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モノづくりの業務効率化に貢献するITのお仕事(CAE)について -4-

CAE(Computer Aided Engineering)に関する記事の4回目です。私の生業(本業)でもあります。

前回はCAEに関して、私が今の会社で携わる業務「品質管理」について話しました。具体的なビジネスとの関係性を考えてみました。

今回はCAEに関するコラムとして「マルチフィジックス解析」の話をします。マルチフィジックスとは、異なる物理現象(場)を組み合わせて解析することを指しますが、ハードルはそれなりに高いです。

一方で、より現実に則した解析(シミュレーション)を行うには欠かせない分野でもあります。その雰囲気を掴んで頂ければと思います。


マルチフィジックス解析の意味

現実世界では複数の物理現象が同時に作用します。これらを切り離した解析(シミュレーション)も可能ではありますが、物理現象を正確に捉えることができないというデメリットがあります。

マルチフィジックス解析は複数の物理現象を連携することにより、同じ有限要素法という手法を通して、事象をより正確に捉えることが可能です。

物理現象が違うということは、解析という立場で見ると各々の場の支配方程式が違うということです。それぞれの支配方程式を解いた結果を連携させるため、個々を切り離した場合に比べて難易度は上がります。

一方で、近年はスーパーコンピューター(スパコン)をはじめ、コンピューターの性能も向上しています。昔に比べて容易に取り組めるテーマでもあります。

マルチフィジックス解析の離散化方法

マルチフィジックス解析は、一般的にそれぞれの物理現象による支配方程式の結合系を解いています。それぞれを離散化することで、解析(シミュレーション)に持ち込みます。

以前に紹介した有限要素法では、解析対象を単純な形状をした要素に分割します(離散化と言います)。そこから、離散化した支配方程式を連立方程式に置き換えることで、解となる物理量を計算します。

例えば、モーターに関する騒音解析では、流体力学による速度場や圧力場と連携してモーターのトルクやモーターが構造物に与える力を計算します。その結果に基づいてモーターに生じる騒音を計算します。

異なる物理現象の間を物理量の情報は行き来します。双方向に引き渡し場合もあれば、片方向でのみ引き渡す場合もあります。計算時間や物理の状況次第で解析者が設定を決めることになります。

マルチフィジックス解析では「単一的離散化」「複合的離散化」と呼ばれるふたつの手法が存在します。モーターの騒音解析は単一的離散化に相当し、全て有限要素法の枠組みの中で計算を行います。

一方で、圧縮性流体と構造や伝熱を結合する際は、圧縮性流体を有限体積法、構造や伝熱は有限要素法で行うことがあります。このように支配方程式の離散化の方法が異なる場合が複合的離散化に相当します。

マルチフィジックスの難しさ

多くの設計では「シンプルであればあるほど良い」という考え方があります。これまでは各々の物理現象をチームに分けて、それぞれの専門家が別々に問題を扱いながら、要求事項を整理していた側面がありました。

しかしながら、そのような両立の方法を採るのは現実的に困難であり、理想的なゴールではないことも多くありました。

コンピューターの性能が向上している昨今では、設計者は過程を可能な限りシンプルで効率的に保ちながら、複雑な物理現象を考慮に入れた最適設計を提供するという課題に直面しています。

そのような高い要求を満たすCAEソフトウェアが求められています。私たちCAEベンダーは、設計の現場を知ることと同時に、より高度な提案や分析を日頃から行えるように意識しないといけません。

そのために欠かせない解析(シミュレーション)の機能こそが、マルチフィジックス解析なのです。

おわりに

今回はコラムとして「マルチフィジックス解析」を紹介しました。個人的に面白い分野だと思います。

ひとつのCAEソフトウェアで複数の物理現象を扱うというのは、最近では常識になりつつあり、難易度の高い要求水準がそこにはあります。

今後も実用性を高めていく努力は必要であり、そういう意味ではCAEは発展途上の段階でもあると思います。

次回はまた別のコラムとして「マルチスケール解析」について話をします。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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