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【ねこと青年】〜運命の出逢い編〜


とある日の深夜のバイトおわり

青年は閑静な住宅街の中を歩いていた

一軒家が立ち並ぶ静かな住宅街…



"いつもとなにも変わらない光景"


「はぁ…」



青年はため息をついてうつむきがちに歩いていた


そこに


「にゃー、にゃー」


か細い声がきこえた

子ねこはどこからともなく青年の前に現れた


「にゃー、にゃー」


と泣き続けながら青年の足にすり寄る

子ねこの眼差しは

親を探しているようにもみえた



青年は勝手に推察した


「そうだ。この子は親に捨てられたのだ」

「とつぜん行き場を失い泣いているのだ」



しかし青年は賃貸に住んでいるため

ねこを飼うことができない


「まいったな…」


青年はおもむろにねこを抱きかかえた

すると今まで鳴き続けていたねこが泣き止んだ


そのとき青年は確信した


「やっぱりそうだ!」

「この子は温もりが欲しいんだ」


青年はねこを飼えない

だからせめて一夜を共に過ごすことに決めた


「まずはエサだな」


青年はねこを抱えたまま歩いた

向かった先は近くのスーパー…



目的地に着くとねこを入り口近くにおろした

ねこはとまどいながらも周辺を散策し始めた


「いなくならないといいけど…」


そう思いながら青年はスーパーに入る

早足で猫缶を買いすぐに出口へ向かった


「良かった…」


そこにはまだねこがいた

ねこは物欲しそうにこちらを見ている

レジ袋を見るや否や近づいてきて


「にゃー」


と鳴いた


まるで袋の中を見透かしているように…


はばかれたのだが

青年はスーパーの裏口へ向かう

ねこは青年の後ろを追う…



裏口に着くと青年は猫缶をあけて近くに置いた

ねこはむしゃぼりつくように食べた


「よっぽどお腹が空いていたんだな(笑)」


そう思いながらねこをみつめる



あっという間に食べ終わり

ねこは鳴いた


「にゃー」


まるで物足りないかのようだ

青年は猫缶を3つ買っていた

惜しむことなくもう一つを開けた



少しペースは落ちた

でもすぐに完食した

またねこは鳴いた


「にゃー」




青年はまるでエサ係と化した

それでも嬉しかった


「必要とされている」


この気持ちはしばらく忘れていた


たとえそれがねこでも

嬉しかった



青年は最後のエサを開けて

ねこの近くに置いた


「エサをあげたあと何をしてこの子と過ごそうかな?」


ワクワクしながら青年は眺めた

エサを必死で食べるねこのことを…




その瞬間はとつぜん訪れた…


ねこがエサを食べ終える

青年は違和感に気付いた


「あれ?鳴かないなー」

「もしかして満腹かな」



予感は的中

ねこは満足そうに自らの足を舐め回す

その光景は美しかった


「きっと自分に懐いてくれただろう」


青年は期待していた

ねこが心を開くことを



野良猫が人間に懐くことなんてそうそうない

でもどういうわけかこの子は

初見で自分にすり寄ってきた


「よーし、遊ぶぞー!」



胸を弾ませていた青年は打ち砕かれる…

そう

ねこはエサを食べ終えるや否や

こちらにそっぽを向けて歩き出した


暗闇の中へ…


〜〜〜



「出逢いに別れはつきもの」

「別れはいつもとつぜんに」



その瞬間は呆気なかった…



ねこは"温もり"よりも"食欲"を選んだ



"青年の勘は外れた"



自分の不甲斐なさに

「クスッ」と笑いながらも

青年は立ち上がり

帰路へ向かって歩き出した…


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