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モノづくりの業務効率化に貢献するITのお仕事(CAE)について -3-

CAE(Computer Aided Engineering)に関する記事の3回目です。私の生業(本業)でもあります。

前回はCAEのコアとなる技術(理論)である「有限要素法」について解説しました。まだまだ進化の過程にある理論です。

今回は私が実際にしている業務の話をします。簡単に言うと「品質管理」に当たるのですが、ビジネスとしての立ち位置を示します。前回に引き続き、最後までお付き合い頂けたら幸いです。


会社の立ち位置

まずは会社の全体的な立ち位置から。前回話した有限要素法による解析(シミュレーション)を行うためのソフトウェアを販売している会社になります。コンサルティングや解析作業の請負(受託解析)も行います。

このような立ち位置の会社を「CAEベンダー」と呼びます。そこまで多くの会社がある訳でもないので、比較的にニッチな領域です。

基本的にソフトウェアは有償ですが、流体解析ソフトのOpenFAOMや構造解析ソフトのAbaqusなど、無償で利用できるソフトウェアも存在します。最初に雰囲気を掴むときはこれらを利用するのも手かもしれません。

ユーザー(設計者)は総合的なコストパフォーマンスに優れたソフトウェアを常に欲しています。そのために何ができるかを常に模索している存在とも言えます。

現在の具体的な仕事

自社で扱うCAEソフトウェアの品質管理を主な業務としています。ここで言う「品質管理」とは、多種多様に実装されている機能に対して、期待通りの結果が得られるかテストすることです。

QA(Quality Assurance)と呼ばれています。

CAEは解析条件の設定(プリプロセッサ)、コンピューターによる計算(ソルバー)、解析結果の可視化(ポストプロセッサ)の3行程に分かれます。その中でもソルバーの部分に大きく関わる業務です。

例えば、物理的に単純なモデルでは理論解(手計算で導き出した答え)が存在する場合があります。この理論解と解析結果は一致する筈ですが、ソフトウェアの内部的な不具合の影響で一致しない場合があります。

そのような時に不具合として指摘します。プログラムを確認して問題箇所を見つけ出し、修正します。

QAの目的はリリース前の開発版の状態で不具合を見つけ出し、迅速に開発元が修正を行うことです。CAEの専任者という立場から、ソフトウェアをリリースする際に不具合が無い状態を目指します。

CAEソフトウェアは多機能ゆえに検証に用いるデータの量も膨大です。そのため、こちらの処理は一括で自動化していることが多いです。自動処理のプロセスも自前で開発しています。

品質管理の価値

CAEベンダーにとってソフトウェアの品質管理が重要であることは、言うまでもないと思います。ソフトウェアは年単位でバージョンアップしますが、その際に不具合が混入されてしまえば、元も子もありません。

これはユーザーの満足度を維持するための会社独自の施策とも言えます。新機能も扱いながらも安心安全にCAEソフトウェアを利用できること。ユーザー側の設計業務の効率化と密接な関係にあるのです。

ただそこには相応の難しさもあります。実際の業務行程では過去のバージョンとの差を主に見ますが、それが仕様(変更)によるものなのか、不具合なのかを切り分ける必要があります。

ソフトウェアの問題の可能性もありますが、それと同じくらいにモデル(解析条件設定)の問題の可能性もあり得るので、その切り分けも必要です。

最新版の仕様変更に合わせてモデルを変更していくことは絶えず必要ですし、ほんの小さな因子にも影響を受けてしまうモデルであれば、モデル自体の安定性を高めることも大切です。

このように、単に不具合を根絶するだけでなく、その過程で含まれるノウハウを整理して展開することも大切な業務のひとつです。

おわりに

今回は私の業務(QA:Quality Assurance)について話をしました。

ユーザーが安心安全にCAEソフトウェアを利用できること。それは会社同士の信頼性の向上に繋がります。そこを確実に守ることが、私の仕事の先にあることだと思います。

今年度は開発元との連携をより迅速化して、リリース時の不具合をひとつでも減らすことを目指します。なかなか大変ですが、やりがいのある業務でもあります。

ユーザー(設計者)が扱う物理のスケール次第で、適するソフトウェアは異なります。次回はコラムとして「マルチフィジックス解析」について話をします。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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