アジアの未来、日本の未来の話

掲題、2/27に参加したfashion studies さすてなぶるファッション004の最後に、ジェネレーションZ世代の大学生の質問(サスティナブルの事例を話す時に欧米の事例しか出ないが今後のアジアではどのようなサスティナブルの取り組みが行われその中で日本の立ち位置、役割はどのようになるか)から考えが喚起されましたためいい機会でしたので思っていたことを言語化してみました。

以下、いくつか事例を交えながらで。


昨年末、とある韓国ストリートブランドのデザイナーと話すことがあり、彼が考えるアジアの未来についての意見が面白かったのでまずそちらから記載します。

これは日本以外の国が今後のファッションをどう思っているか、という意見として興味深かったです。

韓国自体がファッションに対して国の補助や後援に熱く、ソウルファッションウィークについてもアジア最大のファッションウィークにしようというくらい熱をもって取り組んでいます。
ファッションウィーク招待ブランドとしてVETEMENTSを誘致してたり。
そして、国策としてK-POPというエンターテイメントによるショウビズビジネスの輸出を行なっています。
極東アジアから、特にアジア西域に向けて音楽、PV、ダンス、ファッションによってスタイルを啓蒙(言ったらMTVの行ったことに近しいのかと)し、強烈なファッションにたいしての原体験を与えています。
その彼の口から聞いたのはベトナム、インドネシアなどでもK-POPスタイルのファッションは憧れの対象となっているとのこと。
そして、4Gなど情報インフラ網の整備とHUWEIやLGなど格安スマートフォンの普及によりK-POPは東南アジアの若者も魅了しており、そのファッションにたいしても強力な憧れの対象となっているそうです。

ただ、今の問題点として立ちはだかるのが東南アジアの所得問題でした。
国のGDPによる国家間所得差と価格差から、韓国ではアルバイトなどをして普通に買える=ファッションを楽しめる価格でも国によってはそもそも手の届かないものです。
それに対して、彼の視点では暗号通貨技術がそれらを解決するものという意見を持っていました。
暗号通貨による国際送金の手間や手数料などの障壁が薄くなるにつれ、インターネットを通じて現在経済発展を遂げた国との間で仕事の交流(クリエイターや技術者など情報をやり取りする仕事)が活発になり今後経済発展の伸び代がありうると。

そして、中国が経済発展を遂げ2nd tear city, 3rd tear cityの中産階級まで豊かになり、消費の先を求めた時にまず彼らが求めたのはファッションでした。
これは都市開発の際の投機の流れで、インフラ整備、工場など企業誘致、住む場所の整備、消費の場所として商業施設開発へと進み土地の価値を上げてから売却し差益を得ます。
そして、商業施設へのテナント招致の際に真っ先に囲うのが海外のブランドになります。
少し昔の日本の商業施設と一緒で、豊かになったばかりの消費者の消費意欲が最も集中する対象がファッションで、消費が活発になれば経済の還流がおこり、生産者や労働者にもお金が巡り、さらに消費が喚起され経済圏が成長してますます土地の価値が上がります。
いわゆるバブルですね。

これらと同じようなことが、シンギュラリティにより東南アジアの各国で起こる可能性があるとの見解を示していました。

もちろん、一元的なものの見方でありそれ以外の要素要因もおおいに関係するため確実な未来とは言えませんが世界に接続できるインフラがあり、自己発信ができる環境にあることから、可能性はゼロではないと僕は思っています。

そして、今までは文明を欧米が主導してきたため、情報の上流には欧米がいました。
裏を返せば、侵略と発展の歴史から欧米諸国の支配下にあった国が多く、欧米の文化はある程度各国で慣れ親しまれていたものではないかと。
これは逆を返すと、アジアの文化はまだ知られていないものが多く、情報発信する手段を得たことで目新しさからこれから広がっていく可能性が大いにあると思っています。
それだけ、アジアの国には文化としての土壌が豊かで、資源が埋もれていると思っています。

https://news.nicovideo.jp/watch/nw4773601

上記は例えばの一例です。
今後、このようなアジア文化の再発見が群発するのではないかと。

その上で、日本の可能性について話しします。
METIの掲げている国産業のあるべき姿(コンセプト)、としてconnected industriesと掲げています。


http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170320001/20170320001.html


ここにあるのは、異業種の連携と協業により社会問題を解決してけるよう、という内容です。
日本は、アメリカや中国のように莫大な資本と人的資源を用いて大きな経済圏を作っていくことは出来ません。
金融システムを開発したイギリスをはじめ、ヨーロッパ諸国のように物事の定数定量を定めルールメーカーとして世界中に立ち振る舞うできません。
韓国のように、アウトバウンド特化で外貨を獲得することもできません。

