まーごっこ

僕が幼稚園の頃、初めて父親に教えてもらった遊びがある。
"まーごっこ"というものだ。

"まーごっこ"とは歩道を歩いている人や、自転車に乗っている人に対して車の中から
"まー"!と叫ぶというものだ。
そして、歩行者や自転車に乗っている人の反応をサイドミラー越しに見るというなんとも品のない遊びである。


僕はこの"まー"ごっこが好きでよく父親と一緒にやっていた。

"まー"ごっこにはいくつか注意することがある。

1つ目は、"まーーーーーー"とのばさないこと。まー!と短く、きれ良く言ったほうが反応がいいからだ。

2つ目は凝視しないこと"まー!"と言ったらすぐ前を向き、反応は必ずサイドミラー越しに見ること。

この2つのルールを守って僕ら親子は楽しでいた。

歩いている人は立ち止まってキョロキョロし、自転車に乗っている人は降りて、ギョッとしていた。

今にして思えばかなり危険な遊びである。自転車に乗っている人がビックリして転倒した場合はどう責任取るつもりだったのか。
僕が親なら絶対子供には教えない。と思う。

ふとそんなことを運転中に思い出し、なんで"まー"だったのかなどいろいろ考えていたら、中学生ほどの男の子が自転車を一生懸命こいでいた。

少しばかりためらいはあったが、
そっと窓を開け、思いっきり"まー!"と叫んでみた。

サイドミラー越しに彼を見ると目を丸くして驚いている。
大成功だ。僕は笑顔でスピードを上げて逃げようとした。信号が赤だった。

目の前の横断歩道を彼がこっちを睨みながら渡っている。

この街に居づらくなった。

親に言ったら"まー"と言われるかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?