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職場が集団接種会場になった時の覚書

公務員へのコロワク義務化が発表される少し前、2021年当時のNZ政府は感染症に罹ると命に関わるであろう高齢者と障害者を優先に接種プログラムを進めていました。
その頃、まだ養護学校でヘルパーの仕事をしていた私は、同調圧力と静かに戦っておりました。
職場だけでなく、引っ越し時に近所だからと登録しただけで、一度も行った事の無い診療所や病院、歯科医院から、自動送信と思われるSMSがピロンピロンと入り、養護学校スタッフという事で保健省からも直々にメールが来るという念の入りよう。
診療所からはその後何度か電話まで。
マジでしつこかった。

ワクチン接種の優先理由として使われていた「vulnerable(脆弱)」という単語も引っかかりました。
要介護な高齢者や、小児病棟でベッドに横たわる子供たちを連想させる単語だからです。
高齢者の事はよくわかりませんが、障害児・障害者に至っては、少なくとも学校の中に「脆弱」という単語が当てはまる生徒は、22年間で一人も見た事が無いのです。 
いや、むしろ何でもかんでも口に入れるけど一度も病気になった事が無い生徒なら8年間見てきましたw
彼なら最強の抗体を持ってるはずで、ワクチン作るならあの子から作るべきだろwと思ってました。
学校の生徒は、病弱な子はほとんど居なくて、発達障害と知的障害が主で、食事療法を試みている親も多いため、身体的にはめちゃくちゃ健康で元気いっぱいな子ばかりなのです。パワフル多動系多し。

それを「脆弱」とか言われてましても…w
まさか遠回しに知能の事を指してるのかもしれないですが、それはそれでまず人生の先輩方の高齢者の方々に無礼千万すぎますよね。

ワクチンの前にマスクが義務化されてましたが、障害者は免除されていました。身体的(耳が無い等)、精神的に無理強いは出来ないという理由からです。

保健省発行の、マスク免除カード。ご自由にお使いくださいと公式サイトにあったのに、後にまるっと削除され、診断を下した医師しかDL出来ないとか権威主義丸出しの状況に。
消せば増えるの法則で、時すでに遅しだったけどw

なのでパンデミック中でも、うちの学校の生徒はほぼ全員ノーマスクで、トランポリンで飛び跳ね、真冬でも水遊びして全身びしょ濡れという彼らの日常を変える事なく毎日を過ごし、でも誰もコロナ感染で死んでないという現実があったのです。

ビビりまくってマスクマスク言ってたのは、テレビ報道を毎日毎日追っていた大人のみ。

(生徒たちは、幼少時から、プロパガンダの外の世界で生きているのです。)

学校のスタッフルームでは、毎日昼休みになると誰かがFacebookのライブ配信を開き、政府のコロナ会見を聴いていました。
今日の感染者数は〇〇名っていう、天気予報みたいなアレです。
「その数字を聞いて、何がどうなるの?」と聞いた事がありますが、同僚にはスルーされました。

「今日の感染者数、〇〇〇だって!」と、数字を繰り返しながらマスクを整える、同僚の目がギラギラしてて怖かったのを、今でも覚えてます。

アドレナリン出まくってたんだろうなあ…

その後、オークランドだけロックダウンされたり、オークランド沖の島だけロックダウンされたり、そのたびにマスク義務強化のテコ入れみたいな空気が流れていた中、ついにうちの学校が集団接種会場に。

養護学校だから優先されただけなのが、まるで特権のような空気で、もちろんメインは生徒たちなのだけど、一日でも早く接種したいと思い込んでいる大人は大喜びで、この機会を逃すと大変くらいな勢いで、スタッフ用のワクチン接種同意書・申込書が各教室に配布されました。

全員打つ前提で、私の分まで申込書が用意されていたので
「いや、生徒とその家族ファーストだよね」
と、やんわり断ると「なんてもったいない!」と叱られ
「いや、必要な人とか打ちたい人が優先で…」
と言えば、「うちの生徒は脆弱なのだから、移したら大変でしょ!」と非難され、
「え?でも脆弱な生徒なんて居なくない?」
と言っても、「障害児は皆、脆弱カテゴリーに入れられている」の一点張り。
「でもカテゴリーに入れたのは、うちの生徒を見た事も無い、政府の人でしょう?彼らにとっての障害児って小児病院に居る子たちなんじゃないの?」
とも言ってはみたものの、世間よりも一足早く接種が受けられるのはラッキーな事であり、そのラッキー特権を与えてくれているアーダーン政権様に異議を唱える人間は非国民・陰謀論者という空気がすごくて、ああこれが同調圧力ってやつかあと肌で感じながら、それでもそのラッキーなありがたみが理解出来ない、馬鹿なおばさんになりきる事で回避。

