投げ銭企画・イエモン「jaguar hard pain」5~7曲目について

◎薔薇娼婦麗奈

ここまでの5曲で、このアルバムの主人公ジャガーの人格が、すでに家族や同居人ぐらいの距離感でにおい立ってくる。
ヤク中で色情魔で、でも誰とも比べられない格好良さがあって、憎くて仕方がないんだけど最後の1mm憎み切れない感じで人を惑わせているかんじ。あまりにもそれが生々しく、曲の世界観やジャガーに寄り添って聞こうとするとなんだかどっと疲れる。曲や音楽の格好良さだけ享受していればいいのかもしれないけど。

薔薇娼婦麗奈は

この世は金 金さえあれば
恐くないね 僕の麗奈
お願いだこの僕と手をつないで地獄を見に行こう
頼むからこの僕と腕を組んで地獄を見に行こう

という地獄の底でずぶずぶになりながら、蜘蛛の糸のような一縷の愛に盲目になるジャガーの姿が浮かび上がってくる一曲。

◎街の灯

A HENな飴玉から薔薇娼婦麗奈まで、狂ったような非日常に浸っていたジャガーが、ここでは急に重たい曇天のような日常に出て行く曲。

尋問・連行・仮釈放、僕は見かけ通りさ
冷たい世間にもめげない

ロックスターでいられる時間は泡沫の夢みたいなもので、ひとたび「すきとおる青空の下」に出てしまったら、昼から酒を煽るいかにも職質にひっかかるような酔っ払いでしかないという、虚しさ。
「淋しがり屋の歌を 聞いてくださいな」
という言葉も空虚で、例えばジャガーがこう言って駅前とかで弾き語りをしていても、私はきっと足を止めないだろう。

◎RED LIGHT

「少女は娼婦の目で笑う」という歌詞が出てくる。A HENな飴玉にも「少女売春婦に挨拶して」、「薔薇娼婦麗奈」も、なんとなく無垢な少女なのかなあ…と思ったり、ジャガーは救いを求めて毎日違う(少女の?)娼婦を買っているのか、それとも少女の娼婦、麗奈を金を払って手に入れたことを指しているのか。

汚いキレイがとてもたまらない

ジャガーも、ジャガーに一瞬でも心を許してしまう人達もたぶん、そんな「キレイ」に魅入られてしまった人達なんだろう。

「街の灯」が、日中のジャガーの虚しさを表している曲だとしたら、この曲は夜。色欲にずぶずぶになって昼間の虚しさを埋めようとする。
それすらも本当は虚しさの一部だということにどこかで薄々気づきつつ、それさえも忘れるために。もうその連鎖から抜け出せなくなっている。

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