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『ラークシャサの家系』第4話

◇「彼女との接点」

 楽しそうに仲間と一緒に写っている6人の被害者たち。よく見ると死亡推定時刻の数時間前に投稿されている。おそらくここに写っている誰かが自身のSNSに投稿したんだろう。悪さばかりしていた連中だが、こんなふうにして見ると、多少なりとも可哀そうに思える。まだ若いし、こいつらの寿命は短い。勿体ないことをしたものだ。
「キダっち、何か気付かない?」
「えっ? えっと・・・」
「これ、合成だよ」
「えっ?そうなんだ・・・」
「ほらっここの部分の輪郭が不自然でしょ?ここは影が逆。これ、相当雑だよ。だけど、なんでだろ?」
「なにが?」
「わざわざ合成の写真を作って、何がしたかったんだろってこと。動機っていうやつ?他にもちょっと気になることがあって。この写真、今はこのSNSから削除されてるんだ。ちょっと裏技使って、削除情報含めて検索かけてみたら、この写真が出てきたってこと。情報ってのはローカルで削除したつもりでも、そのコピーがネットのいたるところに保存されてて、本物がなくなった後も、そのコピーたちがどこかにいるんだよ。」
「ふぅーん・・・で、この合成写真?だけど。このSNS、この女の子のアカウントだろ?、この子が、なんか自慢したっかったんじゃないの?こいつらと居るところをさ。で事件のニュース見て怖くなって削除したとか・・・その程度じゃね?」
「そんなもん?なの? でも事件よりも前に削除してあるんだよ」
「じゃさっ、嘘ってバレるのが怖くなって削除したとかさっ。鴛海さんってさ、見かけによらず真面目?」
「ぼっ僕は、一応捜査に協力するにあたって、そんな素人推理や、思い付きではなくて、あくまでも客観的な証拠を提供するという使命があって・・・そのために私心を・・・」
「真面目かっ! まぁいい、このアカウントの子から話を聞きたいから、この子の名前とか、学校とかさ、住所?居場所?調べてよ!明日にでも行ってみるから。」
「う・・・うん・・・ちょっと時間ください」

 アカウントの主は、井村明子。市内に住む高校3年生。あの6人との接点は、鴛海曰くあの写真以外は見当たらないらしい。まぁそれでも何かヒントがあるかも、ということでとりあえず話を聞きに行った。とは言っても、相手は高校生で未成年、しかも彼女の通う高校は県内でも有名な進学校でお嬢様学校。こんなパターンの時は、少し慎重に対応して、大げさにしないほうがいいだろうと、七瀬が付いてきた。オレたちが前面に出るより、人間同士、しかも”上級国家公務員の七瀬参事官さま”ならつり合うだろうと。

「ごめんね。ちょっといい?」
「は、はい・・・」
「えっと・・・井村明子ちゃん?私は内閣府 大臣官房 総務課の七瀬というものです。ちょっとお話を聞かせてほしいことがあって。」
「はい・・・」
「先週、ニュースとかでやってた”寄居6人惨殺事件”ってご存じ?」
「えっ・・・なんですか?私、今から塾なんで・・・」
「で、この写真のことなんだけど。」
「えっ、よくわかりません・・・なんですか?これ?私、知りません!」
「ちゃんと話を聞かせてもらえないかな?」
「私、知りませんからっ!」
「これ、あなたのSNSで見つけたんだけど・・・」
「私、知りません!そもそも削除したから見れない、あっ!・・・」
「とても重要なことなの、知っていることを話して!」

 なんでも学校で友達と言い争いになって、あの世間を騒がせている6人とは、同じ地元でよく知っていると吹いたら、その証拠を出せとなったらしい。それならと、翌日、ちょうど会うからその時の写真をSNSにアップすると約束をしたのだが、本当は見たことも会ったこともなく全く面識がない。慌ててネットにある、あの6人の画像と自分の映っている写真を合成して、翌日の夜、SNSに投稿した・・・ということらしい。削除した理由は、あの6人にバレたら何されるかわからないからということらしく、残念ながら、オレの”素人推理”がビンゴだったようだ。

「はぁ・・・”ふりだし”に戻っちゃったか、といってもな。ねぇ 七瀬参事官」
七瀬が何やら納得してない顔をしてる。
「井村明子、彼女は何か隠している。もうあの6人は死んでいないのよ。それなのに、なぜあんなに隠そうとしてるの?それにあの怯えかたは何?」

 うん、悔しいけど、言われてみるとその通りだ。確かに奴らに怯える必要はもう無いはず。奴ら6人を遣った犯人に怯えてる?彼女自身があの事件に何かしら関係がある?・・・やはり彼女は何かを隠している。

「キダさん、明日もう一度付き合ってくれる?」
「あぁ、いいけど。何か作戦が?」
「それを今から考えるんです!」
「マジですか? サービス残業・・・」

”テトタト・テトテト・タトテト♬、テトタト・テトテト・タトテト♩”

「はい、キダ」
「鴛海です。キダっち!僕、またすごいもん発見しちゃったかも。すぐ帰って来て!」
「はあぁーっ!?今から?」
「うん。でも、これきっとビンゴかも。」


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◇第5話へつづく

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