先生の中に、普段から自己免疫が云々だから予防接種なんて要らないと唱えているだけでなく、ぶっちゃけ校長よりも資格持ってる、自然療法とヨガ大好き系な人が二人ほど居て、彼らと一緒なら安心と思っていたけど、なんと知らぬ間にスルッと申込用紙にサインしていたと知り、心底ガッカリ+げんなり。

学校が接種会場になった理由は、脆弱設定の生徒とその家族が最優先で、特に自閉症の生徒は普段から医者へ連れて行くのも困難なので、慣れている学校で接種出来るようにすれば、家族への負担も軽減されるだけでなく、その家族も一緒に接種出来て超ラッキーよね~。というもの。実際、喜んでいる親御さんも多かったのも事実。

でも実のところは優先特権と助成金だったんよね… ゲンナリ。

障害児・障害者の場合、同意書にサインするのは親なわけで、本人には判断能力が無いとみなされてしまう。
純粋に注射針が怖いからと嫌がったとしても、あらあら仕方ないわねえでスルーされてしまう。痴呆症の高齢者なども同じかもしれませんが、善意の押し付けの残酷さがモロに出る。しかもその責任は同意書にサインした親や親族に丸投げという…

集団接種の日、私はスタッフとして生徒のサポートをするのが仕事だけれども、ワクチンには個人的に同意していないので、接種会場が設置されたスタッフルームには近寄らず、教室の中でのサポートを続けると線引き宣言していました。我が子に打たせたい親が、同伴すべきだと。
これには学校側も同意し(責任回避)、親の到着に合わせて順番にスタッフルームに入るという段取りになっていました。

ところが、だ。
私が担当していた生徒君(身体・知的障害。電動車椅子)の親がなかなか来ない。生徒君自身は自閉傾向が強く、18歳だけど情緒は2歳くらいで、医者や看護師さんは皆優しいから大大大好きで、お注射の事なんて全く知らないし解らないけど、スタッフルームが大好きな病院みたいになってるのが嬉しくて嬉しくて興奮して、とにかく早く医者に会いに行きたい状態に。

このタイミングで親が来てたら何の問題も無かったのだけど、本人はネコまっしぐらスイッチが入ってしまっているので、もうこうなると「お母さんが来るまで待ってて」なんて地雷にしかならなくて、そして地雷が爆発したら、接種会場に行くんじゃあああと叫び続け、その間に会場から出てきた人物を見つけようものなら、自分より先に行ったなあああと怒り、さらに火に油になってしまう。
生徒君はその問題行動(ただの癇癪で回避可能なんだが)で有名なため、周りの大人もハラハラし始め、ピヨさん、連れて行くなら今よと、どこまでもワク接種最優先思考。ヲイヲイ

じゃあ覗くだけね、お母さんと一緒じゃないと入れないからね、途中誰かにぶつからないようにゆっくりね、と親ーっ早く来いやあーっと心の中で叫びつつ、ウロウロと時間稼ぎを試みるも、生徒君は超ご機嫌+大好きなお医者さんに嫌われたくないから、とってもおりこうさんで慎重に指示にしたがうモードになっており、そんな舞台裏の事情なんて知りもしない看護師が入口で「やあ、次は君の番かな?」と声をかけやがったので、もう付き添いの形でスタッフルームに入るしか無くなった。
同意書にサインしているのは本人ではないのに、本人確認で名前を聞いたり、簡単なワクチンの説明をして同意確認したり。
生徒君は真剣な表情でうんうんとうなずくのみ。
意味は解らないけど、目の前のドクターと仲良くしたいから、全てにイエスと応えてるだけ… なんだこの茶番は。

