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弾丸節約の必要性に関する確率論的研究

序論

MHFにて初登場した弾丸節約はMHXでメインシリーズに輸入され紆余曲折を経てMHRiseにおいてガンナーの必須スキルとしてよく名前の挙がるスキルとなった。最大で20%の確率で弾丸の消費をなくすスキルであり、SBでもその立ち位置は変わらず使用されている。しかしIBのころ存在した真・弾丸節約から確率が下がったことを理由にその必要性に疑問を呈すプレイヤーも一定数存在しその必要性に対し客観的な結論が求められるようになった。そも弾丸節約の有用性は二つある。弾丸の持ち込み数を疑似的に増やせることと弾倉から弾を減らさないことで装填数を増やせることである。これら二つの要素を合わせていつ弾丸節約を発動すべきなのか、必須と呼べるレベルのものなのかについて議論していく。

1.弾丸の実質的な増殖

弾丸節約は最大で20%の確率で弾の消費を抑えるがこれは持ち込み数が20%増えることとイコールではない。節約された弾は再度20%の確率で節約されるため運が良ければ3、4発撃っても弾が減らないなんてこともあり得る。つまり弾丸の持ち込み数増加の期待値は0.2^nの等比級数となる。弾の総数の期待値がどれくらい増えるかを節約係数とおくとその計算は以下の数式で割り出せる。

計算は至極単純であり節約係数=1/(1-0.2)=1.25となる。持ち込み数は25%増えるのだ。そうなると例えば調合分を入れて120発持ち込める貫通属性弾(貫通滅龍弾を除く)は実質150発になる、というわけだ。しかし忘れてはならないのがこれは平均値であり確率のブレによって変わるという点である。計算の単純化のため弾丸節約を25%の確率で「当たり」が出るベルヌーイ試行と置き換えて考える。そうすると平均が0.25、分散が0.1875の分布として扱うことができる。120発試行ができる貫通属性弾なら増殖数の平均が30、標準偏差が4.743となる。n=120で p = 0.25なのでnp>10, n(1-p)>10である。そのためこの分布を正規分布として扱うことが可能である。95%の場合において弾の実質持ち込み数は140.5から159.5発に落ち着く。とどのつまり弾丸節約レベル3を使用している限り貫通属性弾の実質持ち込み数は140発は堅いということとなる。大きく下振れした場合はそういうこともあると諦めてしまおう。20発のオマケにどのくらいの価値を見出すかは使用者次第である。ただ貫通属性弾は弾切れしやすく大抵の貫通属性ボウガンはメイン火力以外に使えるサブ弾が少ない、またはサブ弾運用に割くスキル枠がないことから20発のオマケで弾切れするかしないかが分かれる場面もあるだろうから有用と個人的には考える。
極端な例としてLv3通常弾がどれくらい増えるのか見ていきたい。Lv3通常弾は99発持ち込め、調合に必要なLv3火薬粉は調合分抜きで80個持ち込める。Lv3通常弾は火薬粉一つにつき4発手に入るので合計419発の持ち込みとなる。平均104.8発実質持ち込み数が増えるとなると継戦能力の向上には目を見張るものがある。標準偏差2つ分の下振れがあっても87.02発増える計算なためかなり有用といえる。
では持ち込み数が極端に少ない場合はどうだろう。Lv3拡散弾は調合分込みでも16発しか持ち込めず多少増えたところで拡散弾だけで削り切れるモンスターはほぼ存在しない。標準偏差2つ分の上振れを引いたとしても5.73発しか増えずLv3拡散弾21発になったところでそこまで変わらないだろう。拡散弾メインの戦術は今日日はやらないがもしやるとしても弾丸節約を採用するかについては疑問符が残る。
もう少し採用が現実的かつ持ち込み数が少ない弾を見ていこう。斬裂弾は調合分込みでも60発しか持ち込めない。95%の場合において68.3発から81.7発となる実質持ち込み数だが下振れした場合8発程度しか増えないのはかなり痛い。もちろん平均としては15発増えるので悪くはない。弱体化を受けた今75発の斬裂弾で沈むモンスターはそう多くないため弾丸節約をつけてもつけなくてもそう変わらないだろう。もしかしたらキャンプに戻る回数が一回減るかもしれない、と思うなら採用でいいだろう。こう考えると(数値以外は主観だが)斬裂弾(と持ち込み数が同じくらいの)徹甲榴弾で採用を迷うくらいのもので弾丸増殖目的なら基本入れておいて損はしないだろう。逆に持ち込み数だけで絶対にモンスターを沈める自信があるならいらない、ということになる。弾丸節約による火力上昇を加味しなければの話ではあるが。

