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曲がり角の向こう

山国育ちだから、空との境界にはいつも山がある。そして、盆地を作る近隣の山というのは空想的なものではないので、山の向こうというのが現実感を伴ってインプットされてきたように思う。だが、どこまでも平地が空の方へ伸びる場所や、海の前に立つ時、地平線(水平線)の向こうというのはかなり想像的な場所であるように感じる。

地球が球体であることを知らされながら、緩やかなカーブを描く地(水)平線の向こうには、ときめく別の時間があるように感じられたもの…。太陽が昇ってくる、太陽が沈むその場所は、“幸い“が住む場所であると憧れを抱くのであった。

曲がり、曲線というものに惹かれる理由もそこにあるかもしれない。円曲のカーブが描く境界は、こちら側とそちら側の分岐点であるばかりでなく、何かしらの存在の根源的な秘密を内包する。そんなふうに感じる。

だからいいのだ、目の前のリンゴやミカンの曲線、内と外以上の時間の秘密を閉じ込めた扉はそこにあり。テーブルに置いておくと、色を放ち匂い立つ時間から、あの曲がり角の向こうの、風が吹いてくるのだ。


#エッセイ   #詩    #現代詩

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