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遺伝と平等

遺伝と平等」〜人生の成り行きは変えられる〜
(キャスリン・ペイジ・ハーデン 著)

人の個体差(生物学的差異)の科学は、平等主義を否定するものではなく両立するものと考える

人はDNAの特定の組み合わせをたまたま受け継いだだけ
(→それによって経済的不利益を被るべきでない)

1:社会の不平等を理解する上で遺伝学は重要である
2:自然くじによって引き起こされた遺伝的な違い
3:人の遺伝的差異が人生のアウトカムにどのように違いが出るか
4:現状の双子研究などはヨーロッパ系の遺伝に限定されている
5:人生のアウトカムの原因が何か
6:遺伝子と教育の関係

遺伝くじ

性格やうつ病など人々の違いについて遺伝要因はどの程度寄与しているのか
(子供の身長が高いか低いか、目の色が茶色か青色かなどは遺伝的多様性は重要となるが、子供が学校でいい成績を取るか、経済的に安定した生活を送るか、犯罪に手を染めるか、などを理解するには複雑な話になる)

遺伝レシピ

人生は「遺伝子と環境の相互作用」によって決まる。遺伝子は料理人のレシピのようなもので、環境は腰を下ろす椅子のようなもの。生まれか育ちかのどちらかではなく両方重要となる。
人のDNAは99%が同じでありどのレストランでも塩を使うのと同じ。それでも結果的にレストランによって違う料理になる。

祖先と人種

遺伝に基づく人種間の違いがあるという話は真実ではない。今日生きている人々の系図に遡るとそれほど遠い昔ではなく、数千年遡ると同じ一つの系図になる(全員の共通の祖先になる)。
遺伝的な類似性には、地理的要因(海岸、砂漠、大陸など)が最大のパターンとなる。人種は一つの要素に過ぎない。アフリカ大陸の中でも、ヨーロッパの人よりも遠い違いがあるケースもある。

生活機会のくじ

抱き上げたり、話しかけたり、本を読んでくれたり、外に連れて行ってくれたりするものがいない孤児院よりも家庭の中で育てられた方が賢くなる(平均IQが高い結果)。

自然によるランダムな割り振り

遺伝くじのアウトカムの違いの検証のために兄弟の比較。背の高い親から背の低い子が生まれる可能性はゼロではない。
遺伝率の研究が続くのは、人々がどうしようもない誕生時の偶然が、社会の中で重要と思われる教育、所得、ウェルビーイング、健康に違いを生じさせるのかを説明しようとするから。

遺伝子はいかに社会的不平等を引き起こすのか

遺伝子が学歴に影響を及ぼすことはほぼ確実。遺伝子は脳に影響を与え、子供が胎内にいるときから発現している。それは基本的認知能力に関与している。また認知能力だけでなく、非認知スキル(好奇心、学習意欲、新しい経験に心を開くかどうか、忍耐力、対人スキルなど)の形質に関連がある。

オルタナティブな可能世界

遺伝型は同じだが、社会的歴史的文脈が違っていたらどうなるか。遺伝率の高さは、環境のせいで生じた社会的不平等が取り除かれた兆候。

生まれを使って育ちを理解する

社会的不平等があったとしても高い障壁があるということにはならない。環境の変化はDNAと人生の成り行きの関係を変える力がある。
攻撃性や暴力性は遺伝子が影響する。そのため冷酷さ、配慮のなさは子供時代にすでに高い遺伝率が見られる。犯罪率もそれに関連する。

違いをヒエラルキーにしない世界

不平等は、物品の分配ではなく、優れた人と劣った人に関するものと考えられていた。それが人種差別や性差別、階級などに関連してくる。社会的に価値を与えられるのであり、生まれながらに価値があるのではない。

・時間、金、才能、道具を無駄にするのはやめよう
・遺伝情報を人々を分類するためではなく機会を改善するために利用しよう
・遺伝情報を排除でではなく平等のために利用しよう
・運が良いことを立派であることを混同しないようにしよう
・自分が何者であるかを知らなかったら自分がどう振る舞うか考えてみよう