阪大のケイ素サプリの水素捕集をした結果わかってきたこと

はじめに

 このテーマで記事を書くのは3回目である。関連する過去2回の記事は,最後の過去記事のところにリンクした。
 今回の議論は,阪大の小林らが水素サプリの材料を提供し始めるにあたって出版あるいは公表した3つの文献

について,事実と異なる記載があったり,勘違いを誘発する内容になっているということをまとめておく。英文の論文はopen accessだし,日本語のものは誰でも読める(特許は検索が必要だが全文読むことができる)。
 時系列でみると,英語の論文の[小林1]が最初で,その2年後に特許[小林2]が登録され,事業者向けの宣伝[小林3]が出た,ということになる。出願日が2017年1月なので,論文アクセプトと出願がほぼ同時ということだろう。
 たいていの人は私と同様に,まず[小林3]を読んでシリコン製剤のことを知り,疑問や問題に気づいて[小林1]まで遡りつつ,[小林2]も見つけるということになるのだろう。その他の論文の薬理作用や生理作用は,ヒトに対する臨床試験の結果ではないので,サプリメントの作用の検討で考慮するに値しない。
 ともかく,一連の文献やら何やらを追いかけた結果,何かのミステリーか,できの悪いCSI(米国等で放映された科学捜査班番組)のような展開になった。

ケミカルタイムズの疑問と問題点

臨床試験無しに効果効能を主張

 [小林3]の図8のキャプションで「シリコン製剤の効果が確認された」と主張し,図中でも「シリコン製剤の効果が確認された疾病」と書いている。しかし,ヒトに対する臨床試験の結果が確認されたものではないので,このキャプションは事実に反する。この図について,根拠となる臨床試験の論文は引用されていなかった。
 ヒトに対する臨床試験の結果無しに,薬でもないただの食品が効果効能を謳うのは薬機法違反である。この文献を示してシリコン製剤の宣伝をしたり,シリコン製剤を使ったサプリの宣伝をすれば違法となる。

「シリコン製剤の効果が確認された」とキャプションで断言している。

水素発生の図の混乱(その1)

 [小林3]で,ケイ素製剤が水と反応して水素を発生するという説明に出てくる図は,次のようになっている。

2つの図(縦軸と横軸は単位が違うだけで同じ)を並べているが,測定方法についての説明はこの報文中のどこにもない。[小林1]まで調べると,図1の測定条件はわかるが図2の由来は不明である。

 [小林3]の内容をそのまま受け取れば,シリコン微粒子を作ってキャプションの条件で特に何もせず水素発生を測定すれば図1の結果が得られ,なにがしかの「表面処理」をすると,「腸内疑似環境」(pH8.3, 36℃,このpHは膵液のpHであると説明)で図2(b)の結果が得られる,と読むことになる。
 図1,図2とも,どういう条件で測定したのかについては[小林3]には何の記述もない。図1と図2を比較しつつ,「表面処理」すれば水素が多く出る,と説明されたら,まずは,図1と図2は同じ測定法によるものである,と受け取るしかない。図1については,[小林1]に同じものが掲載されているので,溶存水素計による測定だとわかるが,図2については,測定によって得られた値がどれであるかがわからない曲線であり,測定法や測定条件にたどり着けないだけではなく,実際に測定したものかどうかもわからないままである。
 そこで,正確性には欠けるが,図1と図2の挙動を直接重ねて比較してみた。背景を透明にした画像を作り,拡大縮小してスケールを合わせて重ねたものを以下に示す。大幅に拡大することになった図2の線が太くなっているが,およその振る舞いはわかる。

