわっている。観客はその陰に無学な兄の「命がけの貢献」があったことを忘れない。

そして、それは一生懸命働いている無名の人たちへの再評価であるし、朝鮮戦争の戦死者たちへの鎮魂である。また最後には、同じ民族同士なぜ殺しあわなければならないのかという所にまで行き着くのだろう。

アメリカ映画並みのアクションにプラスして、韓国映画独特の情念が渦を巻く佳作である。この夏の一本として記憶に残るだろう。もちろん反戦映画としても。

追記 ( 映画「日本のいちばん長い日」 ) 
2017/8/3 16:51 by さくらんぼ

>この事を知ると、学業に優れた弟を「一家の希望の星」として可愛がる兄の行動が理解できる気がする。

映画「日本のいちばん長い日」の追記Ⅸを書いた後、ふと映画「ブラザーフッド」を思いだしました。

もちろん、映画「ブラザーフッド」のストーリーは、映画「日本のいちばん長い日」とはまったく違います。二つはまったく違った作品です。

しかし、そこに描かれている、「優秀な弟と、その弟を陰で支えて亡くなる兄」の兄弟愛は、映画「日本のいちばん長い日」の中の、隠れたエッセンスをデフォルメした世界のように感じたのです。それは普遍的なものでもあります。

追記Ⅱ ( 大学教育 ) 
2017/8/6 14:58 by さくらんぼ

>この事を知ると、学業に優れた弟を「一家の希望の星」として可愛がる兄の行動が理解できる気がする。

今の日本では、普通の家庭なら、「すべての子どもに平等に大学教育を受けさせようとする」でしょう。少子化もありますしね。

でも、数十年前までは、「大学教育を受けられるのは一家に一人」みたいな状況も見受けられたのです。貧乏人の子だくさんだったからです。

そして、大卒者は無学な家族の相談役になりました。そうすれば他家からばかにされずに済んだのです。大卒者が運よく社長や大臣などの有名人や権力者になれた場合は、家族だけでなく、一族が恩恵を受けることも出来ました。

投資で言えば、分散投資ではなく、一極集中型ですね。

映画「ブラザーフッド」では、そんな「お宝株」を取り上げられそうになったのですから、一家存亡の危機として、兄弟たちは慌てたわけです。

追記Ⅲ 2022.12.15 ( お借りした画像は )

キーワード「希望」でご縁がありました。落ち着いた色合いと、ぼけ具合が良いですね。そのままでも良かったですが、少し上下してみました。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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