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モノづくりの業務効率化に貢献するITのお仕事(CAE)について -1-

CAE(Computer Aided Engineering)が私が生業とする仕事です。

外で自己紹介する時はSE(システムエンジニア)と名乗ることが多いですが、実際はSEの中の細かい職種のひとつです(自分はそう認識しています)。

今回は私の生業であるCAEについて数回に分けて話をしていきます。noteの自己紹介でも触れていますが、詳しいところを分かりやすく書いていくので、最後までお付き合い頂けたら幸いです。

CAEの存在意義

実際に聞き馴染みのない方が多いと思います。私も高専に進学していなければ、出会うことがなかったかもしれません。

世間の認知度こそ低いですが、理系のスペシャリストの一角を担う業界だと個人的には思います。それだけ専門性の高い世界だということです。

CAE(Computer Aided Engineering)と表される通り、コンピューターを駆使して様々な工学分野にアプローチすることを意味します。元々は外国から来た言葉ではあります。

これを日本語に置き換えるならば「様々な設計プロセスにおいてコンピューターによる数値解析技術を活用すること」だと言えます。これがどのようなメリットを生むのかについて触れていきます。

モノづくりの現場では、製品の設計過程で多種多様な実験や試験が行われます。これらの実験(試験)があるからこそ、製品の性能がきちんと担保された状態で市場に出回ります。

つまり、モノづくりは設計と実験(試験)による数多くのトライ&エラーの繰り返しとも言えます。

タイトルに「モノづくりの業務効率化」と書いていますが、CAEは製品の設計過程におけるこれらの工数(コストのようなもの)を可能な限り削減することが期待されています。

CAEによる業務効率化の具体例

CAEが実際に登場する場面としては、製品を設計してから実験(試験)を行う時です。実験(試験)の過程をコンピューターで再現してから、その結果を分析することで、以降の設計の改善に役立てます。

これはよく自己紹介の場で話すことなのですが、車の設計を例に説明します。実際にCAEが最も使われているのは車体設計の領域と言われています。

テレビのCMなどで車の衝突試験を見かけることがあると思います(中に人形を乗せる場合もあります)。CAEではこういう試験をコンピューター上で仮想的に再現します。

車の業界ではこのような試験は必ず行うもので、1回行うだけでも多大な工数が必要です(実際に車を1台は用意する訳ですから)。モノづくりはトライ&エラーの世界ですが、これを何度も行うのは合理的ではありません。

そこにCAEを挟むことで、トライ&エラーの回数を減らします。CAEはコンピューター上の仮想的な再現ですので、実際の試験に比べてコストは低く済みます。

最終的な試験こそ現実で行う訳ですが、それまでの過程でのトライの回数が少なく済めば、それは紛れもない業務効率化になる訳です。

高品質な製品を安く早く市場に供給すること。言葉で表すと理想論に聞こえてしまいますが、それを実現する手段としてCAEが存在するのです。

CAEの様々なメリット

車体設計を例に説明しましたが、この他にもCAEを使うメリットはあります。一般的なことをいくつか挙げてみます。

1.製品の設計改善
先ほど説明した車体設計もそうですが、製品に不足している性能を改善するために何が必要であるかを物理的な観点から分析します。状況次第では瞬間的な現象を捉える必要がある場合もあるため、そのような時にCAEが効果を発揮します。

2.製品性能の事前検討
設計において重要な過程に材料選定があります。鉄やアルミなど多くの材料が存在し、それぞれ力学的な特性は異なりますが、これらの特性をデータとして再現できるのがCAEの強みです。事前に材料試験を実施した結果があれば、独自でCAEに取り込むことも可能なので、より高精度な事前検討が可能になります。

3.実験不可能の時もCAEで代行
車体設計の場合は乗員安全試験や電磁波などの人体曝露試験など、生身の人体を介在するような場合についても検討する必要があります。これらは、実験(試験)を行うにも生身の人体を利用する訳にはいきません。CAEはコンピューター上で仮想的に再現する手法なので、現実的に不可能な状況の検討も可能になります。

近年では実験(試験)を行うことが難しい状況も多く出てきており、CAEはこのような難しい課題を解決する手段として、これからも活躍していける分野であると言えます。

おわりに

私の生業であるCAEの世界について、まずはなぜ必要とされているのかを解説してみました。

CAEの技術を説明する上で外せない理論のひとつに「有限要素法」があります。コンピューターが登場した頃から徐々に確立されてきた伝統的な理論であり、今もなお進化し続けている理論でもあります。

何よりスパコンをはじめ、コンピューター自体の性能も向上してきています。CAEとしてもより新しい分野に手を出せるようになってきました。

次回は有限要素法について解説したいと思います。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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