ドクターが注射器を手に取った瞬間、生徒君の目に恐怖の色が浮かんで、ぎくしゃくとしか動かない手で自分の顔を覆った。
怖いものから隠れようとしている行動である。
私は咄嗟に生徒君の頭を抱きかかえて、隠れるのをサポートしつつ、針が折れないように彼の腕を押さえた。
接種はほんの一瞬だった。注射器が視界から消えたところで生徒君の頭を解放、絆創膏を貼られるのを見せながら、ドクターと一緒に生徒君を褒めた。

心がジクジクと痛んだ。
この子は何も知らないし、解らない。
同意書にサインした親も、何も解ってないし、知ろうともしてない。
この子の腕に針を刺したドクターも、横に居る看護師も、別のテーブルで注射を受けている親子も、待機室で絆創膏を見せ合う生徒もスタッフも、みんなみんな、正しい事をしていると純粋に信じているのだ。

みんなで力を合わせれば、どんな怖い病気にも打ち勝てるってか。

どこのアンパ〇マンの世界観だよ…

待機室に居る大人が生徒たちを出迎える。
「打ってきたの?すごーい!やったね!」とハイタッチしながら接種カードを受け取る。

接種番号をシステム登録するため、接種カードは学校が管理しますと言いながら、カードを集める会計士が居る。

助成金申請のためのクーポン券の束にしか見えない。

待機室の中、スタッフと生徒とその親たちが、和気あいあいと集団ヒステリーを起こしている。

私が咄嗟にサポートしてしまった生徒君も、腕の絆創膏を褒められて嬉しそうにしている。
遅れて学校に到着し、接種を終えた母親が待機室へやって来る。
生徒君はお母さんより先に打ったぞと自慢している。

じゃあ私はランチに行きますねと待機室を出た。

ランチなんて食べられなかった。
ゲートの外に出て、煙草を吸った。

生徒君に何かあったらどうしよう。
今夜どうにかなったらどうしよう。
忘れた頃に発作を起こしたらどうしよう。
不本意にも、サポートしてしまった。
時間通りに来いよ母ちゃん…なんで私がサポートしてんだよ。
生徒君本人は何も解ってないのだから、私がサポートしたのは接種側だ。
不本意だったけど。咄嗟だったけど。サポートしてしまったのだ。

今思い出しても心が痛い。

その後、またロックダウンが始まり、学校も閉鎖された。
ロックダウンの緊張感の中、アーダーン政権はワクチン接種の義務化を推し進めた。

メールとzoomで抵抗は試みた。
宗教的信念により、とか
日本の医療保険の規約がー、とか言いながら、反ワクのレッテルを避けるために、いやいや実はノヴァバックスを待ってるんですとまで言ってみた。
(NZはファイザー一択だったため)
最終的には、
「自分はパンデミックが始まって最初の冬に、インフルとは思えない病気で一週間寝込んでいる。布団から動けなかったのでPCR検査にも行けなかったが、あれが実はコロナだったんじゃないかと思っている。もしあれがコロナであれば、回復した自分は抗体を持っているはずだからワクチンは必要無い事になるし、抗体を持つ人がワクチン接種するのは危険だと信じている。ついてはPCRではなく、きちんとした血液からの抗体検査を受け、抗体があるかどうかを確認したい。抗体が無いのが確認できれば、喜んでワクチン接種をしたいので、どこに行けばその検査が出来るのか、保健省に聞いてほしい」
という、事実に基づいた主張と質問をしたが、保健省からは何の応答も無かったらしい。
実は個人的に同じ内容で保健省にメールを送っているが、もちろんガン無視されたので、今度は雇用先の学校から問い合わせてもらったのだが結果は同じだった。

校長も、労働組合も、学校の評議会も、全くお話にならない事を学習した。
抗議以前の、ディベートも成立しない気持ち悪さ。
素朴な質問も許されない気持ち悪さ。

ロックダウンが解かれた後、ワクパスを持たない私はバイオテロリスト扱いで、学校の敷地に入る事すら違法とされていた。
しょうがないので、溜まっていた有給を消費して欠勤し、21年の年末で契約更新を破棄される形で、22年勤めた仕事を失った。

消化しきれなかった有給がまだ20日分ほど残ってたのも消滅。

とにかくあれもこれも理不尽すぎて、何も信用出来なくなった。

義務化が無くなったから、いつでも帰って来れるわよーと言われるけど

問題はそこじゃあないって理解すらしてない人たちと、もう一緒に仕事はできませんです。

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