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バリアの中に存在するもの。

阪神淡路大震災が起きた早朝
白々と明けてきた空からは、雪の様な灰が降っていた。
電気、水、ガスの全てが止まる。
有難いことに古いマンションは、地盤が硬い所にあったため無事だったが、仄暗い部屋の床では、醤油、ハチミツ、青海苔等が入り乱れて、お祭りをしている。
1日かけて部屋を片付ける。

あぁ… 自宅のから約1時間チョイの所の大阪の事務所は無事だろうか
…気にかかる…

行ける道を探るが、交通は全てストップ。
ここまで鉄道は動いていない…
ここまで道路は遮断されている…

8日後ようやく北回りのルートから大阪に行く道が開けた!
鉄道の乗り換えが繰り返される。
雪が積もる中で2時間ほど立ち続け、やっと乗れた温かな電車の中で
満員の乗客達が、見知らぬ顔でも安堵し、わさわさと話をし始める。
宝塚に近づくにつれ…家々が傾き、壊れ、青いテントが目立つ様になると、車内はシーンと、静まり返った。

8時間以上をかけて、大阪に到着。
愕然とする…

電気が煌々と輝き、背広を着た人々が普通に行きかう。
まるで巨大なバリアを抜けた様だった!

多くの人々が急ぎ足で歩く大阪からは
給水車の到着を寒い校庭で、蚊取り線香の様にグルリと並ぶ人々の姿は
微塵も想像できなかった。

バリアは見える側が声を上げないと、見えない側には伝わらない事を知った。でもバリアが見える側も外の世界を知らない…
バリアフリーって難しい…


ここで生る
今尚バリアの中にいる人々を思う…

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