見出し画像

#ネタバレ 映画「コマンドー」

「コマンドー」
1985年作品
人生設計
2016/12/1 8:13 by さくらんぼ (修正あり)


( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

米軍の特殊部隊・コマンドーを退役したジョン(シュワちゃん)は、小さな娘と二人、山奥で幸せに暮らしていました。退役したと言ってもジョンはまだ若く、丸太んぼうを一人で担げるほどの力持ち。

そこへ突然ヘリコプターがやってきたのです。何ごとかと思っていると、元上官が降りてきて「力を貸してほしい」と言うのです。確かそんな記憶。でも、今あらためてネットであらすじを読んだら、協力依頼はありませんでした。不思議です。

私の記憶違いは良くあること。それを承知で、今日も私は自分の記憶に基づいてお話しします。

今はリタイアしている昔の部下や同僚に、人手が足りなくなったりして仕事を依頼する、そんな事もたまにはあることです。

でも在職中の者が「単純に人手が欲しい」だけなのに対し、リタイアした者の心中は「ゆっくりと酒でも飲みながらにしか語れないほど複雑」です。依頼する側が、労働の対価として賃金を払うから何も問題ないはずだと思っているとしたら、それはたぶん甘いと言うもの。

昔のよしみで、そんな面倒を全部すっ飛ばして「OK」と言ってほしいのでしょうが、全部すっ飛ばすと、命の恩人か、よほど退屈しているか、それともお金に困ってでもいない限り「NO」になることがあります。

ある意味、これは異性を口説くのと同じなのでしょう。昔の仲良しに何年ぶりかで電話して、いきなり「結婚してください」と言っても相手にされないのと同じ。

在職中の身にはそれが理解できない、というか普段、「企業利益の最大化」しか考えていないので、リタイアした人が、晩年の最大テーマである「人生とはなんだ」の中に生きていることにはついて、想像すらできないのでしょう。

この映画「コマンドー」、結局シュワちゃんを再出撃させたのは、第三者に愛娘を誘拐されて起動した「許せない!! 奴らは、ただでは済まさぬ!」という怒りのパワーでした。「己の人生設計に邪魔をしてきた者への怒り」です。

この映画、BGMが少々うるさく邪魔してきますが、シュワちゃんが全身に装備し、手に取った武器のほとんどをバトルで使用してくれます。見掛け倒しでないサービス精神が心地よい一本。

★★★★★

追記 ( 人生設計 ) 
2021/8/9 8:01 by さくらんぼ

映画「コマンドー」の主題というか、語っていることは、表裏一体というか、想定外はいつでも起こるというか、結果が裏目に出る事もあるというか、そのような事だと思います。

映画の冒頭、主人公・ジョン・メイトリックス(アーノルド・シュワルツェネッガーさん)の元へ、ヘリでやってきた元上官。

娘は父が仕事に連れていかれると怯えています。

観客も仕事の依頼かと思っているはず。

しかし、実際は「昔の仕事のせいで、おまえは命を狙われているから、俺たちが守ってやる」と兵士二人を置いて帰って行きました。

これは主題のワンピースでしょう。

そして、メイトリックスが最初に画面に登場した時も、右手にはチェーンソーを、左肩には切ったばかりの太い樹を担いでいました。表裏一体ですね。

さらに、連れていかれたのは、父ではなく娘の方でした。

それから、敵がメイトリックスのクルマのエンジンを壊したら、ノンブレーキで山を転がして追ってきたのでした。

追記Ⅱ ( ハードゲイ ) 
2021/8/11 17:38 by さくらんぼ

昔メイトリックスの部下だった(敵になる)ベネットは、銀色の鎖が印象的な衣装を着ています。そしてメイトリックスはボディビルダーのようなムキムキな肉体をしています。

初めて観た時から微かに心ざわつくものがありましたが、やっと言語化できそうです。

この映画「コマンドー」の深層というか裏打ちしているものはハードゲイかもしれません。

それも、ベネットからメイトリックスへの片想いです。

追記Ⅲ ( 映画「太陽がいっぱい」 ) 
2021/8/11 17:44 by さくらんぼ

LGBTの映画なら、現時点では良く分かりませんが、映画「太陽がいっぱい」へのオマージュの可能性はないでしょうか。

映画「コマンドー」で主人公たちの船になる、青い海に浮かぶ白い飛行艇が、映画「太陽がいっぱい」のヨットに見えて仕方ないのです。

追記Ⅳ ( 男子の本懐 ) 
2021/8/12 14:04 by さくらんぼ

>映画「コマンドー」の主題というか、語っていることは、表裏一体というか、想定外はいつでも起こるというか、結果が裏目に出る事もあるというか、そのような事だと思います。

>そして、メイトリックスが最初に画面に登場した時も、右手にはチェーンソーを、左肩には切ったばかりの太い樹を担いでいました。表裏一体ですね。(追記より)

映画冒頭の、メイトリックスが左肩に担いだ太い幹は、「男根」の記号でもあるのでしょう。

そして、映画のラスト、メイトリックスに片想いしていたベネットには、(メイトリックスによって)丸太のように太いパイプが刺され、そのパイプからは高圧ガスが噴き出していたのです。このパイプも(ダメ押しの)男根の記号だとすると、高圧ガスはエロイ描写になります。

ベネットが実はメイトリックスに恋していたのだとしたら、これも愛憎の表裏一体ですね。

追記Ⅴ ( 恋とカネと身分と ) 
2021/8/12 14:14 by さくらんぼ

その他大勢の一人だったベネットは、恋しいメイトリックスを狙うのと同時に、バル・ベルデ共和国の重要幹部になり、カネと身分も手に入れようとしていたのでしょう。

この辺りは、分解再構成された、映画「太陽がいっぱい」の匂いがします。

追記Ⅵ ( デートの前は落ちつかない、もの )
2021/8/13 9:51 by さくらんぼ

映画の冒頭、山中で隠居生活をしているメイトリックスのところに、危機が迫っているとの連絡が入り、ガードマン代わりの兵士二人が送り込まれます。

メイトリックスはその一人に、「ここは風下だから敵が来ればにおいで分かる」と言いました。においは性的な記号でしょう。しかも、男が男のにおいに敏感に反応するという点で、同性愛的な記号のように思います。

映画の後半、こんどは娘が捕らわれている島での話しです。

依頼人の部下が、娘をナイフで殺すのを楽しみにしているセリフが伺えました。そのセリフからは性的なにおいがします。

ここに敏感に反応したのはベネットです。ベネット自身には同性愛という性的指向があるからでしょう。部下を叱り、依頼人に「あんな奴ではメイトリックスには勝てない」と話します。そして敵であるはずのメイトリックスがどれほどスゴイかを自慢げに語るのです。

すると依頼人から「メイトリックスを一番恐れているのはお前だな」と言われます。依頼人にもベネットがメイトリックスに屈折した感情を持っていることが分かりました。

そして、しばらくの後、島で爆発音がとどろき、ベネットは微笑みながら「さすがメイトリックス、よく来たな」とつぶやくのです。

追記Ⅶ 2022.7.19 ( シンクロニシティか )

なぜ今、このタイミングで、映画「太陽がいっぱい」の、けだるく哀しい、ニーノ・ロータのトランペットがラジオから流れる。

追記Ⅷ 2022.7.19 ( お借りした画像は )

キーワード「ヨット」でご縁がありました。目に沁みるほど鮮やかな白と青ですね。無加工です。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


#映画感想文

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?