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最近の記事

ハラスメントの調査の話

はじめに パワハラやアカハラについて、どうやって予防するかとか、被害を受けたらどうするか、といった視点からの解説は数多いが、調査する側からの視点で書かれたものは少ないと思う。今回は調査側目線でハラスメントについて書いてみる。ただし、守秘義務があるので、文中の例はすべてこれまでの判例や防止講習などの例を適宜変えるなどしたもので、実際に起きた事案とは全く関係が無いということをあらかじめお断りしておく。なお,これは私の個人的見解であって所属組織のものではないこともお断りしておく。

    • 嘘つき社長の件:日本システム企画株式会社(NMRパイプテクター)

      はじめに 今年の1月末に,自衛隊練馬駐屯地に入り込もうとしていたNMRパイプテクターの導入阻止に至った(謎水装置@自衛隊)。まあそんなこんなで(もうちょっと前から?)危機感を持ったのか,システム企画側は,かつて東京理科大に導入されたという古いネタを掘り起こしてきて宣伝している(配管赤錆防止、東京理科大学はNMRパイプテクターを導入)。これを見て,理科大導入の件で社長に大嘘つかれたのを思い出したのでここに証拠とともに掲載しておく。 大学へのクレーム 2021年9月22日付で

      • 【第4報】サプリ屋さん向け:阪大のシリコン製剤水素サプリは裁判所公認の"効果保証なし"

        これまでのまとめ 阪大の小林らが開発したシリコン製剤水素サプリについて,水素発生をチェックしたところ,水上置換による捕集では,ph8.3,36℃,20時間で水素発生量がパウダー1gにつき400mLという仕様は満たしていた。しかし,腸内類似環境として設定されたpH8.3はヒトの腸内環境ではあり得ないものである。今回は,最近の腸内pHの測定結果がどのようになっているかをについてまとめておく。次に,最近,小林らのシリコン製剤をめぐって紛争が起きていた。一審判決ではサプリ屋の敗訴だ

        • 呉座先生復職記念

          ※noteは圧力で消される可能性もあるので、私と訴訟しない限り削除できない自分トコのサイトにも同じ内容を置いておくことにする。 「呉座勇一先生の裁判を支える会」のサイトに「呉座先生、日文研復職のお知らせ」が掲載された。  「研究・教育・言論・メディアにかかわるすべての人へ」という文書に発起人の賛同者多数の名前を添えて公開され、その騒動を理由に研究者を一人クビにするということが起きた。何が問題かは当時私もここに書いた。女性差別を防止する一般的な声明の体裁をとりつつ、実は呉座

        ハラスメントの調査の話

        • 嘘つき社長の件:日本システム企画株式会社(NMRパイプテクター)

        • 【第4報】サプリ屋さん向け:阪大のシリコン製剤水素サプリは裁判所公認の"効果保証なし"

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          権威はそんなに暇ではない

          村木風海氏に関する記事,実は2020年にも出ていた。私の周りでは話題にならなかったのか,これまで認識していなかった。  とあるが,CO2の吸収とか回収の方法自体には何も目新しいことはない。回収したあともう一度還元して炭素を取り出す部分がCO2を減らす技術の肝心なところである。これができないと,CO2をいくら集めてもその先は行き止まりである。  というのは,別に権威に否定されたとかそういう話でも何でもない。回収した後のCO2をどうするかという部分が大問題なのに,皆が困って

          権威はそんなに暇ではない

          超磁場活水器「コスモス」続報:JR東は一体何をやっているのか

          JR東のトイレの排水管再び  一つ前の記事「販促資料が怪しすぎる:超磁場活水器「コスモス」」で、JR東日本に持ち込んでトイレの排水管の尿石付着が抑制できるという結果について、排水管の写真がおかしいという指摘をした。その内容は売り込みを受けているマンション住民の方から野火止製作所まで伝わり、訂正した説明の図が送られてきたとのことで、住民の方から再び情報提供を受けた。  追加の説明によると、磁気活水器を通った水が流れる排水管(フランジの穴が8個,図の左側)のものと、磁気活水器を

          超磁場活水器「コスモス」続報:JR東は一体何をやっているのか

          販促資料が怪しすぎる:超磁場活水器「コスモス」

          発端 ウェブサイトのメール送信フォームからメールが来た。居住するマンションに磁気活水器の売り込みがあって,理事会の年配の人達は大体信じて買おうとしていて,怪しいと思うけど騙されてしまいそう,という内容だった。そこで,どういう宣伝で何が売り込まれているのかまずは知りたいと伝えて販促資料一式をスキャンして送ってもらった。読んでみたら,科学としても変な内容だったが,それ以前に怪しいところが多すぎた。この販促資料は他でも使われていると思われるので,同様の方法で騙される人が出ないように

          販促資料が怪しすぎる:超磁場活水器「コスモス」

          阪大のケイ素サプリの水素捕集をした結果わかってきたこと

          はじめに このテーマで記事を書くのは3回目である。関連する過去2回の記事は,最後の過去記事のところにリンクした。  今回の議論は,阪大の小林らが水素サプリの材料を提供し始めるにあたって出版あるいは公表した3つの文献 [小林1]Y. Kobayashi et al., "Hydrogen generation by reaction of Si nanopowder with neutral water", J. Nanopart. Res.19(2017)19 [小林2]

