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4月1日の朝、ホテルのロビーで入社式に向かう人々を見かける。【耳で聴く美術館】

2023年4月1日朝。新年度がはじまった。

私は今日から東京の部屋に入居するために、ビジネスホテルに前泊し、この記事を書いている。

新年度の朝は気持ちがそわそわして落ち着かない。

ホテルの朝食会場を出た時、ロビーにコーヒーマシンがあったのを思い出しいってみると
スーツに身を包み、胸元に社章をつけた男女がソファに座って待ち合わせをしていた。

新入社員だな。と一瞬で分かった。そして、これから入社式に向かうのだろう。
私も数年前の4月1日は彼らと同じように、新しいスーツに、社章を胸につけていた。社章が曲がらないように何度も触っていた。

私の入社した年の春は、雨が何日も続き「天気の子」のような雨が降り続く春だった。どんよりとした、分厚い雲が何層も重なり私の心の中のようだった。

「せめてカラッと晴れてくれたらな。」

新入社員研修は2ヵ月にも及んだ。社歌を毎朝歌って、名刺交換や電話対応の練習。グループワーク。

研修は新入社員たちに学生気分を抜けさせる期間なので、講師たちも一段と厳しく指導をしていたと思う。

気にしやすい性格の私は、本当につらかったのを覚えている。

ただ、そこで救われたのは寮で同室だった今でも仲のいい友人がいてくれたこと。

夜になったら、近くのレンタルショップまで行って漫画を大量に借りて、お互い交換して読む。

その日に行った工場研修の話や、酔っぱらって制服をすべて無くして始末書を書かされた同期の話など、彼女の存在がとてもありがたく今でも関係が続いている友人と出会えたことに感謝している。

もしこの記事を読んでいる新入社員の人がいたら、なんてお先真っ暗なんだろうと思うかもしれないが、何年たっても続く友人の同期に出会えるかもしれないことをちゃんと伝えておきたい。

春は人々の気持ちをかき乱し、嬉しいことも辛いことも運んでくる。

そわそわしながら、私もこの記事を書いている。

いつまでたっても春は特別だ。

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