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“わたし”という神話 第9話「宗教の誕生」

第1話   天地創造
第2話   人間の誕生
第3話   闇の誕生

第4話   堕天使降臨
第5話   悪の誕生
第6話   広がる恐れ
第7話   光と闇
第8話   堕天使による支配と偽りの光
第9話   宗教の誕生
第10話  古代の叡智の破壊
第11話  神になる堕天使

 9 宗教の誕生


 堕天使の傀儡の「王」であり、偽りの光となった悪の王は境界線を作り、その中で完全な支配を構築していったが、やがてその境界線を広げたくなった。

 理由は、ない。

 なぜなら遥か宇宙の悠久の彼方に生まれ、今も延々と続く“闇”は、次々と自分の闇を広げ、闇から生まれた堕天使は“差”を作り、世界を不調和にさせ、完全に分解、消滅させることしか、他にやるべきことはないのだ。

 しかし、地球という惑星にはまだまだ、堕天使の影響力が及んでいない地域もたくさんあった。

 その地域には、古代から続く愛と平和を愛する人々が暮らしていた。

 彼らは強く、そして賢かった。

 人々の間に生まれる差を話し合いで解決し、その差をむしろ利用して共同生活する調和の叡智や、自然を味方する叡智をたくさん知っていた。彼らは光を知る人々であった。

 自分の「国」を設立した堕天使は、次はどうやって光を知る民を駆逐し、支配するか考えた。光と調和や融合は、堕天使にとって何より耐え難いものだったのだ。

 しかし、強く賢い彼らを暴力支配のために攻略するには、こちらはさらに強さと知恵が必要だった。

 過去に何度か、暴力によって彼らの支配を目論み、王は武装させた軍隊を送ったことがある。しかし古代の叡智を持つ人々にまるで歯が立たなかったのだ。それどころか、兵士の中にこちらの支配体制に疑問を抱く者まで現れ始めてしまった。元々無知な大衆なので、光の影響も受けやすいのだ。大衆を操るためには、何より「無知」にさせることだが、それが光の勢力にとっても優位に働くので、迂闊に無知な大衆を彼らの近くに送り込むことはできない。

 もちろん、そのように光に感化された危険分子は、最もらしい理由をでっち上げて処理してことなきを得たが、何度も同じことをやっては流石に怪しまれると堕天使は思った。支配された無知な民衆は確かに愚かだが、その本質はあくまでも大いなる神の分霊であり、時に無知の中からも鋭い閃きと、それを実現させる行動力を見せる者が現れるのだ。堕天使は慎重な用心を怠らなかった。

 堕天使は自分の国の支配を確実に守りながら、時間をかけて考えた。

 長い年月の末に、堕天使は新たな支配のために「神」を利用することにした。

 それには世代が何代も変わる数百年単位の計画だったが、堕天使は目的遂行のためならどんな忍耐も惜しまない。堕天使は時間をかけることを恐れず、躊躇しない。

 当時の人々は、さまざまな神を信じていた。

 堕天使の支配が及ばなかった遥か古代、神々の叡智と共に生きる人々は、自然のあらゆるものに神を見出した。太陽も、月も星も空も海も川も山も、木も岩も風も、暑さも寒さも、すべてに神性を見出し、神と共に生きていた。だから彼らは賢く、強かったのだ。

 堕天使によって支配された国の人々も、やはりその名残があり、さまざまな神を崇拝し、見出し、星に例えたり、神話を作り、物語を生み出した。

 堕天使は、神や信仰に対し、それまでは野放しにしていた部分だったが、民衆の抱く“神の概念”を変えることにしたのだ。

 それはつまり、この世界から本当の神を隠し、“偽の神”をこしらえることだった。

 もちろん、光そっくりに、愛と慈愛と善としての「神」を。偽りの正義と愛の王を擁立したのと同じことだ。

 堕天使の作り上げた神は“たったひとつの神”という人格だった。

 これまでのようなたくさんの神ではなく、唯一無二の神。

 唯一無二の神という存在と共に、死後の訪れる「審判」と、天国と地獄という世界を、堕天使は手下を使って広める活動をした。

 この世界には天国と地獄があり、良い行いをすれば楽園の天国へ行き、悪い行いを行うと苦痛と恐怖の地獄へ行くと…。

 また、不作や干ばつ、飢饉、自然災害や疫病などが蔓延することも、「神」のせいにすることにした。人々にとって悪いことが起このは、神が人々に対して怒り、罰を下しているのだと言い回った。