[小林3]の図2を拡大し,スケールを合わせて図1と重ねた。

 [小林1](c)のフッ酸処理,20℃,pH8.0(ホウ酸バッファ)と,[小林3]図2(b)表面処理あり腸内類似環境(pH8.3, 36℃)が,最初の立ち上がりの部分で近い振る舞い,[小林1](a)フッ酸処理,20℃,超純水pH7.0と[小林3]図2(a)表面処理なし腸内類似環境(pH8.3, 36℃)と,が近い振る舞いをしている。
 小林らは,医薬応用の方では「表面処理」をしていると主張している。論文や特許を見ても,後でまとめるように,表面処理の方法として提案されているものはフッ酸処理のみである。従って,表面処理=フッ酸処理,と解釈するしかない。
 図2(b)表面処理=フッ酸処理,36℃,pH8.3,は,[小林1]で最も水素発生速度の大きい(d)フッ酸処理,20℃,pH8.0よりもさらに温度とpHが高い分だけ反応が速くなるはずだが,図1(d)を下回るだけではなく,フッ酸処理,20℃,pH8.0という温度もpHも低い条件の[小林1](c)さえも少しだけだが下回る挙動をしていることになる。反応速度の関係として,これはあり得ない。
 一方,[小林1]Fig.2(a)と[小林3]図2の表面処理無しがおよそ重なっている。20℃,pH7.0は,36℃,pH8.3に比べて反応条件としては不利だが,その分をフッ酸処理で表面を反応しやすくすることによって補っているように見える。こちらについては,このようなことが起きたとしても全体として矛盾はしていない。
 フッ酸処理をしても時間が経てば表面が再酸化等により反応しづらくなるので,[小林3]図2は,フッ酸処理をした後,[小林1]Fig.2よりも時間が経ったものを測定している可能性がある。ただし,同じ方法で実際に測定していれば,の話である。

水素発生の図の混乱(その2)

 [小林3]図1とその説明を素直に読むと,ケイ素を粉砕したものからの水素発生はKOHを使ってアルカリ側にすると起こりやすいとわかる。[小林1]の論文のFig.2が,図1と全く同じである。図が全く同じなら,測定した材料や測定条件も同じはずである。そこで,さらに詳しく論文の測定条件をみていくと,次のようなものであった。

  • シリコン粒子は機械的に粉砕するミリング法で用意した。

  • 粒子表面が酸素と反応してしまうので,表面の酸化皮膜を取り除くためフッ酸で洗浄した。

  • フッ酸で洗浄すると表面が疎水的になるのでアルコールを微量加えた。

  • 測定は20℃。

  • 溶存水素計を使った。

  • pH8.0と8.6はホウ酸バッファを用いた。

  ここで重要なのは,フッ酸処理をしているという部分である。シリコン表面は空気中に放置しておくと酸化し,水と反応しなくなるが,フッ酸で二酸化ケイ素の層を取り除くと水と反応しやすくなることがよく知られている。ところが,フッ酸は食品添加物としては認められておらず,食品の製造過程でも使えないのである。そのことを隠して[小林3]が書かれていることがわかった。つまり[小林1]を参照しながら[小林3]を読むと,フッ酸処理しないと得られない水素発生量を,フッ酸処理ではなく「表面処理」と書くことでごまかしつつサプリメントの材料として薦めているのではないか,という疑義が生じてくる。
 さらに,pH8.0と8.6の測定は,[小林1]ではホウ酸バッファを使ったとあるのに,[小林3]ではKOH水溶液だと書いてある。全く同じグラフなのに,測定条件が違うのである。読んだ側としては,図1とFig2を一体どちらの条件で測定したと考えたら良いのかさっぱりわからない。科学の基本である再現性の軽視にもつながる問題である。
 なお,[小林1]Fig2の結果を確認したり,比較したりしようと考えた場合,水素発生量の測定は捕集ではなくまずは溶存水素計を使うことになる。小林氏が溶存水素計を使ったと論文に書いたからである。

測定してみる

 まずは,論文の通りに,溶存水素計を使って,サプリメントの製品になっているケイ素製剤からの水素発生を確認することにした。その結果は過去記事にまとめてある。溶存水素計による測定では,表面処理なしとされている[小林3]図2(a)に近いものになった。
 念のために水上置換で水素の捕集を行った結果,「HH LABO」では[小林3]図2(b)の方を再現した。「ファインHH」の水素発生量は「HH LABO」に比べて少なかった。実験の詳細は別のところに出しているし,水素計の測定結果は過去記事の方に載せたので,ここでは,後から確認した捕集実験の結果を示す。横軸は時間,縦軸はケイ素製剤1 gあたりの水素発生量である。

水上置換による捕集で確認した「HH LABO」からの水素発生量。pH8.3と8.7はホウ酸バッファ,pH 7.4と6.6はリン酸バッファを用いた。途中で時間が空いているのは,数時間観察した後一旦帰宅し,翌日に捕集量を確認したためである。pH 6.6では数時間0mLが続いたが,翌日確認したら水素発生がみられた。


