日税連:登録政治資金監査人による政治資金監査のあり方に関する要望を公表
06年-07年頃に相次いだ国会議員事務所費問題を契機に導入された登録政治資金監査制度ですが、今般の政治とカネの問題から制度の実効性を疑問視する声が高まっています。私も登録政治資金監査人として制度の行く末には関心があります。
政治資金監査のあり方について日本税理士連合会が要望意見書を公開したので内容をみてみます。
政治資金規正法第 19 条の7の定める国会議員関係政治団体以外の政治資金パーティーを開催するといった団体についても監査の対象にするよう要望されています。望ましくは思われますが、どの程度実効性のある網掛けができるかは検討する必要があるでしょう。
政治資金監査における監査範囲及び監査方法等について
(1)は③はともかく、①と②は当然あるべき運用でしょう。
(2)の共同監査(単独監査の禁止)は財務諸表監査では大会社の監査に相当するものです(公認会計士法第24条の4)。これは一般的な政治資金団体の規模からすれば過剰に思われます。
いわゆる監査ローテーションといわれる制度に関する意見です。異なる監査人の目が入ることは一般的には望ましいといえます。
(1)は低廉報酬や高額報酬を防ぐために指針を設けるとされています。しかし、報酬規定を設けることは市場原理が働かないことを意味するため、かえって害悪である可能性が高いと思われます(歴史的には士業のこのような独占的な規定は廃止されてきた流れがあります)。一方で利害関係者の理解に資する情報として報酬額を公開するといった一定の指針は有益と考えられます。
(2)はWebサイトで公募したのちに選定するといったことが例示されていますが、これは意味のあるものではないように思われます。
(3)は登録政治資金監査人となることができる3資格(弁護士・公認会計士・税理士)が更新制ではないことを思えば、特段更新制を導入する必要は感じられません。そもそも、今般の政治とカネの問題は、政治資金監査人の適格性の問題ではありません。むしろ研修制度に罰則がなく形骸化している税理士制度に目をやるべきでしょう。
以上が日税連の要望書の骨子です。
そもそも現行の登録政治資金監査人は職業団体の自主規制もなく、レビューもない粗末な制度です。この制度がこれまで政治資金改革のポーズに使われてきたことを思うと、今回の要望も骨抜きにしたうえでガス抜きに採用される可能性があり懸念しています。
政治資金の監視強化の議論では、米国の連邦選挙委員会(FEC)に代表されるような権限のある外部監査機関を創設する議論も行われています。登録政治資金監査人制度に手を加えるよりも、外部監査機関創設の議論のほうが有意義であるように私には感じられます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?