 このように、堕天使が作り上げた神は、圧倒的な力と、唯一無二の真実と、真実に従う者への慈愛と、真実にそぐわない者への怒りを持ち合わせた、裁きのための人格神だったのだ。

 堕天使自身も、乗っ取った肉体を使い「神の声を聞く者」として、人々の前に現した。神は大衆には見えず、声は聞こえずだが、それが見えたり、声を聞ける特別な力を持つ者として現れた。

 その証拠として、堕天使は天体の知識などを使って、予言者として日食や流星群を言い当てたり、催眠術などをかけたり、自分で毒を持って人々を苦しめ、そこに解毒剤を差し出すようなこともした。

 王とその一族、また民衆の中でも影響力の強い者を特に選んで、自分の特別な力を見せつけ、信頼させた。

 王や影響力の強い人間が「彼は本物だ」と言うと、多くの無知な大衆は自分で見てもいないのに信じ込むのだ。

 無知で愚かな大衆は自分自身の判断より、自分より賢い(と思ってる)者の意見を鵜呑みにする。この手法を使えば、大衆一人一人に力を見せて証拠を示す必要もなく、大勢から信頼を得ることができる。

 徐々に、基盤は出来つつあった。

 堕天使は“預言者”として、確かな地位を得て、実行的に国を支配する支配者たちが恐れ、敬う存在になった。

 預言者は神からの声として、たったひとつの「神」を信じる者“だけ”が救われると伝えた。そしてたった一つの神を信じないものは救われないと。

 その頃には多くの人々が「死後の地獄」を信じ始めていたので、預言者の言葉を信じた。誰もが、地獄へは行きたくないと思った。

 かつては民衆は古代からの名残りで、海や森、山や川など、至るところで、さまざまな神へ祈りをしていたが、預言者は祭壇を作り、立派な社殿を作り、拝む対象としての偶像を作った。そこを教会や寺院と呼んだ。

 預言者が「この場所でこそ神に祈りが届く」としたので、人々は特定の教会や寺院で、偶像に向かって拝み、祈るようになった。逆に、自然を敬い、信仰することは愚かなことだと思うようになった。

 預言者は神の声の代理人を増やした。武力支配で「王」を作ったのと同じように、特権階級を与えることを始めた。

 神の規律を守り、神を強く信じた者に、権限を与えた。彼らは「神官」と呼ばれ、人々から大いなる尊敬を得た。

 神官たちは神の代理人として、たった一つの神を信じる考え方を国中に広げた。 

 神官という特権階級ができると、さまざまな位が作られ、組織化した。

 それは「宗教」と呼ばれる組織であった。

 階級を作り、常に上が下を支配するという構造は、堕天使が常に望む「差」の世界そのものだった。

 どんどん上に上に積み上げ、下が増えていく。そして最後は下から崩れ去るのだ。

 そのように、彼の国の民衆たちはますます内なる神性と宇宙の真理から離れ、神官たちから与えられた宗教という、外の世界の偶像の神しか信じれなくなった。

 その神は天罰を与える、恐ろしい神であり、人々は神への恐れが、判断の基準になった。

 人々は神官の決めた善を善とし、神官の下した悪を悪とした。

 人々はますます自分の思考で考えることを放棄していった。

 堕天使が偽りの神と、その教義を作り、恐れと共に宗教を広めた結果、人々はさらに無知になる。大衆が無知になればなるほど、堕天使の支配は強固になっていった。


つづく

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