水上置換による捕集で確認した「ファインHH」からの水素発生量。pH8.3と8.7はホウ酸バッファ,pH 7.4と6.6はリン酸バッファを用いた。途中で時間が空いているのは,数時間観察した後一旦帰宅し,翌日に捕集量を確認したためである。

 余計なものをあまり混ぜなかったので,もとのケイ素製剤の性質がそのまま残っているのが「HH LABO」,あれこれ混ぜた結果,少しpHが下がって現実の腸内に近づくと水素がろくに出ないサプリになってしまったのが「ファインHH」ということになる。

捕集によって見えてきた問題点

 小林らが提案しているシリコン微粒子に対する表面処理はフッ酸処理のみであり,その他の方法は見当たらない。その他の方法の存在をうかがわせる記述すらない。
 [小林3]図2は,実験条件が不明であるが,もし,ケイ素粉末の量が少なく,水が十分多ければ,発生した水素の大半が水に溶解するので,溶存水素計で測定してもそこそこ正確に水素発生量を測定できている可能性がある。取り逃がしている水素がなければ,水素発生量は捕集したものとあまり変わらない結果になるはずである。
 [小林3]図2(b)の方をサプリメントに対する捕集実験で再現したということは,サプリメントに使われているケイ素製剤は「表面処理」つまりフッ酸処理がされていることを意味する。すると,明らかに食品衛生法違反となるため,ケイ素製剤の製造元とサプリの販売元が揃って責任を負うことになる。どういう説明を受けてサプリ屋がこの材料を買ったのかはわからないが,図2(b)が再現されたことを喜んでいる場合ではないのである。
 一方,[小林1]によれば,フッ酸処理したケイ素粉末はpH 8.0,及びpH 8.6のホウ酸バッファ中で20℃で速やかに水素を発生したという結果であった。サプリメント中のケイ素はこの条件では水素を発生しなかった(ホウ酸・水素計で0,ホウ酸とKOH両方で捕集0)。さらに,水素計による測定結果は,pH8.3,36℃という,論文よりも高い温度(反応しやすい)であっても,フッ酸処理したものによる水素発生を水素計で測定した[小林1]Fig2と比べると,超純水と水道水の間ぐらいの値となった。これらの結果は,サプリメント用のケイ素粉末はフッ酸処理したケイ素粒子に比べて水との反応性がかなり乏しいことを示している。
 フッ酸処理を行ったケイ素粉末では[小林1]Fig.2=[小林3]図1(c)(d)と[小林3]図2(b)の両方が同時に再現するはずのところ,サプリメントに使われているケイ素粉末では,[小林3]図2(b)しか再現しなかった。[小林3]図2(b)の「表面処理有り」の記述(=フッ酸処理)が正しければ,サプリメントに使われているケイ素粉末はフッ酸処理していることが示唆され食品衛生法違反となり,同時に[小林1]Fig.2=[小林3]図1(c)(d)の再現性に疑義が出てくる。もし,サプリメントのケイ素粉末にフッ酸処理を行っていなければ,[小林1]Fig.2=[小林3]図1(c)(d)が再現しなかった理由の説明がつくかわりに,[小林3]図2(b)の「表面処理有り」の記述の信ぴょう性に疑義が出てくる。
 この先は,微量のフッ素が含まれているかどうかの確認や,製造設備までチェックするといったことをしない限り結論が出せない。
 このように,はっきりしない状況であるため,シリコン製剤を食品に使う場合は,製造設備の立入検査をするとか,フッ酸処理の有無と図2の関係についてしっかり追求し書面を出させるなどしてから使うようにしないと,事業者がリスクを負うことになる(もちろんサプリを買う消費者もだが)。[小林3]のような,穴だらけの技術文書が出ている代物を信用するかどうかも含めて検討が必要だろう。

「腸内類似環境」の問題

 小林らは「腸内類似環境」として,膵液のpHであると述べつつ,pH 8.3, 36℃を採用している。膵液は胃酸と十二指腸で混じって中和されるので,膵液のpHが小腸で維持されることはない。ケイ素と水の反応はpHに敏感に依存するので,腸内pHとしてどの程度の値を想定するかで,サプリメントとしての意味も変わってくる。
 カプセル状のpHメータを服用させて腸内pHを実測した結果は,少し古いものだと,D. F. Evans et al., Gut 29(1988) 1035-1041がある。

Evans(1988)らによる腸内pHの実測値。

 Evansらによると,ヒトの腸内のpHは7.4より低く,滞在時間の長い大腸で6.6程度となる。
 最近の結果としては,H. Iida et al., Hepatogastroenterology 59(2012)413-414がある。概要だけであればPubMedで読むことができる。

Iidaらによるヒトの腸内pHの実測結果。

The intragastric pH was low and the pH in the whole small intestine was 7.61, 7.55: 7.2-8.1 (mean, median: range).

