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エアラインパイロットの日常

こんにちは、あらいぐま機長です。以前のnoteでエアラインパイロットのスケジュールについての話をしました。今日はそれに関連してパイロットの日常についての話をしてみます。

日常と行ってもオフの日の使い方は人によって違います。しかしスケジュールのnoteでも説明しましたが、パイロットは月の3分の1前後は家に帰れず、ホテルで泊まることになります。ホテルが第2の家になるということですね。これによって普通の会社員とは日常生活が大きく変わることになります。いいことも悪いこともあるのですが、多分悪いことの方が多いですね。それについても詳しく話してみたいと思います。

またパイロットといえどもインドア派の人もいるし、アウトドアが好きな人もいます。滞在先では食料品の買い出しを除いて一歩もホテルの部屋から出ないなんて人もいるし、時間があれば小旅行に出かける人もいます。

他のどの職業とも同じように、パイロットも人によって全く生活は違いますが、どのようなスタイルになりやすいのか、パイロットの生活ってどんなものなのか、なるべくイメージしやすいように説明してみます。

パイロットのスケジュール

前回使用した架空のスケジュールをもとに説明していきましょう。
お休みの日や仕事以外の時間帯でどういう生活スタイルになりやすいのかというと、ポイントはこの5つだと思います。


これらについて理解すれば大体パイロットの日常がどうなっているのかイメージしていけるのかなと思います。

①あまり家にいない

まずはスケジュールを見てわかるように、パイロットは家にいることが比較的少なくなります。
このスケジュールでは泊まりのフライトが少なめになっていますが、実際には僕の場合だと月に10日前後、フライト先のホテルで泊まります。つまり、月の3分の1前後は家に帰れないということです。

すると独身の人であれば恋人や友人と会うチャンスが減ってしまうし、仲の良い友達と遊んだり飲みに行ったりすることも難しくなります。家庭持ちの人であれば家族と会える時間が減ってしまいます。子供が小さい時に家を空けることが多いので、奥さんは苦労しますね。

じゃあフライト先のホテルはどんな感じなのか、みんなどんなイメージを持っているかな?
煌びやかなホテルでさぞかし快適に過ごしているのかと思う人もいるかもしれませんが、実際はそんなことはありません。

パイロットが泊まるホテルは会社が契約しているので自分で選ぶことはできません。
国内では普通のビジネスホテルが多いです。昔は航空会社がお金をたくさん持っていた時代もありもう少しいいホテルに泊まっていたようですが、今は経費削減のため、不要な贅沢は許されないってことでしょうか。
でも海外だとビジネスホテルって概念がないところもあるので、結構いいホテルに泊まれたりします。

僕は狭い部屋でも全然気にならないんですが、やっぱり海外のホテルは衛生面とかが日本の基準とは違うので厳しいものがあります。お腹の弱い人はシャワーの水を飲んだだけでお腹を壊したりする国もあります。

いつも同じ家ではなく、世界のいろんなステイ先のホテルに泊まるのは楽しいことでもありますが、旅行に行っているわけではなく、次の日にフライトがあればゆっくり休まないといけないし、僕はあまり出先で小旅行はやりません。初めて行く街なんかは目新しくて新鮮だけど、何度も同じところに行くので飽きてきて、結局はいつも同じところで食事して、お気に入りのジョギングコースを走ったりしておしまいってのが最近の僕のルーティンです。

こんなスケジュールだから趣味も限られてきて、集団でやるスポーツや毎週同じ日に行う習い事なんかはやりづらくなります。毎月休みをとってサッカーをやっている人もいますが、少数派かなー。
逆にパイロットは健康に気を遣っている人が多いので、1人で出先でもできるジョギングやジムに通っている人は多いです。

②土日休みではない

みなさん知っての通り、一般の仕事では月曜日から金曜日の平日に働いて、土日休み。また祝日やお正月もお休みという人がほとんどですが、パイロットはシフト制のスケジュールであるので、休みの日も毎週バラバラだし、お盆やお正月はお休みを希望する人が多いのでなかなか休みを取れません。

しかしこれはいい面も悪い面もあって、都心に住む人であれば土日はどこへ行っても人が多くてディズニーランドの待ち時間も物凄いことになっていますが、平日に休めるとこの混雑を避けられます。

ゴールデンウィークもありませんが、その分のお休みを自分の好きな時に取ることができるので、空いている時期にまとめて休みをとって旅行に行く、なんてこともできます。

またこれは航空会社に勤める人の特権ですが、会社の福利厚生で自社の飛行機は無料だったり安く乗れたりするので、旅行は安くて空いてる時期に飛行機代はタダで行くことができます。

