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動物好きの極悪人

わが妹は自称動物好きである。


子供の頃、縁日で金魚すくいをして、「お家で飼う」と両親にねだりまくったのが遍歴の始まり。その後、ハムスター。おきまりの猫、犬である。


「どうせ、世話はお母さんがするんだからダメ!」
「絶対世話するから。お願い。絶対するから」


幼い妹に懇願されて親も根負けし、水槽セットを買った。


家の大きさと水槽の大きさを完全に見誤っている親父殿が、どや顔で買ってきたものだった。
(横幅1m奥行50cmほどあった)


「金魚入れるのにどうして、こんな大きなもの買ってきたのさ!!」


と、怒り狂うオカンを横目に親父は、嬉しそうに水槽を設置した。縁日でとってきた金魚数匹がどでかい水槽で悠々と泳いでいた。親父は、水槽を買って満足し、それ以降は関心なし。妹も水槽を買ってもらって満足し、それ以降は関心なし。


オカンの予想通り、金魚の世話はオカンの担当になった。


「ほら!お母さんの言った通りになったでしょ!!そんなに世話するのが嫌だったら、池に捨ててきなさい!!」


あまりにも世話をしない妹に業を煮やしたオカンがそう言い放って、仕事に行った。


オカンが仕事から戻るなり「ああああああ!!」と、奇声を上げた。


どうしたのだと、玄関に走っていくと。オカンが水槽を指さし「金魚どうしたの?猫にでも入られたかな?」と、泣き顔で私に聞いた。


「知らないよ。学校から帰ってきてから、物音一つしなかったけど・・・」
と、私が説明していると「私が池に捨てたんだよ」と、後ろから声がした。


「え!!」


目を見開いて振り向くと妹が悪びれもせず「お母さんが朝、いらないんだったら、捨ててきなさいって言ったから」と、平然と言ってのけた。


こ、こいつだきゃ。


それから半年ほど経ってまたもや妹が、今度はハムスターが欲しいと言い出した。


当然オカンは

「どうせあんたは、世話しないんだから、絶対ダメ!!」


そりゃそうである。金魚の世話が嫌で池に捨ててきた女である。


「絶対するから、今度は絶対するから」


涙を浮かべてオカンに懇願する妹。


「絶対。絶対。絶対するから」
「絶対?」
幼い妹にすぐ甘い顔を見せるオカン。


「今度は絶対。絶対」


ってことになり、またもや親父殿がドデカイハムスターハウスを購入してきた。水飲みのための点滴みたいなのやら、からから走る回し車。下に敷く、なんかようわからん、わしゃわしゃした紙屑。

親父は嬉しそうにそれらをセットして、ハムスターを中に放した。ハムスターはからからと回し車の中を走り回り、エサのひまわりの種を食べた。
親父はそれで満足してそれ以降は関心なし。妹も以下同文。


やっぱり、ハムスターはオカンの係りになった。


「だから、お母さん言ったでしょ!!あんた全然世話しないじゃない!いらないんだったら公園に捨ててきなさい!!」


まったくハムスターの世話をしない妹に業を煮やしたオカンが、またもや吠えた。


「はいぃぃぃ!」


妹は元気よくお返事して、ハムスターを虫かごに詰めようとした。


「!!!!」


あわてたオカンは「あんた何してるの!!」と、妹に問いただした。


「公園に捨てに行くんだよ」


悪びれもせず、無垢な瞳をオカンに向ける妹。


「捨てちゃダメ!!」


オカンは、妹の手から虫かごを即座に取り上げた。


「お母さんが捨てて来いって言ったから」


妹は、なおも分からないという風にオカンを見つめた。


「もう!!」


オカンは、やり場のない怒りを虫かごにぶつけ、それ以降ハムスターはオカンの係り、と、正式に決まってしまった。


動物好きの極悪人。わが妹。子供に倫理を教えるのって難しい。


その後さすがに犬を捨てに行くことはなかったが、真っ白な犬の顔に眉毛と豊齢線を書き込んだり、しっぽをつかんで引きずり回したり、自分の嫌いな食べ物を犬に食わせて隠ぺいしたり、やりたい放題。


猫に関しては……筆舌に絶えないのでここでは書き控えておこう。


とにかく、なんちゅうやっちゃ。あいつだきゃ。恐ろしいやっちゃ。


コワ━━《(。´iωi人iωi`。)》━━イッ!!!


そんなあいつも今では人の親。どうなる事やら…お兄ちゃんは心配だ。

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