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【#29】材料力学の強化書 〜ねじりの変形の計算方法〜

今回のトップ画像はロシアのモスクワにある建物の写真です。ロリポップみたいにかわいい建物が多いロシアですが、実際に目にするとまた違う印象になるかもしれませんね。

さて、材料力学の話に戻りましょう。

前回は曲げによる変形の問題の総まとめとして、少し難易度の高い不静定問題(連続はり)について解いていきました。

今回より新たな章に入ります。ねじりの変形の問題についてです。回転が拘束された棒をねじると、棒には変形抵抗として棒の軸線に垂直な面に円周方向の応力が発生します。そんなねじりの変形を求める流れを見ていきましょう。

丸棒のねじり

ここでは基本的な問題として扱うために、軸線方向に一様な断面を有する丸棒の場合を取り上げます。

先に書いた通り、回転が拘束された棒を回転させようとする作用を「ねじり」と言います。

ねじりが作用すると、棒には変形抵抗として棒の軸線に垂直な面に周方向に応力が生じます。この応力の合力はゼロですが、合モーメントはゼロにはなりません。このモーメントを「ねじりモーメント」と言います。

ねじりを考えるにあたり、2つの仮定を設けます。

仮定1:ねじりモーメントが作用する前後において、横断面は平面を保つ。
仮定2:横断面内の各点は中心軸からの距離に比例した量だけ回転する。

この仮定は、弾性変形に基づくねじりを求める上で必須となるので、意識しておくと良いです。

上図のように、直径(D)と長さ(dx)の丸棒の両端にねじりモーメント(T)が作用している状態を考えます。断面上における点Bはねじりモーメントが作用する方向に移動します。これにより、着目断面におけるねじれ角(dΦ)が決められます。

着目断面におけるせん断ひずみを求めます。特に、棒の表面のせん断ひずみは図に注記した通りです。仮定2に書いたことから、断面上の各点のせん断ひずみは中心軸からの距離(r)に比例するので、

$${\gamma=r{\frac{d\varphi}{dx}}}$$

となります。単位長さ当たりのねじり角(Θ)を導入して、せん断ひずみとせん断応力が求まります。

$${\gamma=r\theta}$$ , $${\tau=Gr\theta}$$

以上がねじりの変形における、せん断応力を求める流れになります。具体的な計算方法について、引き続き見てみましょう。

ねじりにおける最大せん断応力

上記の式を見ていただくと分かるように、せん断応力(せん断ひずみ)は中心軸からの距離rに比例するので、棒の表面において最大値をとります。

せん断応力は断面の円周上では一様と考えられます。その微小円周面積をdAとして、合モーメント(ねじりモーメント)を求めると、

$${T=\int {\tau}rdA=G\int {r^2}dA{\theta}=GI_p{\theta}}$$

となります。ここで、

$${I_p=\int {r^2}dA}$$

は断面二次極モーメントと言います(詳しいところは次回説明します)。上記の式から、ねじり角(Θ)は次のようになります。

$${\theta=\frac{T}{GI_p}}$$

ここで、右辺の分母を「ねじり剛性」と言います。ねじりに対する変形抵抗の大小を表すものです。ここまでの式展開から、せん断応力を書き換えると、

$${\tau=\frac{Tr}{I_p}}$$

となります。この式からねじりモーメント(T)が作用したときの中心からrの距離でのせん断応力が計算できます。最大せん断応力は棒の表面位置で生じるので、

$${\tau_{max}=\frac{TD}{2I_p}=\frac{T}{Z_p}}$$

ここで定数(Zp)のことを「ねじり断面係数」と言います。はりの曲げの変形のときに取り上げた断面係数と似ていますが、曲げモーメントとねじりモーメントでは回転軸が異なるので、その点は注意が必要です。

おわりに

今回はねじりの変形の大まかな計算方法について見ていきました。

実際の計算問題については後ほど取り上げますが、まずは計算の流れを理解して頂ければと思います。

次回は断面二次極モーメントについて説明します。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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