パンク侍、斬られて候(2018年)

画像1 パンク侍、斬られて候は町田康の小説を石井岳龍監督、宮藤官九郎脚本で映画化した作品。挿入曲もいちいちカッコいいですが、何よりもエンドロールのタイトルバックのセンスと、曲がSex Pistolsの「Anarchy in the U.K.」なのも個人的にはテンション上がりまくりでした。
画像2 黒和藩峠の茶屋に突然現れた浪人、掛十之進(かけじゅうのしん=綾野剛)は、最近腹ふり党という信仰宗教団体が蔓延り、民を苦しめているという噂を耳にする。ハッタリ上等の掛は側にいた巡礼の物乞い親子の父親を腹ふり党信者だとうそぶき、斬り殺して立ち去った。自らを超人的剣客と豪語する掛は「自分は腹ふり党討伐の専門家なので、自分を雇え」と黒和藩幹部に売り込み、お抱えの剣客としての職を得た。実は原作者の町田康本人が斬られた物乞い役としてカメオ出演してるんですよね笑。
画像3 黒和藩筆頭家老の内藤帯刀(たてわき=豊川悦司)は掛を利用して同じく筆頭家老で対抗派閥の大浦主膳を失脚させようと目論む。掛の胡散臭いハッタリなど最初からお見通しで、手練手管のタヌキおやじなのに男色の気がある内藤に若干怯える掛(笑)。掛は腹ふり党信者は渦巻模様の入れ墨をしているらしいことを知り、斬った物乞いに入れ墨はなかったことを悪く思ったが、知ったこっちゃない。撮影中にギックリ腰になった豊川さんを剛くんが1時間のロングマッサージをしてあげたらしく、仲睦まじい2人が可愛いw
画像4 ある日、林の中で刺客に出くわす掛。相手は真鍋五千郎という大浦主膳から掛を暗殺すべく雇われた超人的剣客であった。秘技草履返し→受付嬢すっぴんあぐら→助六ちゃぶ台返し→怪奇人間炬燵→睾丸稲荷返し→睾丸稲荷返し返しとか意味不明なプロレス技の掛け合いで「シトゲちゃん?」「ゲラちゃん?」と互いを幼なじみと思い出すシーン、めちゃくちゃ好き笑。新宿スワン以来の共演かしら?プロレス合戦とスピード感ある殺陣がキレキレでテンポ良いです。ふとした瞬間に村ジュンが虹郎のように見えたりして…やっぱり似てるんだな。
画像5 このおじさんは内藤帯刀の策略によってハメられて権力闘争に破れて失脚した、元家老の大浦主膳(國村隼)である。猿回し文化が廃った近隣の屁高村(へだかむら)の村人が悲しんでいるので、猿回しを復活させるためにさるまわ奉行に任命されてしまった笑。
画像6 党首の醜道乱倫才(すどうらんりんさい)が斬首されて滅びた後、実は腹ふり党は既に解散し、存在しないことが分かった。しかし、内藤帯刀は腹ふり党でっち上げプロジェクト(HDP)を命じ、自らでっち上げた腹ふり党を制圧する出来レースを完遂すべく、掛、元大浦主膳の使いである幕暮孫兵衛(まくぼまごべえ=染谷将太)、密偵の江下レの魂次(えげれのこんじ=渋川清彦)の3人を牛逐藩(うしちくはん)に派遣した。
画像7 掛たちは元腹ふり党幹部の茶山半郎(浅野忠信)と取引し、NEO腹ふり党を立ち上げることにした。顔に落書きのような入れ墨のあるアホ面に、掛も笑いを噛み殺すw 日本映画界の雄、浅野が真面目にこの役ww ここすごい好き。
画像8 牛逐藩で牛の世話係をはじめとする雑務をしていたオサム(若葉竜也)は、モノを念力で動かせる力を持つ。乞食同然の身なりで食べ物をくれる主には忠誠を誓うが、頭が悪すぎてまともな生活が送れず、社会的弱者となっている。葛城事件とか、S-最後の警官とか、犯人役多いイメージw 存在感が本当に独特で唯一無二な役者さんですね。
画像9 茶山と取引して腹ふり党の再興をでっち上げ、出来レースを難なく終えるつもりが、腹ふり党信者が思いの外増えすぎてしまう。酔狂のどさくさにまぎれて各地で狼藉が横行してにっちもさっちも行かなくなり、次第に勢力を増すNEO腹ふり党はもはや制御不能となった。
画像10 渦巻模様はサナダ虫を表すらしい。この世は巨大なサナダ虫の体内にあり、信じる者はサナダ虫の体外(真実、新生世界)へ脱出することで救われる。サナダ虫が肛門から信者を排泄する境地を「おへど」と呼び、信者は皆「おへど」を目指す。なんだよ、この世界観www 腹ふり党討伐のために掛と共に派遣された孫兵衛だったが、腹ふり党の魅力に熱をあげ、自ら飛び込んで行った染谷将太はこの映画の中で最もパンクだったんじゃないかと思うほど、弾けっぷりと壊れっぷりがめっちゃイケてました笑。窮地に陥ると気絶するキャラもアホだなあw
画像11 今作品で紅一点のろん(北川景子)は茶山の身の回りの世話をしている下女。その美貌と謎の踊りで民衆を惹きつけ、「ときじくの実は、聖なる恵愚母(えぐぼ)のおへどです!」と、食べれば脳が痺れて快楽が得られるというときじくの実をばら撒いて、腹ふり党の布教活動を行う。特にファンでもないのですが、ほぼすっぴんで謎の踊りをする北川景子が見れるだけで充分観る価値があると思います笑。美しいろんを一目見て惚れた掛だが、ろんにも実はある計略があった。
画像12 思ったより数が多い腹ふり党を見て、黒和藩が抱える兵だけでは太刀打ちできそうにない。そんな中、さるまわ奉行所に出入りしていた一匹の猿が現れる。彼の名は大臼延珍(でうすのぶうず)。彼は人の言葉を理解する能力を持ち、自分なら全国の猿を集めて軍を作れると進言したのだ。このでうすの中の人が名優のあの人なのがまた面白いんですよねw
画像13 スキャンダルが明らかになる前から「演技が…w」とさんざん言われてきた東出くんですが、本作の黒和藩藩主の黒和直仁役と、コンフィデンスマンJPのボクちゃん役にも共通するクソ真面目で正論しかいわないアホな役柄はハマり役だと思います。なんだかんだ憎めないキャラで、私は嫌いじゃないですw そのクソ真面目な殿がでうすを助っ人に起用するなんてホント馬鹿げててオモロイww
画像14 敵と味方の顔の違いを認識できない猿たちも、この紫の頭巾を被っておけば味方と認識して攻撃してこないらしいw こうして紫頭巾を被った黒和藩軍+猿軍団は一丸となって腹ふり党と戦う。全てを終わらせたら迎えに行く!とろんを変粉(待ち合わせの飯処)に向かわせた掛。猿軍団の活躍により、黒和藩は戦に勝ち、掛はろんの元へ。
画像15 美しい笑顔の裏にある、ろんの企みとは?このお話は、実はろんの復讐譚でもあるのですよね。特に内容が深くもない長いストーリーの伏線がやっとここで回収される笑。見事に計略を達成したろん。最後の最後の北川景子の形相と高笑いは見事!下手したら黒歴史と言われかねないこの作品での怪演は、北川景子の懐の広さを感じますし、とても気持ちよくて良かったと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?