          阪大のケイ素サプリの水素捕集をした結果わかってきたこと

          CO2の行方だけでなく一貫性の行方もわからなくなっている件

          続報が出たのでYahooの記事を読んで,「CO2はどこへ行っているのか」https://note.com/apj/n/n0ebd82691986というのをここに書いていたら,4月9日に続報が出た。  もう村木さんはホリプロの人だとわかっているし,記事媒体はエンタメニュースだし,タレントのプロデュースの記事だと思って読み始めたのだが,それでもいろいろと引っかかった。参考までに,4月1日に出た前回の記事もリンクしておく。 設定違ってきてませんか 4月1日の記事では, とある

          CO2の行方だけでなく一貫性の行方もわからなくなっている件

          CO2はどこへ行っているのか

          Yahooニュースの記事「東大4年・22歳異端の化学者が卒業目前で満期退学 教授らを呆然とさせた決断の背景」 という記事が出たのがSNSで回ってきたので,一体何だろうと思って読んでみたら,疑問しか浮かんでこなかった。化学者で発明家の村木風海さんに関する記事で,温暖化を止める研究に専念するために東大を中退したということが記事になっていた。  化学の知識を使って温暖化を止めるのであれば,化学には十分詳しくないと不可能だろう。でもって,今の化学はとどのつまりは量子力学で記述され

          CO2はどこへ行っているのか

          フラナガンの水素サプリ「メガハイドレート」は買うべきでも売るべきでもない

          発端 先日から阪大のケイ素利用水素サプリの測定をしていた。その流れで,比較のために,Dr.パトリック・フラナガンが開発したと称する「MEGA HYDRATE」からの水素発生を調べた。 実験 36℃で,pH 8.3, pH 7.4, pH 6.6の溶液(pH 8.3はホウ酸緩衝液,pH 7.4とpH6.6はリン酸緩衝液)の中に,カプセルMEGA HYDRATEを2カプセル入れて,水上置換により気体の発生量を測定した。カプセル投入後から数時間の間は1時間おきに気体の発生量を記録

          フラナガンの水素サプリ「メガハイドレート」は買うべきでも売るべきでもない

          阪大が開発に関わったケイ素製剤水素サプリにいろいろと問題がある件

          追記 この記事は,小林氏らが論文で用いた,ケイ素粉末と水との反応について水素計を使って水素発生量を評価するという方法に基づくものである。  ただ,この方法だと,発生した水素の総量の評価ができない。総量の評価は捕集してみないと正確には出てこないのである。  このため,水上置換による水素捕集も行ったところ,pH 8.3では水素(たぶん)は出ているが,腸内のpHの実測値であるpH7.4〜pH6.6では発生量は少ないかほとんど無いことがわかった。たぶん,と書いたのは,ガス中の水素濃度

          阪大が開発に関わったケイ素製剤水素サプリにいろいろと問題がある件

          産学連携と景表法7条2項  

          水素サプリ「レナトス」と大阪大学 まず,問題があると思われる実例を紹介する。似たような例は他にもあるが,旧帝大の複数の学部・研究室が関わっているため,社会的影響が大きいと考えられるので,このケースを取り上げる。  レナトス(RENATUS)という水素サプリメントを販売している企業がある(https://renatus-japan.co.jp/)。レナシアプラス,というのが商品名の一つで,レナトスシリーズとして商品展開をしている。この商品の宣伝に, といった表現が並んでいる

          産学連携と景表法7条2項  

          内容証明の行方とその内容

          https://note.com/apj/n/n6530474a2103  に書いた、甲南大学に送ったはずの内容証明が行方不明になっていた件。雁琳氏が状況説明をツイートしているので、全文引用しておく。 ツイートからわかる内容証明の中身togetterは簡単に消されるし、ツイートもこの先の圧力次第ではどうなるかわからないので、念のため全文引用したものを作って記録しておく。引用元のツイートのURLを出典として示した。 甲南大学の郵便物の管理にはやはり問題があった 「勤務先の私

          内容証明の行方とその内容

          「オープンレター 女性差別的な文化を脱するために」の問題点

          オープンレターそのものの問題点「オープンレター 女性差別的な文化を脱するために」が公開されているが、これは問題のある文書である。理由は次の通り。 広く女性差別的な文化をなくしていこうという運動のための文書なのに、なぜか呉座氏という特定の個人の言動を非難する内容が最初に書かれている。 きっかけが呉座氏であったとしても、一般性のある文書に特定の個人の情報を載せる意味はない。この文書は、呉座氏にことさら悪い印象を与える内容になっており、社会運動のために広く用いるには不適切である。

          「オープンレター 女性差別的な文化を脱するために」の問題点

          言論には言論で対抗すべきで署名で追放するのは暴力である:「Twitter上・講義中に多くの差別発言を行った広島大学助教伊藤隆太氏の差別に反対する署名キャンペーン」に反対する

          表題のキャンペーン(https://note.com/movingbeyondhate/n/nd0b6eb7f06c0)が始まっているが、全く同意できないため、反対意見を主張する。これに関連するまとめは,キャンペーンのページにもあるので,そちらを参照しながら意見を述べておく。  キャンペーンの根拠になったまとめなのだから、さぞかし酷い差別が並んでいるのかと思って読んでみたら、微妙でセンシティブな内容ではあったが、糾弾しなきゃいけないような差別には全く見えなかった。フレンドさん

          言論には言論で対抗すべきで署名で追放するのは暴力である:「Twitter上・講義中に多くの差別発言を行った広島大学助教伊藤隆太氏の差別に反対する署名キャンペーン」に反対する