見出し画像

結婚したらストライクゾーンが広がった話



もともとのストライクゾーン

私は2019年に夫と交際をはじめ、2022年に結婚した。
私を絶対に傷つけなくて、
可愛くて面白くて仕事も家事もできて、
私にはもったいないくらいのできた夫である。
好きになってから4年経った今でも私は夫をとても愛している。

というのは前提として、表題の通り、
結婚してから私のストライクゾーンが広がるという現象が起きている。

私はジャルジャルの後藤が一番好みのタイプで、
ぱっと見で「イケメン」とわかるワーキャー言われやすい男性よりは、
地味で素朴だけどよく見るとかっこいいかもしれない、
くらいの男性がタイプである。
服装も髪型も、
変ではないが無頓着なゆえにシンプルで素朴なスタイルになっている、
くらいが好きだ。
(もちろん夫もしっかりそのタイプだと思う)
ストライクゾーンど真ん中がこのタイプなのは中学の頃から変わらない。

ストライクゾーンの広がり

眼科の黒髪マッシュイケメン

ところが数か月前眼科に行ったときに、不覚にも、
今まで何とも思っていなかったタイプの男性にときめいてしまった。
彼は肩幅がしっかりあるタイプの細身で、
180センチ半ばはあろうかという高身長、
黒髪マッシュの重い前髪の下には二重のぱっちりした色素の薄い目、
白い肌にふにゃふにゃ気味の柔らかな話し方、
年は恐らく20代前半~半ばで私より年下、
あとはマスクで隠されていたが明らかな「イケメン」、
これまでワーキャー言われる人生を送ってきただろう、
と思われる男性だった。
私はコンタクトを作りに行っていて、
彼がコンタクトを処方するまでの視力検査や試着を担当してくれた。

私は陰キャ特有のイケメンに対する劣等感というか気後れがあり、
なんとなく緊張してボソボソと愛想の悪い受け答えをして、
最初は「早く終わらないかな」と思っていた。
だが数十分患者として誠実に対応してもらううちに慣れてきて、
お互い笑い合う瞬間も生まれ、
「…この人めちゃくちゃかっこいいのでは」と素直に思い始めた。
検査でまぶたを優しく持ち上げられたときなどは
「触られている…!?」と軽率に脈拍をあげていた。
(自分が丁重に扱われていると実感してから素直になるのは
今思うとダサすぎキモすぎで、だから陰キャなのだ、
と思うが本題から逸れるので一度目をつぶることとする)

ダイビングの色黒ガチムチおじさん

また以前、沖縄で体験ダイビングをした際も、
これまで気になったことがない男性のタイプにときめいてしまった。
彼はダイビングのインストラクターで、年は恐らく40代前半、
よく日焼けしていてお腹は出ていてぱっと見ぽっちゃりしているが、
筋肉も隆々でいわゆるガチムチ。
気さくに優しい口調で話しかけてきてくれるが
「スタイルめっちゃいいよね」「金持ってんな~」など、
若干俗っぽいというか、
会社の嫌いな人に言われたら「コンプラ的にギリっすよね、今の」
とか思ってしまいそうなところに突っ込んでくる。
なんとなくダイビングにもチャラいイメージがあり、
どうせいつも元気で明るい可愛いギャルに囲まれてるんでしょうね、
明らかに芋くさい陰気くさい愛嬌もない女が来て悪うござんしたね、
と陰キャらしい偏見と無駄な自意識で、最初私の心は半開きくらいだった。

だが沖縄の海は素晴らしく、
水深12mの青くて美しくて少し怖い世界は
私の心をこれでもかというほど全開にした。
今でも潜って見た光景は忘れられないし、また沖縄に行って潜りたい。
そして、
あのインストラクターにもう1回手を引っ張ってもらって、
彼の指示について泳いでいきたい。
もう1回私の潜りとスタイルをお世辞でもほめられたいし、
じっと顔をのぞきこまれて細かく確認されるのもまた良いではないか。

