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言語はこうして生まれる -即興する脳とジェスチャーゲーム-

言語はこうして生まれる -即興する脳とジェスチャーゲーム-
(モーテン・H・クリスチャンセン、ニック・チェイター 著)

言語はどのようにして生まれたのか

・他の動物にはない人間特有の言語が生まれたのはなぜか
・世界中に異なる言語、地域や民族で異なる言語が生まれるのはなぜか
・赤ちゃんがしゃべれるようになるのはなぜか

「普遍文法」
あらゆる言語は一つの諸原則にのっとり、世界の言語はバリエーションであるという思想

「言語本能」
人間の遺伝子に組み込まれているという思想

「ジェスチャーゲーム」
伝えたいことをジェスチャーで表し、その実践が習慣化し、いつしか一定のコミュニケーション体系にまとまっていったという思想。(遺伝子ではなく後天的な体験による文化的資質)

稚拙なやりとりでも通じるのは、共通の文化的基盤があるから。どの言語でも一つの単語に複数の意味が割り当てられている場合が多いのは、文脈によって新しい意味が追加されていくから。
子供はひたすら練習を繰り返して言語を習得する。遺伝的なものではない。言語が生まれたことで人類の文化は爆発的に発展した。

即興する脳

言語は混じりけのない体系の乱れた形ではなく、その逆で即興の連続である。それは結果であり、無数の世代がコミュニケーションという相互作用を重ねるうちに言語パターンが少しずつ固まっていく。
ジェスチャーゲームのように、瞬間的に発明されてはまた新しく発明される。

コミュニケーションの氷山

単語や句や文は氷山の一角に過ぎず、相手の言っていることを理解するには氷山の下の慣習、価値観、暗黙のルール、社会的役割、人間関係を前提にした予想である。文化的、社会的、事実的な知識を総動員して初めてコミュニケーション氷山の一角を浮上させられる。

コミュニケーション氷山:言語はこうして生まれる -即興する脳とジェスチャーゲーム- より

人間の記憶力の限界

耳慣れない言語が速く感じるのは錯覚。1秒あたり音声(音素)は10から15。ところが人の声でない音が連続でこの速さで発せられると識別不能になる。短期記憶には限界があり、言語素材をひとまとめにして大きな単位としてまとめるとその場で理解できる。

一人が自分の番を終えてから別の人が応答しはじめるのに0.2秒。現在の話し手がまだ話し終わらないうちにその話を聞きながら準備をしておく必要がある。(声の調子や表情から、いつ話し終わるのかを予測する)

そのような特性上、日常会話のやりとりは乱雑で、半分までしかできていない文であふれ途中妨害も当たり前である。日常会話の体裁がめちゃくちゃなのは統制された散文の劣化版と思われがちであるが、即興的に意味をこしられてなんとか理解につなげているから。

音と意味

異なる大陸の互いに無関係な言語のあいだでもいくつかの音は、ある特定の概念を指すのに使われていた。例えば、赤いという概念は、高い確率でRの音が含まれている。わたしとあなたは、p,t,sが含まれていないことが多い。

擬音語説では、人間が身の回りの自然界の音を真似たことが言語のはじまりという思想。

カオスの果ての言語秩序
新しいパターンが現れて確立され、多くの話者の間で何世代にも渡って利用され、再利用されていくうちに整理されていくことで、いつのまにか秩序ができている。コミュニケーションのカオスから少しずる生まれるもの。

子供も言語は練習の繰り返し

デンマーク語は難しい。問題点は発音が不明瞭でぐちゃぐちゃである点。デンマーク人の子供でも苦戦する。世界で最も母音が多い言語の一つ。さらに子音の多くを母音のような音に変える。
ノルウェー語とスウェーデン語を学ぶ子供よりも動詞の過去時制を学ぶのが2年遅い。言語習得は、遺伝的なものではなく文化的に進化している。

言語は文化の一要素ではない

言語があることで、人間の知識、社会的模範、宗教的信念などが驚異的な速さで蓄積された。薬の効果、食べられる植物、斧の作り方、海の渡り方など。言語がないと一から自分で学ぶ必要がでてくる。
言語は文化の一要素ではなく、知識の蓄積を可能にすることで言語は人間の文化と社会の変化の触媒として働く。