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大学4年でホテルに缶詰になった件

はじめての仕事

はじめての仕事らしい仕事(数ヶ月にわたる継続した仕事)は大学4年の時のプログラム開発でした。旺文社の「英単語ターゲット1900」という英単語集の発売に合わせて、パソコン(PC9800シリーズなど)で動作するドリルを開発するというプロジェクトでした。
 開発チームは3人で、ベテラン2人を補助する新人プログラマのポジションでした。当時はパソコンのアプリケーションプログラムを組めるプログラマが稀少でした。打ち合わせも兼ねて旺文社の近くの高そうな店で何度かごちそうになった記憶があります。

ブラインドタッチをマスター

開発チームのリーダーは、暴走族(タレントの宇梶剛士がいた頃のブラックエンペラー)から東京大学の研究生になった変わり種でした。すっかり丸くなっていましたが殴ったり蹴ったりするスキルについて教わりました。もちろん実践したことはありません。
 リーダーからの最初の指示は、まだ不完全だったブラインドタッチを完璧にしろというものでした。とにかくプログラムの生産性に直結するので、タイピング練習ソフトを使って数日間で完璧にマスターすることになりました。この指示については今でも感謝しています。

大学から通勤そして缶詰め

はじめは大学からリーダーの自宅兼オフィスに通って開発していました。そのうちプロジェクトが徐々に遅れだし、最終的に「缶詰(かんづめ)」という状況になってしまいました。「缶詰」とは、出版社が締め切りに遅れそうな作家に対処するために、編集者の監視下でホテルに泊まり込みで間に合わせる手段のことです。
 さすが旺文社です。缶詰になったのは飯田橋にあったホテルグランドパレス。皇居外苑を臨むハイグレードホテルです。もしかしたら遅筆の作家先生方が缶詰になった部屋かも知れません。何日も高級ホテルに泊って進めることでプログラムを無事にリリースできました。新人でたいした活躍もしていませんが、一年余分に大学に通うくらいの報酬をいただきました。それを世間では留年といいます。
 なおホテルグランドパレスは2021年6月30日をもって営業終了しました。


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