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はじめてピアスを開けた日

そうだ、ピアスを開けよう。大学一年生の春休み、大学の長い休みに退屈して、毎日だらだらと過ごす自分に嫌気がさして、この状況を変えるための解決策がピアスを開ける。なぜそうなったかは今考えてもよくわからない。

開けようと決めたその数時間後には新宿にある美容外科を予約した。自分で開ける勇気はなかった。 

受付で名前を伝えると、マッキーを渡され、

「あちらの鏡で開けたいところに印をつけてください」

いやここ待合室なんだけど。もちろん私が耳に印をつけている所をほかの患者さんにも診られてしまう。
なんだかちょっと恥ずかしくて、適当なところに点を書いた。

しばらくして名前が呼ばれて、診察室のような場所に行くと、看護師さんが
両耳の点が左右対称になっているか、定規で図って書き直してくれた。ちょっと安心。

さていよいよピアスを開ける。でっかい銃のようなものを持ってきて、私の耳にそれを構えた。ほっぺの左半分だけだんだんと熱くなってきた。怖い。怖い。
 
「もう準備は出来てるんでいけそうならいけますと言ってくださ~い」
ここで躊躇したら一生開けられなくなる。私は看護師さんにそういわれた瞬間、すぐに
「いけます!!」

バチン

左耳が心臓の動きに合わせて痛い。けど痛みよりやった、開いた!という嬉しさのほうが勝っていた。
右耳はすんなりと終わった。

帰りの電車では、私の頭の中はピアスでいっぱいだった。
ピアスを開ける、という恐怖に打ち勝って、なんだか強くなった気持ちだった。
電車で座っていると目の前にJK4人組が座ってきて、

「最近ピアスが膿んできて痛いんだよね~」
「わかる~私もピアス軟骨の痛すぎ」
「そういえば下北でピアスめっちゃ安いお店見つけた」
「え、今度行かん?次土日部活?」

うんうん、そうそう、ピアスって痛いよね。部活?私は平日もずっと暇だけど。
勝手に心の中で会話に参加していた。

家に帰って鏡の前で自分を見る。顔の両サイドがきらっと光る。
可愛い。スマホの画面に反射したピアス。可愛い。

次の日は髪を耳にかけてスタバで勉強しに行った。
いつもはフラペチーノを頼むけれど、今日はスターバックスラテ。
ちょっぴり大人になった気がした。



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