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【カザフスタン】イシク・クルガン

場所:エシク、アルマトイ州
時代:紀元前4~3世紀

イシク・クルガン
イシク歴史博物館

イシク(エシク)・クルガンは、アルマトイ市から東へ約50kmのところにある、インド・ヨーロッパ語族の古代遊牧民スキタイの一支族であるサカ族の墳墓群で、紀元前3世紀ごろに建造された。「サカ」というのはアケメネス朝ペルシアの呼び方で、同時期のギリシアのヘロドトスの記録では「サカイ」、中国では漢書西域伝で「塞」と記録されている。発見の経緯は、この地にある40基ほどの墳墓は過去に盗掘されていたため、副葬品などの遺物はほとんど残っていないと思われていたが、1969年になって周辺の工事中に偶然未盗掘の墓室が発見され、当時のソ連の考古学者によって発掘、発見されたのもである。そのうちのひとつの墳墓からは、約4,000点にのぼる黄金の装飾品が出土したが、これらは埋葬された若者を着飾っていたもので、今日では「黄金人間(Golden man)」として知られている。

イシク歴史博物館入り口と案内板
右下:韓国との共同研究がされている記念碑
イシク歴史博物館の黄金人間 (複製)

一般的には「Golden man」と呼ばれていて、16~18歳くらいの年齢で埋葬されたことがわかっているが、この若者が男なのか女なのかは未だ不明らしい。この黄金人間を模った複製品は、ここイシク歴史博物館だけでなく、アルマトイのカザフスタン国立中央博物館やその他国内の多くの博物館でも展示されている。出土した本物の黄金人間は、現在はカザフスタンの国家保管庫に厳重に保管されている。アルマトイの中央広場にある独立記念碑の上にも黄金人間の像が立てられており、カザフスタンの象徴となっている。

イシク歴史博物館の黄金人間騎馬像

カザフスタンではこのイシクの黄金人間だけでなく、他にも西カザフスタンの黄金の女性、アティラウ地区のクルガン・アラルトベ、東カザフスタンのシリクティ黄金人間、カラガンダ地区のタルディ2の埋葬地、アスタナ近郊の黄金人間、と5つあるらしいので、いつか訪れてみたいと思っている。
実は帰国して調べるうちにわかったことだが、クルガンからは同時に発見された銀の器もあるらしく、これには解読されていない独自の文字(スキタイ語?)で碑文が記されているらしい。どこにあるのかわかれば、実物を見たいと思うが、もし黄金人間とともに政府の保管庫で眠っているのなら無理かも…。

発掘されたイシク・クルガンのひとつ

イシク歴史博物館では館内の展示物以外に、柵を越えて屋外に出れば実際にクルガンを見ることができる。ただし広大な草原に点在するクルガンを間近で見たいなら、数キロは歩かなければならない。遠くから見るとただの小山にしか見えないが、近づくと盗掘跡の窪みや、発掘され二分されたクルガンを見ることができる。しかし古墳を見るために、凸凹の歩きにくい草原をひたすら進むのは、よほど興味がないとできないと思う。博物館でも訪れる人は、恐らく課外学習であろう子供たちと、すぐに帰ってしまうツアーの団体以外、個人で訪れる人はほとんどいないし、ましてや野外のクルガンまで歩く人は私以外皆無だった。

宗教的な意味合いを持つ?、地面に石で描かれた文様

今回行ったカザフスタンやキルギスタンでは、他の人の旅行記をみると、ミニバスなどの公共交通機関を使って安く行ったというものが多いが、私のように多少お金がかかっても、効率重視で限られた時間を有効に使いたい者もいる。しかも私にはこの両国では、レンタカーは無理だった。というのもアルマトイにしてもビシュケクにしても、町中ではクラクションをけたたましく鳴らす車が多く、歩行者も青なのに車にせかされて横断歩道を急いで渡らなければならないくらいだった。一方郊外では、猛スピードで運転していて、しかも日本ではスマホ見ながらの運転は厳しく取り締まられているが、ここではスマホ見ながら、または通話しながら運転している人が本当に多い。よって現地の送迎サービス(運転手付きレンタカー)の車で移動したが、この運転手も同じだった。送迎サービスの利用方法は、数日前にスマホアプリのWhatsAppで担当者にこちらの予定を伝え、価格を尋ねて納得すれば利用するシステムで、ちなみにイシク・クルガンを訪れた当日のスケジュールは、アルマトイ市内のホテルを朝9時に出発して、エシク(イシク歴史博物館とクルガン)と、景色がすばらしく美しいイシク湖を周り、3時前にホテルに帰着したのだが、車代は約16,500円だった。カザフスタンの物価を考えると高いと思うが、時間を買ったと思えばいい。今回の投稿では、イシク・クルガンとそこで発見された黄金人間について書いたが、博物館では他にも遊牧民の文化遺産が展示されていたので、また別の機会に投稿したいと思う。

イシク・クルガンと歴史博物館の位置 (エシク)

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