あるのは、ものづくりや現場のカイゼン思考など、一つの物事を突き詰めて最良のものにする、プロトタイピングとファブリケーションだと思います。
そして、世界が今後突入していくであろう高齢者比率が若年比率より高くなる高齢化社会という晩節にいち早く突入しています。
そのため、connected industriesにあるように、異業種や他業種などの垣根を超えて、お互いの抱えるノウハウやリソースを共有することで生まれる事業によって社会問題の解決を図れるようなケース(はじめからスケールすることを想定とした大きなビジネスでなく、着実に必要としている人がいるスモールビジネスのラピッドタイピング)をどんどん行い、一人っ子政策の反動で今後高齢化の課題を確実に抱える中国や、これから人工逆転の局面を迎える東南アジア各国の数年、数十年先のモデルケースづくりをアジアを先導して国家や自治体、企業単位で実証実験していく方向性になるかと存じます。
今の、世界のルールメイカーであるヨーロッパの立ち位置を、これからのシンギュラリティにより経済発展(フィンテックにより滑らかにお金が巡るようになり、国家間の経済格差が均されるその上がり幅)するアジアの中で担うのではないかしら、という。

connected industriesの例になるかわかりませんが、首都圏で務めたプロフェッショナルが地方に戻って創業する、もしくは東京と地方とで他拠点生活を行うなどの働き方が標榜され、実践している人たちが増えているよう感じます。
一番わかりやすいモデルケースが渋谷キャストの天空階に住んでいる40名で100の肩書きを持った拡張家族、CIFTではないかと。


http://cift.co/

所感ですが、みなさん共通しているのは東京と地方との使い分け方でした。
プロトタイピング(新規の事業やサービスを0から作り上げること)を行うには、土地資源などのリソースがあり、なおかつコストの安い地方が適しています。
失敗してもすぐに畳んで最小限の経費での実証実験を、地方で行う。

そしてそこで生まれたビジネスをスケールする(投資を受ける、コミュニティを拡大する、必要なコアメンバーを探す、より広くに知ってもらう)ための役割として東京を利用しているよう感じます。
日本の中で唯一無二のPR、HR、ファイナンスの機能を持っている場所として、接点は持ちつつもなにもかもが高コストのため常時いなくてもいいよね、という使い分けと思います。
ヒカリエのd&departmetなんかが地方コミュニティの紹介をしていますが、こちらはまさにPRとコミュニティ拡大の用途として東京を活用している例かなと。

こうした地方でのプロトタイピングや、地方の地元へ帰っての創業者や他拠点生活者が増えることで町の産業やものづくりに別の視点が加わり、新たな価値創造ができるケースもあります。


http://neutmagazine.com/interview-happy-nuts-day


これらもconnected industriesだろうと。

これらの事業や地方に生まれたビジネスの芽は、そもそもがマスマーケットに向けたものではなくコミュニティ内消費を想定しているものです。
大量生産大量消費ではなく、少量生産少量消費を行い、ステークスホルダー皆にストレスをかけない在り方も持続可能性の一つではないかと思っています。

そして、サスティナブルと先に掲げるのではなく、結果として無駄もないし環境に対してのストレスもないし関わっている全員が少しずつハッピーだよね、という在り方になっていた、言ってみたらサスティナブルだよね、という形は望ましいのではないかなーと個人的には思います。

もちろん、啓蒙のフェーズも必要ですし消費者が当事者意識を持つことも素晴らしいと思います。
ただ、考えなしにプラスチック=悪、と伝えるのではなく、プラスチック自体がどういう理由で、誰に、どのような負荷を与えているのか、知ってもらって考えてもらうフェーズを経て、では使わない方がいいよね、ということを自覚的に選択してもらうことが理想っちゃ理想ではないかしらと。
サスティナブルという言葉はマーケティング用語ではなく、その言葉を聞いて少しだけ考えてみようか、という気づきのきっかけであって欲しいなと。
サスティナブルが一般的な概念になった後、サスティナブルを中核競争力としていた企業やブランドは何をもって消費者に選ばれるのが、消費者に与えている真の満足価値は何か。
そこで振り出しにもどる前に、少しだけ想像力を広げてもらう、そういうきっかけもあると思います。

とりとめがなくなってしまいましたが、今後の日本の中ではサスティナブルという概念は地方を経て浸透するのではないかしら、という予測と、アジアの経済発展に合わせて少しその先の局面を迎える日本がアジアの未来の実証実験国家としてルールメイカーやモデル国家になれる可能性、未来があるのでは、というのが僕の答えでした。

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