旅行が好きな人にはこれはたまらないですね。しかしこれはパイロットだけの特権ではなく、航空会社社員ならばみんな自社便の優遇を受けることができます。

しかし子供が大きくなってくると子供の学校は土日休みなので、子供と遊んであげられる時間は他の仕事よりは少なくなると思います。いいところも悪いところもありですね。

③職場での繋がりが割と薄い

職場でのつながりが薄いと書いてしまいましたが、決して雰囲気が悪いということではありません。
しかし他の職場と比べて同僚や上司、部下と一緒に過ごす時間は絶対的に少なくなります。

なぜなら同じ会社内で数百人、大きい会社では1000人を超えるパイロットが働いていますが、その中で仕事をするのは機長と副操縦士、2人っきりです。日帰りから3泊程度のフライトパターンがありますが、この間同じペアで仕事をするので、僕、あらいぐま機長が1ヶ月に会う副操縦士は5人前後です。1000人ものパイロットがいるんだから、1度一緒に仕事をした人とはその後何年も会わないなんてこともざらにあります。

でもこれはいいところの方が多くて、どんなに嫌な人と当たったとしても、3日間我慢すれば終わりです。
少なくない数の会社員が上司とソリが合わなくて悩んでいることを考えると、気楽な仕事ですね。
人間関係で悩まなくていいというのは、かなり恵まれているといえます。

④パイロットとして結構勉強しないといけない

はい、勉強することがたくさんあります。

パイロットになるための訓練についてはまた別のnoteで紹介したいと思いますが、パイロットになった後でもパイロットはずっと勉強し続けなければなりません。

それにはいくつか理由がありますが、大きなものでいうと『チェック』『機長昇格』の二つがあります。

まずはチェックについてですが、パイロットはその技量が維持されていることを確かめるため、毎年1回ずつ、路線でのノーマルオペレーションの審査とシミュレーターを使って、飛行機のエンジン故障などの緊急事態にも生還できるかの試験を受けて合格しなければフライトを続けることができません。
まさしく進退を賭けた試験を毎年行わなければならないので、この時期になるとみんな一生懸命勉強します。

赤ちゃんあらいぐま機長

そしてもう1つ、子供のあらいぐま、もといコーパイロット、副操縦士にとっては経験を積んだ後には機長への昇格試験という壁が待っています。
これがかなり大きな壁で、今まで勉強してきた知識、操縦能力、飛行機、そしてチーム全体のマネジメント能力など、飛行機の最高責任者としての総合的な能力を持っていないと機長になれません。

やはり毎日コツコツと勉強してきた人が実力をつけて行くので、パイロットは常に勉強を続けなければなりません。お客さんの命を預かって飛行機を飛ばすんだからそれくらい当たり前なんだけどね。

⑤めちゃくちゃホワイト

パイロットには『月に100時間までしか飛んではいけませんよ』とか、『1日の仕事は13時間前後までにしてください』と航空法や諸規定で決められているので、働きすぎで体やメンタルを壊すということはほとんどありません。

飛行機が遅延した場合とかには残業もやむなしですが、サービス残業はあり得ません。
またそれでフライトタイムや勤務時間が上限を越えてしまった場合には必ず他の日のスケジュールを代休としてもらえます。

最近は世界中で『パイロットの疲労管理』について注目されていて、国の定める規定でもパイロットはフライト前に8時間とかの睡眠が取れるようにスケジュールの作成には配慮しなさいよ、なんてことまで決められているんですよ。

実際天気の悪い日とか機材不具合に当たってしまった日は疲労困憊で仕事を終える…ということもありますが、しっかりと休む時間が確保されているので疲れがどんどん溜まっていくということは基本ありません。

人間関係も③で説明したように固定した上司と仕事をする…ということがないので、精神的にも楽な仕事だと思います。これはパイロットの仕事のいいところの一つですね!

最後にですが、色々言ってきましたが、やはり人によって日常は全然違います。
家族のいる人といない人、インドア派の人とアウトドア派の人、勉強をする人としない人、お金遣いの荒い人と倹約家、程度もあるし人それぞれ違います。しかし、みんなが思っているほど煌びやかな毎日を過ごしているわけではないことは間違いないと思います。給料も実際にはそんなに多くないしね。

今日はここまで!また次回をお楽しみに!

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