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【フェスの思い出】THE 1975@サマーソニック2022 (東京)

イベントレポやライブレポを書くこと自体が3年ぶりになるのだけど、既に1ヶ月弱が経とうとしている2022年8月20日 (Sat)のサマソニで東京会場のトリを務めたTHE 1975のライブについて、思い出が風化し始める前に記しておきたい。

自分は関西に住んでいるけど今年は敢えて東京のサマソニに行った。それはひとえにTHE 1975を今回の来日公演の初日に、来日公演中の一番大きい舞台で観たかったからだった。スタジアム特有の、スタンド席含めて演者をぐるりと囲む構造により生まれる親密さの中で、ヘッドライナーとしての彼らのパフォーマンスを目撃したかったからだった。

自分はデビューアルバムの頃から今に至るまで彼らをリアルタイムで追い続けてきた。単なる「好きなバンド」の枠に留まらない、人生において数少ない「大切な存在」と言えるバンドだ。

彼らは定期的にサマソニに出演し続けてきたことで、ソニックステージのトップバッターを務めた2013年から回を重ねるごとに動員を増やしていき、スタジアムのトリであるB'zの直前に出演した2019年には事件的とも言える圧巻の演奏をぶつけてくれた。これなら次回は遂に、満を侍してヘッドライナ
ーになると確信できたのがその年だった。

2020年に開催が予定されていたSUPERSONICは開催が断念され、仕切り直して2021年に開催されたSUPERSONICの初日はZEDDがトリを務めた。3回以上のサマソニ出演を経てヘッドライナーになるストーリーを実現させたアーティストとしてはマイケミに続き多分2事例目 だった。

(2000年代半ばまでは、フェス文化が定着する前から有名で人気のあるアーティストをトリに呼ぶ流れになっていたと思う。その後、フェス自体がメディアとなってアーティストとファンの繋がりを数年かけて育んでいく流れができていった稀有な例である)

今年と違って緊急事態宣言が発令されており行動制限も設けられていた2021年の9月時点で、ZEDDのプレイを17LIVEの配信で観ているうちに、海外アーティストのライブが日本で観られる機会がいつかまた日常に戻って来ようとしている希望が強く抱けた。そのとき、アーティストとフェスの関係性の中でファンとの絆を深めてヘッドライナーに抜擢されるアクトとしてTHE 1975を観られるタイミングも決して遠くはないと期待できた。

そして2022年8月20日。King Gnuの演奏中から降り続く雨に打たれながら静かに開演を待ち続けた後に、マリンステージにTHE 1975が登場して “If You're Too Shy (Let Me Know)”の前奏が立ち上がって会場が熱気と歓喜に満たされたときには、大袈裟かもしれないけど、ひとつの夢が叶ったと思った。

Vo. & Gt. のマッティ自ら「今日はグレイテスト・ヒッツだ」とMCで語ったこの日のセットリストでは序盤の3曲目から “Chololate” が放たれ、ライブのクライマックスに投下されると予期していた代表曲がこんな早く聴けると思っていなかった僕は思わず嗚咽していた。ステージ背後及び左右のビジョンに映し出されたモノクロの映像もあって、名作映画のハイライトのシーンの中に自分がいる錯覚に陥ったようだった。

その後も、”Happiness”、”Somebody Else”、”I Always Wanna Die”、”LOVE IT IF WE MADE IT” などの名曲が鳴らされるたび、感情が爆発して自我が真っ白になるというか、自分が感情だけの存在になるほどの恍惚感に飲み込まれ、意識を保とうと必死に自分自身に (物理的にも) しがみついていた。

90分のセットリストがあっという間に過ぎ、人生の中でも屈指の良いライブを観た感慨で、雨降りの中を宿まで1人で向かう帰路も、ずっとハッピーな気分だった。

同時に、ひとつの大きなパーティーが2022年8月で終わってしまったことを認めざるを得ない、一抹の寂寥感もよぎった。「初めてのヘッドライナー公演」や「2年半ぶり初めてのライブを東京で執り行う」機会は一度きりなのだから。

だけどこれから自分は、次の、自分にとっての「大切な存在」を見つけていけばいいんだと思うようにした。そんなアクトとの出会いを楽しみにして、来年もサマソニに行きたい。

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