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魂の食肉

いま飼っているジャンガリアンハムスター「ハム公」(メス)の体重を計ったら39gだった。

コンビニに行って内容量39gの食べ物を探した。明治コーヒービーツの小袋が39gだった。ハム公と同じ重さのお菓子。気に留めていなかったお菓子が特別な意味を持つ食べ物に思えたようで、急に愛おしくなった。ハム公が可愛すぎて食べたくなってしまった時はコーヒービーツを食べて発作を抑えようと思う。

コーヒービーツは1袋199kcalだ。もしハム公を本当に食べたとしたら、きっとこれより少ないだろう。しかし、実際に食べることはなくとも日々ハム公から摂取しているものがある。それは心の栄養である。

ペットは広義には家畜に入るが、一般的な認識として家畜というのは食肉や乳、毛を取るために飼われる豚、牛、羊などを指す。人間にとっての重要な栄養源だ。

ペットは家族と見做されることもある。ただ、現代の生活の中では猫がネズミを捕るとか、犬が番犬をするとか、動物の習性を活かした「機能」は昔のように期待されていない。あえて何かの機能を見出すとすれば愛らしさから来る「癒し」「楽しさ」だろう。

家畜が身体の栄養を担うなら、ペットは心の栄養源。魂の食肉である。

心の栄養という意味で、ペットは芸術やエンタメとよく似ていると思う。生存に直結するものではないが、あると元気になれるものだ。

栄養を十分に取れば人間は元気になれるが、カロリーの過剰摂取は肥満を招くなど体に悪い影響を及ぼすこともあるのは周知の事実である。
心の栄養についてはどうなのだろう。芸術、エンタメ、ペット、今の世の中には心の栄養源足りうるものがたくさん溢れている…にも関わらずメンタルヘルスの重要性が強調されているのは不思議にも思える。

社会に様々な生きづらさがあるというのは事実で、その傷を癒すために何らかの形で心の栄養摂取に努める人は少なくない。しかし、心の栄養が溢れすぎていることも今を生きる人々が抱える精神的不調の一因なのではないか…などということをふと考えたのだった。ハム公にはいつも癒されているが、もしかしたら過剰摂取は危険なのかもしれない。39gの危ないカロリーメイト。

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