神社で写真は撮らないようにしましょう

2021年8月16日 19:10

　張哲瀚さん。不勉強ながら今回の騒動で初めてその名を知ったのだが、27あったスポンサー契約は全て失い、撮り終えた映画からも出演中のバラエティ番組からも放り出されている。

　映画は撮り直しになるから、その費用も請求されるだろうし、収入源は絶たれたしこれから生きていけるのだろうか。

　張哲瀚の「罪状」は、2019年に乃木神社で取り行われた友人の結婚式に参列していたこと、そこに同席していたのがデヴィ夫人とアパグループの代表だったこと、それ以前の旅行で靖国神社を訪れ、記念撮影していたことが挙げられる。

　乃木神社が奉っているのは、旅順虐殺を主導した乃木希典だ。こんな場所はまともな廟宇ではない。（北京日報の微博）

　乃木神社はこういう背景のある神社ですよと、上記のように説明されている。これはいけません。禁忌が増えてしまいました。

　デヴィ夫人のブログによると、東京シティクラブで披露宴を行なったようなので、徒歩数分の距離にある乃木神社で結婚式を行い、その後移動する流れだったのだろう。

　過去が暴かれてからの動きは速かった。13日の午後5時には微博に謝罪文を投稿したのだ。火に油を注ぐような下手な言い訳はせず、ひたすら土下座するのが中国の謝罪だ。

　友人が日本で開いた披露宴に参列した。披露宴が行われた歴史的背景と、披露宴の他の参列者の政治的背景については気付けなかった。これは私のミスだ。

　以前、各地を旅行した際、写真を撮っていたのだが、当地の建造物や歴史への知識に欠けていた。また、写真の内容も不謹慎だった。撮影した写真が中国人の感情を著しく傷つける内容であったことに、ここに深く謝罪する。申し訳ありませんでした。（張哲瀚の微博）

　ただ、今回の件に対して公式メディアの批判は常軌を逸している。

　新華社、人民日報、CCTV、解放軍報、環球時報が披露宴への参列や靖国に近づいたこと、ではなく謝罪文に対して「中国人の感情を害したというのに、寛大な処置を求める謝罪だ」（人民日報）、「『無知だった過去』だけのせいにはできない」（CCTV）と、次々と批判を加えた。

　上記のメディアトップ5に加え、中央紀律検査委員会（中紀委）までが批判を加えている。最近は党員と公務員以外にも手を出すようになったようだ。

　中紀委の批判は「知らなかったでは済まない」、「靖国神社で嬉々として写真を撮って、民族の基本的な自尊心を保てるのか」と、非常に手厳しい。

　また、張哲瀚事件を教訓として、「品格も芸も高めなければならない」、「最低限の政治的・法的ライン・道徳的ライン・歴史的ラインを守る必要がある」、「ラインを超えたものは罰を受ける」と、他の芸能人にも警告を飛ばしている。

　有名人であるがゆえ、影響力も大きいからというのは理解できなくもないのだが、これでは今後有名人はオフに下手に日本へ行くこともできなくなるのではないか。

　先月に披露宴の件で指摘があったようだが、その際はマネジメント側が「いわれのない中傷には法的権利を行使する」と強気の姿勢だった。たったの1ヶ月でこれほど局面が変わるのは信じがたい。

　ちょうど8月15日が目前だったので、キャンペーンに好都合だったのだろうか。叩けば「ホコリ」が出てくるのは確認済みだっただろう。

　2018年の国慶節（建国記念日）当日には、祖国の建国を祝いながら写真は日本で撮影されたものを使うとか、クリスマスを日本で祝ったとか、過去の「罪状」が次々と掘り返されている。

　頭が足りない子というより、今年ブレイクした自分の人気に本人の意識が追いついていなかったというところだろう。

　この手の問題に対して、スポンサーの逃げ足は早い。張哲瀚が謝罪を微博に投稿した8月13日に、契約を結んでいたスポンサー27社すべてが契約を破棄すると発表した。

　今年ブレイクした人なので、どれもこれも今年から契約を結んている。タサキ（田崎真珠）は8月2日に契約を発表したばかりだ。

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　コカコーラやグリコのように、単に契約解除をアナウンスする企業もあれば、ワハハやANKERのように中国企業としての矜持を見せる企業もあるが、謝罪から4時間で全ての企業が契約を打ち切ると発表した。この速さは打ち合わせ込みだろう。

　とはいえ、中国演出行業協会名義で張哲瀚を使わないよう声明を出させるなど、罰にしてはキツすぎないか。キャンペーンでここまでされると、流石に浮かばれない。

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