2.装填拡張による火力スキルとして

弾丸節約と少しズレるため装填拡張による火力の増加については過程を割愛し結果だけ載せる。

横軸が装填数が一つ増えたあとの数値、縦軸が装填数+1されることで伸びる秒間ダメージの上昇幅である。反動小、リロード最速、通常射撃という前提なことに留意してほしい。

では弾丸節約でどれくらい装填数が伸びるのか。弾丸節約レベル3がついた状態で弾を一発消費するには消費が発生しない確率を引かなければならない。p=0.8の幾何分布ととらえると消費されるまでにかかる射撃数の平均は1/0.8=1.25発となる。このときの分散は(1-0.8)/(0.8)^2=0.3125となる。言い換えれば弾丸節約レベル3とは装填数を平均1.25倍するスキルと言い換えることもできる。装填拡張は加算増加、弾丸節約は乗算増加ということとなる。そうなると装填拡張が元の数値が低いほうが効果が高く弾丸節約は割合でみればどの装填数であっても効果は変わらない。1.25倍となると弾丸節約が装填拡張よりも効果が高くなるのは装填数5発以降となる。つまり装填数4発以上なら弾丸節約をつければいいのかといえばそうではない。なぜなら装填数がDPSに与える影響は元の装填数が高ければ高いほど低くなっていくからである。そこで弾丸節約レベル3を発動することでどれくらいダメージが伸びるのかを計算してみた。前提として装填数がaの時弾丸節約により装填数がbに伸びる確率は節約されない確率のa乗に節約される確率のb-a乗をかけ、それにb-1からa-1を選ぶ組み合わせの総数をかければよい。その確率に装填数bになった時のDPSをかければそれが期待値である。この期待値を足し合わせることで弾丸節約使用時のDPS期待値が計算できる。この計算結果に基づきDPSの上昇率を装填数ごとにグラフにすると以下のようになる。

このときのDPSは反動小、リロード最速、通常射撃の場合を参照している。つまり一発の射撃により時間をかける速射と溜め撃ちを使用する場合DPS上昇量はこの数値より低くなるということである。このグラフを見ればわかる通り装填数が上がれば上がるほど弾丸節約によるDPSへの影響は低くなっていくことがわかる。確かに装填数が上がれば上がるほど一回リロードを挟むまでに節約される弾の個数は増える。がしかしそれ以上に装填数がDPSに与える影響は小さくなってしまうのだ。この結果からわかる通りDPS目的で弾丸節約をつけるなら装填数4発くらいまでが限度であろう。スロットレベル2を三つ分の他のスキルならなにができるかを考えてつけよう。参考までに超会心なし、元の会心率0の状態に弱点特攻だけつけた場合物理火力は6.25%伸びる。現実的には攻撃レベル4を7に上げたり会心撃【属性】を検討したりして比較を行うことになるだろう。ちなみに前者の場合加算上昇値だけを比べると装填数4発のボウガンに弾丸節約レベル3をつけるのとほぼ同じDPS上昇量となる。

結論

以上の二点をふまえると弾丸節約の採用価値は弾の持ち込み数が少ない場合と装填数が低い場合に最も高くなる、という結論が導ける。ただし持ち込み数があまりにも少ない場合は弾切れを起こすことに変わりがない場合が多く採用する価値は逆に下がる。また周回を前提として話す場合弾に使う調合素材の節約としての採用もあり得るため偏に数値では表せない部分もある。まとめると弾丸節約は属性弾系統でこそ輝き、物理弾ではそこまで効果を発揮しないことがわかる。例えばLv3散弾の装填数が7の巨塊砲ゴルクロプスを使用する場合約3%のダメージのためにスロットレベル2のスキルを3レベル分割けるかを考えなければならない。手放しに必須スキルと呼べるものではないだろう。この記事がガンナースキル構成論の一助となれば幸いである。


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