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21940390/

 とあるので,Iidaらの結果はEvansらの結果よりもpHが高くなっている。それでも,腸内pHの値として8.3を選ぶ根拠にはなり得ない。
 「腸内類似環境」としてpH 8.3を採用するのは無理があり,pH 8.3で予想されるほどの水素発生は期待できない。

特許の問題点

 特許の読み方は私よりも一般企業の技術者の方が詳しいし上手だろう。この節は,論文を読み慣れている大学の研究者が特許をどう読み取っているか,というものだと考えていただきたい。なお,特許中でも表面処理の手法として出てくるのはフッ酸処理のみである。

ケイ素ナノ粒子は凝集してしまっている

 【請求項1】に,

結晶子径が1 n m 以上1 0 0 n m 以下のシリコン微細粒子又は該シリコン微細粒子の凝集体を含み、

特許第6467071号

とある。【0017】には,

ここで、本願における「シリコン微細粒子」は、平均の結晶子径がナノレベル、具体的には結晶子径が1 n m 以上1 0 0 n m 以下のシリコンナノ粒子を主たる粒子とする。より狭義には、本願における「シリコン微細粒子」は、平均の結晶子径がナノレベル、具体的には結晶子径が1 n m 以上5 0 n m 以下のシリコンナノ粒子を主たる粒子とする。また、本願においてシリコン微細粒子には、各シリコンナノ粒子が分散している状態のもののみならず、複数のシリコンナノ粒子が自然に集まってμ m 近い( 概ね0 . 1 μ m 以上1 μ m以下) の大きさの凝集体を構成した状態のものを含む。

特許第6467071

 この特許では,シリコンは主にナノ粒子=シリコン微細粒子として振る舞っており,その中に凝集体も含まれているように読める。しかし,実際には,機械的にシリコン微粒子を粉砕して直径100nm以下の粒子を作った場合,粒子同士が凝集してしまい,およそミクロンサイズの粒子として振る舞うので,「凝集体を含み」どころか,ナノ粒子のままでいるものはほとんど無い。
 ばらばらのナノ粒子のままでいるものがほぼ存在しないであろうことは,【0032】のフッ酸処理の手順を見れば明らかである。フッ酸で処理した後,100 nmのフィルターでシリコン粉末をトラップして,エタノールを滴下してフッ素を洗い流すと書いてある。もし,シリコン粒子が100 nm以下の粒子として振る舞っていれば,エタノールの滴下で粒子がフィルターを抜けてくるはずである。しかし特許ではフィルター上に残った方のシリコン粒子を使うことになっている。機械的に100 nm以下まで粉砕したシリコン粒子は,凝集してしまうため,100 nmのフィルターを通過できないのである。
 また,100 nm以下の粒子を積極的に使うことがポイントであるなら,特許のどこかで,100 nmのフィルターを抜けてきたものを集めて使う,という記載があるはずだが,そう書いていない。フィルターを抜けてくるものが無いから書いてない,と読むしか無いだろう。
 実際に確認するのは簡単で,買った材料に水やエタノールを加えて撹拌した後,100 nmのフィルターで漉してみれば良い。透明な液体が出てきてフィルターにケイ素が残るようならナノ粒子は無い。ナノ粒子分散系ができていれば,フィルターを通った液体に濁りがなく何か色がつくだろう。
 つまりこの特許は,実際にはナノサイズの粒子として振る舞うシリコンがほとんど無く,【0032】の操作もそのように書いてあるのに,【請求項1】【0017】では「シリコン微細粒子」であることがポイントであるかのように書いてあって,内部矛盾をきたしていると言える。
 特許等の知財専門家の情報によると、特許は強い独占排他権を持つとされるが、当業者が再現実施できるほどに発明を公開開示する必要がある上に(してなければ無効事由がある)、もし内容に虚偽があれば詐欺罪に問われる可能性もある。この特許は,ナノ粒子が実際にどのように振る舞うかについて,記述が足りないように思われる。

