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新型コロナの「戦中と戦後」(3)~4年間の新聞切り抜き記事に見えたもの

 新聞の切り抜きのなかから、農政の記事の棚卸をしながら新型コロナウイルスの「戦中と戦後」をまとめた3回目です。
■2023年はコロナ5類も花粉症猛威
 コロナ並みに国民経済を停滞させているのが国民病といわれる花粉症です。23年1月15日の日本農業新聞社説には「過去10年で最多、対策を」と促しています。
 すでに林野庁は花粉の少ない苗木の開発や広葉樹への植え替えを進めていると記事にありました。2032年度までに無花粉や花粉の少ない杉苗木の生産量を7割にまで増やす目標を掲げています。
 面白い記事を見つけました。23年3月30日の農業新聞です。「スギ花粉米」は今どうなったかという調査報道です。スギ花粉米は、2000年に研究開発に入り、遺伝し組み換えにより花粉症の原因物質の一部をお米の胚乳に組み込むというもの。結論から言うと、「現時点では実用化の時期は未定」(農業生物資源研究所=現農研機構)。新型コロナが5類に移行しても、マスクは手放せません。
■半導体と農業
 23年ごろからメディアの話題に上ったのが熊本県菊陽町。半導体受託生産で世界トップの台湾TSMCが工場進出するところです。
 農業新聞1月30日社説で、農業との両立が大前提と訴えていました。TSMCは世界的な半導体不足を受けて日本政府が肝いりで進めてきた誘致事業です。工場建設の助成金は最大4700億円で、国産ジェット復活を目指したものの失速した三菱スペースジェットへの拠出額よりも圧倒的に多い助成額に意気込みを感じます。
 その一方で、社説は指摘します。熊本県によると、新工場の取水量は、熊本市や菊陽町など熊本地区11市町村で農業用に採取された地下水の26%にあたるとのこと。
 農地の多くは原則として転用できない「農業振興地域」に指定されている。しかし、半導体特需で、企業から農業委員会に農地転用を求める相談が相次いでいるという。
 思い出しました。愛知県知多半島でも産業道路の工事が進み、農地が失われているのです。小さな玉ねぎ「ペコロス」の集積地でも農地が減っていることをnoteで書いていました。
 高度成長期は工業の「一本足打法」でもよかったでしょう。山にたとえれば富士山型です。いまは農産品の国産化を進め、食料自給率を上げていくコンセンサスが生まれているときです。観光業など農業以外の産業も含めた八ヶ岳のような頂がいくつもある産業構造が望ましいのです。
■愛知農業で活発な動き
 長靴をはいた記者の取材フィールドである愛知県では、コロナ禍の停滞を打ち破るように明るい話題が続きました。
 1月にはJAあいち中央(安城市、碧南市など)がJA全中主催の2022年度JA広報大賞で最高位に輝いたことが農業新聞で報道されました。高い評価を得たのは、22年夏の明治用水頭首工の漏水事故での広報対応。用水の受益エリアとして広報と営業部門が連携して事故情報を共有し、マスコミ各社からの問い合わせに迅速に答えるなど臨機応変な「危機管理広報」を実践したことです。
 4月からはJA西三河で「日本をリードするJA西三河いちご部会におけるスマート農業実証コンソーシアム」をスタートさせました。コンソーシアムは、国立研究開発法人・食品産業技術総合研究所や明治大学など12機関が参加し、2025年3月末まで続きます。
 情報技術(ICT)を使ったキュウリの単位面積当たりの収穫量増大など実績を生かし、イチゴへのヨコ展開を進めるプロジェクトです。キュウリの成功事例を取材してnoteでも紹介しているので、今後に期待をしています。
 イチゴ生産量で全国第4位の愛知県。この年デビューした「愛きらり」はクリスマス商船に向けて順調な滑り出しをみせました。農業新聞12月2日には「大玉高単価」とあり、県内の大手スーパーは「県産イチゴの平均単価より上の価格帯で売っていきたい」とコメントが載っていました。
(2024年4月2日)

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