蒼空

二十代の若者が、歌壇の常識にとらわれず良いと思った歌について書いていきます。

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最近の記事

塔、自由に一首評 恋が世界を変える

今回も引き続き塔4月号から気になった短歌を抜き出します。 前回あつかった短歌が恋人たちに大きくズームインをした作品であったのに対し、この作品はあえて少しズームアウトすることによって恋人の尊さを強調することに成功している面白い例である。 普通、何かについて歌を読みたいとき、我々はその主体を中央に持ってきがちである。肖像画の中心にはもちろん人が描かれるわけだ。だがあえて主体から離れることによって主体自体の存在感を醸し出すことができる。提出歌では「僕ら」はキッパリと「遠景」と言

    • 塔、自由に一首評 美しきセックスの歌

      毎月の塔短歌会会誌のなかで気になった歌を自由に記録していきます。その月の紙面初出かどうかに限らずいいと思った歌を自由に載せていきます。今回は24年4月号からです。 対談の中で発表当時あまり評価されなかったという文脈で言及された歌だ。確かに露骨な性的描写かもしれない、しかしこの歌はそのような様子をとても軽くパステルカラーの色鉛筆で書いたように表現していると思う。 まずそのような優しい雰囲気がどこから来ているのか考えてみよう。パステルカラー感を醸し出しているのは「あわれてのひ

      • 晴れであること

        毎日が晴れているこの町では、雨が美しい。まるで乾いた皮をなめすように、ささくれた壁をペンキでなめらかにするように雨が世界を包んでいく。 若い頃、晴れであり続ける人生を生きることが幸せだと信じていた。アメリカ人の生き様はまさにそれを具現化しているようにも思う。あるいは少なくともみんなそれを真として生きているふうに感じる。 ー晴れだけが続けば世界は砂漠になるー。 晴れが続くこの場所に降る時折の雨の物語を気が向いた時に記していきたい。

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