もしナノ粒子として振る舞うことがあったら健康影響が問題になる

 静かに濾過するといった操作ではナノ粒子がほとんど凝集体として振る舞っていたとしても,ヒトが飲食してpHが変わったり他のものと混じったりした場合,ナノ粒子が凝集体から剥がれたり,凝集体が壊れて食物などに混じってくることはあり得る。この場合,ナノ粒子がそのまま胃腸の粘膜に接触することになるので,健康影響を確認しておく必要がある。
 小林らは,ケイ素の吸収は起きないと想定しているが,ケイ素サプリの使用によってケイ素を含んだ結石ができた事例もあり,吸収されないという想定は甘すぎる。ナノ粒子になれば,表面積が増えるので,同じ量摂取しても吸収が起こりやすくなる可能性がある。ケイ素ナノ粒子について,健康影響は無いことを無条件に仮定するべきではない。ナノ材料による健康リスクについては、阪大薬学研究科教授等による公開情報もあり、特にこのサプリメントの長期飲用による健康問題が起こった後では手遅れになる。

水素の動態の確認がなされていない

 腸から吸収された水素の行方を知る上で参考になりそうな,豚を用いた動物実験の結果が報告された。日本語によるまとめがこちらに,対応する論文はこちら(A. Hirai et al., Heliyon 7(2021) e08359)である。
 豚を用いて,小腸内に圧力をかけて水素を溶解させたグルコース溶液を入れたところ,空腸静脈で高濃度の水素が,門脈では薄くなった水素が検出された。しかし,動脈では検出されなかった。
 ヒトの腸内発酵の指標として呼気中の水素が使われていることと合わせると,腸内から水素が吸収されても,肺を通る時に呼気として排出されて,全身には影響しないことが予想される。
  肺からの水素吸収であれば水素は全身に回って脳にも届くが,腸内で水素を発生させても,肺から排出されるため全身には回らず,脳にも直接届かない。従って,[小林3]図8のように,腸から吸収された水素が直接全身に効果を及ぼすことは全く期待できない。
 腸内で水素が発生するサプリの評価をするのであれば,呼気中の水水素濃度が腸内細菌によるものに比べて有意に上がる等の科学的な確認と,肺で排出されてもなおその残りが動脈に入って全身に回ることまで確認してからでないと意味がない。あるいは,肝臓の水素濃度を上げると意外な効果がある,といった人体の不思議的ななにかを探すしかないだろう。
 すでに腸内研究者には公知のように、人等の腸内では腸内細菌によって大量の水素が産生されているにも拘らず、この水素に全く言及せず、自らのシリコン微粒子のみによる水素の影響を主張することはまさに非科学の至りではないだろうか。
 既報を含めて以上のように、阪大産学連携に係るこの論文と関係発表並びにサプリメントには多くの問題をはらんでおり、これが健康に係わることであるがゆえに、関係当局を含めた迅速且つ根本的な対応措置を要請したいと思う。

補足(修正)

 かなり細かく議論したのだけど、某所から得た、シリコンパウダーの製造元が腸内類似環境で水素発生400mL/gを保証して出荷している、ということ、[小林3]図2で400mL/gになるのは「表面処理有り」であること、特許を調べると,表面処理としてはフッ酸処理と過酸化水素処理(特許13ページ)の2つが書かれている。シリコンパウダーは、フッ酸処理していると食品衛生法に引っかかるが,過酸化水素は食品添加物として認められているので,食品衛生法への抵触はまぬがれる。
 過酸化水素処理は第4の実施形態と同じ効果があると書いてある。もし,レナトスが材料にしているシリコンパウダーが過酸化水素処理をしたものであった場合,フッ酸処理との最大の違いは,20℃,pH8.6で水素を発生しないというところに出てくるのではないか。

※特許に過酸化水素処理が登場するのを見落としていたのに気づいたので修正。

過去記事

 阪大が開発に関わったケイ素サプリの宣伝を見て,まずいんじゃないかと考えて書いたもの

 阪大小林氏らの論文に基づいて溶存水素計を用いてサプリメントからの水素発生を確認したもの(捕集と異なる結果なので追記と修正有り)


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