そう、ダイビングの思い出に浸るうちに、
なぜかインストラクターへの気持ちも大きくなっていたのである。
呼吸ができない水中というシチュエーションでの吊り橋効果なのか、
美しい沖縄の海の思い出とともに
気さくな色黒40代男性を勝手に美化しているのかはわからないが、
とにかく色黒ガチムチで気持ち悪いくらい優しい年上男性も悪くないわね、
という気持ちに今はなってしまった。

ストライクゾーンが広がったのはなぜか

ということで、
もともとのジャルジャル後藤系素朴地味シンプル男性だけでなく、
今まで守備範囲外だったまっとうなイケメンや色黒ガチムチ海おじさんにも
ワーキャー言える女になってしまったのである。

なぜ、私のストライクゾーンは広がったのか。
私は、
「結婚によって外付けの強固なストッパーが付与されたから」
だと解釈している。

自分で2人の男性との出来事を書き起こしていて改めて自覚したが、
私は人間関係においてとても臆病で卑怯者である。
相手を見ているようでほぼ自分の気持ちしか見えていない。

だから、「ちょっといいかも」と思える男性に会っても、
「もし相手を好きになったら、相手は自分を好きになってくれるのか」
「相手はどうせ私のことなんて下界の生き物だと思ってるんじゃないか」
と無駄に自意識過剰になってしまう傾向がある。

また独身であれば、その人を好きになった場合
自分に相手がいなければ「この人と付き合えるのかどうか」、
彼氏がいれば「今の彼氏と別れてこの人と付き合おうとするかどうか」
と決断と行動の負荷や、自分が傷つくリスクも出てくる。

となると相手を好きになって傷ついたり失敗したりするのを避けるために、
「自分の内部のストッパー」が防衛機制的に発動して、
「私はこの人のことを何とも思いません、
客観的に見たらかっこいいけど好みではありません」
と自分を封じ込めてしまう。

ところが結婚していたらどうだろうか。
自分がときめこうと好きになろうと、
その相手が自分を好きになろうと嫌おうと、
私が愛して生活できるのは結局夫だけである。
結婚によって、
「ほかの男性を愛せない」という外付けのストッパーが付与されている。
つまり、夫以外にワーキャー言うのは恋愛でもなく、
ただの一方的なときめきでしかない。それより大きなものにはならない。
自分でストッパーをかける必要がないのだ。

そういうわけで、
結婚という外付けの強固なストッパーを手に入れ、
独身時代にかかっていた異性に対する内部のストッパーがなくなったため、
結婚してからのほうが素直にワーキャー言えるようになった、
というのがストライクゾーンの広がりの要因だと私は考えている。
(そしてこれが既婚者の余裕というものか?という考えもよぎっているが、
これはまた考える機会があったら考えたい)

ストライクゾーンが広がるということはときめきが増えるということで
それ自体はポジティブに受け止めているが、
外付けのストッパーに甘えすぎて夫を傷つけたり、
周りに不快感を与えたりしないよう、
しっかり内部のストッパーも新たに構築しながら自重していきたい。

【補足】陰キャという性質

突っ込みどころがあるとすれば、
「ジャルジャル後藤系素朴地味シンプル男性」は
なぜ最初からストライクゾーンに入っているのか?
というところだろう。

これも人間関係における自分の臆病さが表れていると思うと嫌な感じだが、
一言で言うと、
『「ジャルジャル後藤系男性」は自分でもギリいけるんじゃないか』
という打算に尽きる。
自覚があるわけではないが、
無意識に「自分でも釣り合えるギリギリのレベル」を狙った結果
そういう好みになったのではないか。
※ジャルジャル後藤系男性が好きな人が全員そうというわけではなく、
あくまで私個人の話である。

まさに人間関係が苦手な陰キャの嫌な生存戦略だが、今のところ、
それで今夫と幸せに暮らせているので大成功といってよいだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?