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豊かな保育環境をみんなでつくるためには──「新自由主義保育からの脱出」事前レポート

 楽しくて、豊かな生活のためになる心理学を考え、実践していく。
 その一環として、ほんのちょっとかもしれないけど、とっても大事な変化のきっかけになるようなイベントを企画する。
 次回イベントは2023年10月21日(土)14時から「新自由主義保育からの脱出──豊かな保育環境をみんなでつくるためには」と題して開催します。
 本noteでは、荒川出版会メンバーがイベントの事前レポートを公開します。レポーターは、今回イベントの登壇者の北本遼太です。

「新自由主義」、「保育」、「保育環境」、「脱出」…。
 聞いたことはあるけどコムズカシイ単語が並んだ、とっつきにくいイベント名だと思われるかもしれません。

 でも、このイベントでは皆さんの(保育者の方や子育て中の方以外も!)生活やお仕事にとても深く関わる話が出来ると確信しています。この事前レポートでは、とっつきにくいイベント名が実は日常生活とリンクしていることを出来る限りコムズカシイ話は抜きにお話ししたいと思います。

 それではテーマとなっている新自由主義とは何か?
 いろいろな人が様々に議論している概念なのですが、そもそも心理学的にはミシェル・フーコーが主体性や統治を議論する際に…。

 というコムズカシイ話は置いておいて、簡単に言えば(フーコーはじめいろいろな人、ごめんなさい)、「商品を安く買って高く売る」という市場での売り買いの考え方をあらゆる生活での基本ルールとして設定するスローガンのようなものだと言えます。

 そして、このスローガンはとても巧妙に(自分たちですら気づかない形で)私たちの生き方を方向づけていきます。例えば、皆さんは、コストパフォーマンスとかタイムパフォーマンスをまったく度外視して生活できますでしょうか? 少なくとも私は気づいたらいつの間にかコスパやタイパにとらわれていることがあります。

 なにも採算を考えず無私の精神だけで生きるべきだという道徳を説きたいわけではありません。おそらく問題なのは、このスローガンがあらゆる生活場面に浸透し、コスパやタイパを追い求めることに私たちを忙しくさせ、考える余裕がなくなっていくことだと思われます。

 この新自由主義の問題がよく現れている業界の1つとして「保育」があります。保育者の業務の多忙さは皆さんもご存知だと思います。例えば現役保育士の「てぃ先生」は、保育業界の問題の多くは業務量の多さに基づく余裕のなさから生じているため、その改善には業務量の削減が必要だと言っています。
出典 https://digital.asahi.com/articles/ASQ98652VQ98UCVL01J.html

 では、この多忙さや余裕のなさはどのように形作られるのでしょうか? イベントでは,蓑輪明子さんに具体的な保育現場の様子をお話ししてもらいながら,多忙さが生まれる背景を読み解きたいと思います。

 なぜ書類仕事が多いのか? いわゆるブルシットジョブはどうやって生まれてくるのか? 長く勤務できる職場環境ってどんなものなのか? 
 蓑輪さんのご発表を受けてみんなで考えていきたいです。

 また、考える余裕のなさは実際に働き始めてからだけの問題ではありません。私は保育者養成校で働いていますが、そこでみている学生さんたちは、保育者を目指す学生時代から、授業や実習、学校行事、学費のためのアルバイト、就職活動といった「やるべきこと」に追われています。教員として、じっくり考える時間を作ってあげたいと思っていますが、忙しさを理由にそれが難しくなっている現状に歯がゆさを感じています。ちなみに、この葛藤については少しだけ「新自由主義教育からの脱出」のあとがきでも触れています。

 とはいえ、問題や困っていることばかりを話していても良くはならないですね。イベントの後半では、「現状をもとにどのように改善できるのか?」という問いに対する「正解(仮)」を自由に、時に脱線しながら、探っていきたいと思います。

 当日は会場に足を運んでいただき一緒に考え議論しませんか? オンラインのチャットで議論にご参加いただくのも大歓迎です!

申し込み https://ap231021.peatix.com/


蓑輪明子×北本遼太「新自由主義保育からの脱出──豊かな保育環境をみんなでつくるためには」

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